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    アロマきかく

    @armk3

    普段絵とか描かないのに極稀に描くから常にリハビリ状態
    最近のトレンド:プロムンというかろぼとみというかろぼとみ

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    アロマきかく

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    たまにはサブ職員さんの解像度を上げてみよう。
    49日目、オフィサーまでも一斉にねじれもどきになってその対応に追われる中、元オフィサーであったディーバにはやはり思う所があるのではないか。そんな気がしたので。
    甲冑で愛着禁止になったときも娘第一的な思考だったし。
    なお勝手に離婚させてしまってるけどこれは個人的な想像。娘の親権がなんでディーバに渡ったのかは…なぜだろう。

    #ろぼとみ他支部職員

    49日目、ディーバは思う 嘔吐感にも似た気色の悪い感覚が体の中をのたうち回る。その辛さに耐えながら、“元オフィサー”だった化け物共を叩きのめす。
    「クソっ、一体何がどうなってやがんだよ……ぐ、っ」
     突然社内が揺れ始めて何事かと訝しがっていたら、揺れが収まった途端にこの有様だ。
     俺がかろうじて人の形を保っていられるのは、管理職にのみ与えられるE.G.O防具のお陰だろう。勘がそう告げている。でなければあらゆる部署のオフィサーばかりが突如化け物に変貌するなどあるものか。

     もしボタンを一つ掛け違えていたら、俺だってこんな得体のしれない化け物になっていたかもしれない。そんなことをふと思う。
     人型スライムのようなアブノーマリティ――溶ける愛、とか言ったか――が収容された日。ヤツの力によって“感染”した同僚が次々とスライムと化していく。その感染力は凄まじく、たちまち収容されている福祉部門のオフィサーが半分近く犠牲になった。そんな元同僚であるスライムの群れが目前に迫ったときは、すわ俺もいよいよここまでかと思ったものだ。直後、管理職の鎮圧部隊がわらわらとやって来た。俺は元同僚が潰れてゲル状の身体を撒き散らすのを、ただただ通路の隅っこで震えながら見ていた。支給された拳銃を取り出すことも忘れて。
     まさか、そんな俺が“潰す側”になるとはな。



     あの感染スライム事案の翌日、教育部門から打診があった。
     内容は管理職への転属。頭数が必要で少しでもこの会社に慣れた人を、ということだそうだ。
     管理区画勤務のオフィサーの中では、どうも俺が生存日数トップだったとかどうとか。その危機回避や生存能力を買われたらしい。
     生存能力っつったって、俺としては生き延びることに特段意識を割いていた訳じゃない。そもそもオフィサーの仕事だって結構ハードなんだ、いちいち自分の命を優先して行動している余裕なんざありゃしない。それでも俺がなんだかんだ危険な管理区画でずっと生き延びてこられたのは、まぁ単純に悪運が強いんだろう。
     こいつぁ運が良い。真っ先にそう思った。あの管理人サン、職員を死なせたら必ずやり直しているって評判は俺等オフィサーの耳にも届いていたからな。鎮圧なり作業なりで苦しい思いはするだろう。だが死ぬことはない。死んだら無かったことになる。それならば、休暇を貰えた日にゃ娘に会いに行ける、ってなもんだ。
     死んだら一発アウトのオフィサーでいるよりか、よっぽど期待が持てる。

     元々は情報チーム所属だった。あの頃から既に試練やらアブノーマリティの脱走やらで、毎日数える気が失せる程度には死者が出た。勿論俺とて死にたくはない。家にゃ可愛い一人娘が待っているんだ。L社に就職する際、長期間家を空けなければならないので、娘は実家に預けている。
     だからといって自分の身可愛さに仕事を疎かにしたら即解雇。登録抹消処分だってんだから仕方がない。流石翼なだけあって給料は破格だしな。そんなわけでいつ死ぬかのチキンレース状態。例え俺が死んだとしても残してきた家族にはたんまりと保険が降りる契約になっている。職場の環境は二・三日もしたらおおよそ把握できた。こいつぁいつ死んだっておかしかない、ってな。
     生きて帰れりゃ儲けもの。この調子ならそんなこたぁ相当に望み薄だろうな、と早いうちから割り切っていたもんだ。願わくば、死ぬときゃできるだけ苦しまずに逝きたいもんだ、ってな。

     管理人が中央本部を開放するに伴い、情報から中央本部へと転属になった。
     その広さに驚き、仕事の量に毎日目を回していた。
     しかも中央本部には1日に2体もアブノーマリティが収容されるときたもんだ。その危険度は情報チーム所属時代とは段違い。ついにはALEPHクラスまでも収容されたってんだから、もう生きた心地がしなかった。ついにはその収容されたALEPHのヤツが脱走しちまって、鎮圧にかかった管理職が一斉にパニックを起こしたと聞いた。
     聞いた、というのはたまたま俺がその時ひとつ上のフロアで仕事していたからだ。直接現場を見ることもなく、何やら騒がしいなと思っている間にTT2プロトコル発動のアナウンス、そして巻き戻り。このあたりもまぁ中々の運だったが、いざ俺自身が管理職となって規制済みのヤツの姿を見たときゃぁ……。ありゃぁ本気で気が触れるかと思った。鎮圧しようとしてパニック起こすのもむべなるかな、だ。



    ……とまぁ、運が良いのか悪いのか。オフィサー業務の中でも最も危険とされる管理区画勤務のわりに、俺は生き延び続けた。よくもまぁ試練やらなんやらに巻き込まれなかったものだ。管理職となって実際にアブノーマリティや試練の相手をするようになり、そのことを痛感する。中には琥珀の夕暮のように、そこいらを歩いているオフィサーが残らず貪り食われかねない状況も何度かあったはずなのだが。ときには逃げ延び、ときにはたまたま出くわさず。そんな偶然が続いた結果が今だ。

     もしたまたま生き延び続けたとして、俺が管理職に転向していなかったら……。
     まさに今俺が薙ぎ払った化け物の1匹として、“仕方のないこと”の一つとして片付けられていたんだろうな。
     こいつらに意識は残っているんだろうか。見た目こそ化け物だが、ほんの少し前まで人間だったのは確かだ。一体全体何が起きたのかはさっぱりわからない。試練ともアブノーマリティとも違うのは、こいつらの外見的特徴――ぱっと見の特徴がどいつもこいつもバラバラだってこと。例えば試練だったら同系統のヤツは大体同じような見た目だし、アブノーマリティから生み出された眷属だってひと目でそれとわかる。この“元オフィサー”な化け物たちには、それがない。腕ばかり何本も生えていたり、ナメクジのように床を這いずり回っていたり。
     そんな事よりか、もし俺がオフィサーのままこの日を迎えていたら、外に出て愛娘の顔を拝める可能性なんて万に一つも無かったってことだけは確かだな。これが外にも影響してるとしたら、娘だって無事じゃ済まなかろう。今すぐ娘に会いたい。無事を確認したい。温もりを感じたい。募るのは、身体の中の気持ち悪さと焦燥感。

     管理職になってからは何回か死ぬこともあった。今だって身体の中が引っ掻き回されるような気持ち悪さが収まらない。大声上げてのたうち回りたい。苦しいし、キツいし、たまったもんじゃない。痛みも苦しみも一切無いらしい処刑弾とやらで一瞬で終わらせてくれるのなら、どんなにか楽だろうかと思う。
     だがここで理性を手放したらいよいよヤバい。何となく、そんな気がしている。根拠はない。オフィサーやってた頃と同じ。ただの勘。だがこういうとき、俺の勘はやたらとよく当たる。嫌な予感ばかりが。

     実はイカサマの手口を覚えたのだって、ギャンブルにおける“嫌な予感”のリスクを少しでも軽減したいがためだったりする。僅かでも安心感を求めたかった。近頃はすっかりイカサマに慣れて真っ向勝負なんてご無沙汰だったが、あのデカブツ――ログンに見られている間はどんな手口も見抜かれちまう。お陰で煙草燻らせつつあのお坊ちゃんからまきあげる休憩時の楽しみが一つ減っちまった。J社のお膝元じゃなければそこそこやれるクチだと思ってたんだがなぁ。
    ……負けることを恐れてるのかね、俺は。
     L社に就職したのだって、ある種の賭けだ。まさか翼からお呼びがかかるなんて一生に一度も無いチャンスだ。
     ギャンブルにハマるような性格の俺に、妻は愛想が尽きて出て行った。当然だろうな、自分ですら自分のことをダメ人間だとわりかし思ってるから。
     果たしてこの賭けは勝つのか負けるのか。どうにも胡散臭い作戦だが、手筈は聞いている。

     頼んだぜ、管理人サンよ。
     俺がまた娘の顔を見るには、あんたを信じるしか無ぇんだから。
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    アロマきかく

    DOODLEたまにはサブ職員さんの解像度を上げてみよう。
    49日目、オフィサーまでも一斉にねじれもどきになってその対応に追われる中、元オフィサーであったディーバにはやはり思う所があるのではないか。そんな気がしたので。
    甲冑で愛着禁止になったときも娘第一的な思考だったし。
    なお勝手に離婚させてしまってるけどこれは個人的な想像。娘の親権がなんでディーバに渡ったのかは…なぜだろう。
    49日目、ディーバは思う 嘔吐感にも似た気色の悪い感覚が体の中をのたうち回る。その辛さに耐えながら、“元オフィサー”だった化け物共を叩きのめす。
    「クソっ、一体何がどうなってやがんだよ……ぐ、っ」
     突然社内が揺れ始めて何事かと訝しがっていたら、揺れが収まった途端にこの有様だ。
     俺がかろうじて人の形を保っていられるのは、管理職にのみ与えられるE.G.O防具のお陰だろう。勘がそう告げている。でなければあらゆる部署のオフィサーばかりが突如化け物に変貌するなどあるものか。

     もしボタンを一つ掛け違えていたら、俺だってこんな得体のしれない化け物になっていたかもしれない。そんなことをふと思う。
     人型スライムのようなアブノーマリティ――溶ける愛、とか言ったか――が収容された日。ヤツの力によって“感染”した同僚が次々とスライムと化していく。その感染力は凄まじく、たちまち収容されている福祉部門のオフィサーが半分近く犠牲になった。そんな元同僚であるスライムの群れが目前に迫ったときは、すわ俺もいよいよここまでかと思ったものだ。直後、管理職の鎮圧部隊がわらわらとやって来た。俺は元同僚が潰れてゲル状の身体を撒き散らすのを、ただただ通路の隅っこで震えながら見ていた。支給された拳銃を取り出すことも忘れて。
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    アロマきかく

    MOURNINGコービン君から見た緑の話。
    と見せかけて8割位ワシから見た緑の話。未完。
    書き始めたらえらい量になり力尽きて改めて緑視点でさらっと書き直したのが先のアレ。
    コービン君視点、というかワシ視点なのでどうしても逆行時計がなぁ。
    そして33あたりから詰まって放置している。書こうにもまた見直さないといかんし。

    緑の死体の横で回想してるうちに緑の死体と語らうようになって精神汚染判定です。
     管理人の様子がおかしくなってから、もう四日が経つ。



     おかしくなったというよりは……”人格が変わった”。その表現が一番相応しい。むしろそのまま当てはまる。
     Xから、Aへと。

    「記憶貯蔵庫が更新されたらまずい……それまでになんとかしないと……」
     思い詰めた様子でダフネが呟く。続くだろう言葉はおおよそ察しがついていたが、念のため聞いてみる。
    「記憶貯蔵庫の更新をまたぐと、取り返しがつかないんですか?」
    「……多分」
    「多分、とは」
    「似た状況は何回かあった。ただし今回のような人格同居じゃなしに、普段はXが表に出ていてAは眠っている状態に近い……っつってた、管理人は。相変わらず夢は覚えてないし、記憶同期の際に呼び起こされるAの記憶は、Aが勝手に喋ってるのを傍観しているような感じだったらしい」
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