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    imori_JB

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    ラストまであと一話…入稿締りまであと一日……(青色吐息)

    #JB腐
    #さめしし
    #女体化
    feminization

    雌獅子は愛を抱く⑩ 車はふ頭の倉庫街の隅に停まった。
     奥の方に見える活気がある辺りと違い、この一角の倉庫はすでに使われていないようだ。壁の色は褪せ屋根には穴が開き、付近に人気はない。
     案の定宜しくない人種の溜まり場になっているようで、辺りには度数の強い酒の瓶や缶に煙草の吸殻や空き箱、使用済みの避妊具やそのパッケージ、それから意味ありげなアルミホイルの切れ端や中身が無い透明のビニール袋、使い古された注射器まで転がっている。
     はてさて此処で一体何をしていたのやら、などとは考えなくても分かる残骸に顔を顰めた獅子神に、天堂は厳かに告げた。
    「このような場所に出入りするなど、自ら咎人であると自白するも同然だ」
     この治安の悪い一角で誰が何をしていようが獅子神の知った事では無いが、此処に娘が囚われているとなれば話は別である。
     叶の助言が正しい物である事は理解している。
     だが、獅子神は大人しく旧特六を待つつもりは無かった。今この瞬間娘に危険が迫っているかもしれないのに、のんびりと何時来るか分からない援軍など待っていられない。
     視線を走らせる。古い倉庫は目の前に五つ程、情報が正しければこのどれかに娘が居るのだろう。一つ一つ当たってみるしか、と足を踏み出した獅子神の肩を村雨が強く引いた。
    「っ、何だよ」
    「待て」
     獅子神を止めた村雨はそのまますっ、と目を伏せた。集中しているらしい相手に獅子神はそれ以上言い募らず、暫し待つ。
    「……左から二番目だ。成人男性四名、幼児一名の声がする」
    「相変わらず素晴らしい聴力だ」
     珍しく素直に手放しで褒めた天堂がカソックの中から長い獲物を取り出した。
     工事現場や建築現場で見るような長い釘抜き……バールだ。
    「使うか」
    「……借りとく」
     どうやって収納しているのやら、カソックの中からは他にも数本が出てくる。
     そういえば誘拐犯と対峙するというのに手ぶらで来てしまった、と今さら反省しながら借り受けた一本を軽く振った。
     頑丈な鉄製の工具はずしりとした重みがあるが、女性としては相当力が強い部類になる獅子神が振るうには何ら支障はない。
    「天堂、私にも貸せ」
    「……。振るえるのか?」
     村雨の申し出に天堂がジロジロと村雨の細腕に視線を向ける。ムッとしたように眉間に皺を寄せた村雨はひったくるようにバールの一本を奪い取るが、その重さに閉口したようだ。
     結局バールは諦めたらしい村雨がそれを天堂に返す所を尻目に、獅子神は村雨が指した倉庫へ向かう。
     近付くにつれて中の声が聞こえ始める。その中に、良く聞き馴染んだ幼い泣き声が混ざっているのに気付くと心臓が締め付けられたように痛む。まだ泣ける程度には元気である事への安堵と、娘が泣かされている事への怒り。二つの相反する感情に唇を噛むと、僅かに血の味がした。
     細い木の棒でも振るうかのように気軽に振り回す天堂がパシ、パシ、と手のひらに打ち付ける。
    「咎人共が集まって吞気な事だ」
     プロの誘拐犯では無いのだろう。
     娘の声が外に聞こえるような場所に捕らえている事もそうだし、そもそも数時間経過して未だに獅子神に身代金の要求が来ていない。待機組はその連絡も待っている筈だが、要求が来たと連絡が来ていないという事はそういう事だ。何れにせよ手際が悪い。
    「一番槍は誰が行く?」
    「そんなの……オレに決まってんだろ!」
     天堂が発した答えが分かりきっている問いに、獅子神は全体重を込めた足裏で錆びついた扉を蹴り開ける。
    「なっ、なんだ!?」
    「何だてめぇらっ……!」
     中に居たのは村雨の診断通り男が四人。擦り切れた服に薄汚れた顔や髪、しかし眼だけはギラギラと異様に輝いている。一見してまともでは無い。そんな彼らは襲撃に対し露骨に浮足立った。
     獅子神の眼差しは狼狽える男達を素通りし、泣き声を上げている娘へ向かう。倉庫の真ん中辺りには以前は大型犬辺りを繋いでいたのであろう汚れたケージ、その中で娘は座り込んで声を上げて泣いていた。
    「神の目を搔い潜り、逃げられると思うな」
     人質になる筈の娘を無視しておくに逃げ込もうとした一人の後頭部に、後ろから入ってきた天堂が投げたバールがクリーンヒットした。呻き声と共に男は倒れこむ。こんな時でなければその正確なコントロール力に感心し称賛しただろうが、今はそれどころでは無い。
    「んのっ、クソッ」
    「や、やっちまえ!」
     仲間の一人が倒れた事は逆に他の三人の闘争心に火をつけたらしい。
     逃げだろうとしていた男達は踏みとどまり、懐に手を入れ取り出した旧式の拳銃を構える。しかし、獅子神達に一番近かった男がトリガーに指を掛けるよりも獅子神渾身の飛び蹴りが男の顔面に決まる方が早い。
    「ガッ……」
     殆ど一瞬で二人の仲間を失った誘拐犯が、破れかぶれに叫ぶ。
    「てめぇら、何モンだっ!」
    「うちの娘攫っといて良く聞けたもんだな」
    「罪無き無垢な幼子へ危害を加えた救えぬ咎人共よ、貴様らの裁きが来たぞ」
     神を名乗るには余りに酷薄な笑みを浮かべた天堂が宣告すれば、誘拐犯達の混乱と恐怖は頂点に達した。
    「畜生、畜生畜生畜生、あともう少しだったのにっ!!」
     狂ったように吼えた男が黒い筒を娘に向けたのを見た瞬間、獅子神は身体に巡る全ての血が全て足先に向かって落ちて行ったのを感じた。
     男に向かって、正しくは男と娘の間、黒い筒から放たれる弾道を身体で遮れる位置に向かって床を蹴る。けれど、間に合わないのは分かっていた。男の指はトリガーに掛かっていて、獅子神が短距離走の世界王者だったとしても間に合う距離では無い。
     自暴自棄になった男に、幼い子供に向かって発砲する事を躊躇うような倫理と理性が備わっていない事も、素人同然の撃ち手でも外すような距離ではない事も、嫌になる位分かっていた。
    「礼那――っ!」
     娘の泣き声も男の怒声も全て掻き消す位の大声で絶叫した獅子神の目には、全てがスローモーションのように見えた。
     その瞬間だけ時間の流れが狂ったような錯覚の中、視界の前に黒が過ぎる。
    (え)
     乾いた破裂音が二つ、耳に届く。
    「むらさめ、」
     無意識に呟いた声が、唇を震わせてから大分遅れて耳に届いた。
     何事も無かったかのように汚いケージから顔を涙や涎でぐしゃぐしゃにした娘を抱き上げた村雨は、この場に不釣り合いな程優しく娘を抱き締め、背を撫でた。
     それから振り返って、獅子神の方へ二歩、三歩と近寄って来る。獅子神は連れて来られた娘と、歩く村雨の足元に点々と落ちていく赤の何方に目をやればいいのか分からない。
     何物にも代え難い宝を捧げる様に娘を獅子神へ返した村雨は――そのままぐらり、と傾いでその場に崩れ落ちる。
     その瞬間伸べた獅子神の左手は、村雨を捕える事は無かった。
    「――!!」
     何か叫んだ筈なのに脳がそれを言語として認識しない。
     発砲した男の米神をバールで横殴りにした天堂が男を踏み越え、倒れた村雨の傍に膝をつく。
     ド、ド、と激しく打ち鳴らされる心臓の音を聞きながら娘を強く抱き締めた獅子神は、叶の言う所の増援が雪崩れ込む様にやって来るまでその場に立ち尽くしていた。
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