会長さんがタカヒトにトマトを食べさせる話「ねえ、この再生数まずいんじゃない?」
彼女は彼の動画の近日、再生数が伸び悩んでいる事を指摘する。
あの事件から方向性を変えたタカヒトの動画は登録者は減っていったものの炎上という形でそこそこの再生数を叩き出してはいた。だが元の視聴者は離れており、面白半分で見ていたアンチは飽きてしまっていた。
「でも俺は会長さんが……とおるが居れば良くて……」
「そんなこと言ってられないでしょ。バイトもしてないし大学にもほとんど行ってないのにこれからどうやって生活していくの?」
「う……」
彼は目を背け、言葉を詰まらせる。
確かに彼女の言う通りだった。
今の彼では到底やっていけるような状況ではない。
かといって今更別の方向性に変えたところで挽回は出来ないであろう。
そんな時家のチャイムが鳴る。
「あっ来た来た」
彼女は大きなダンボールを持って、機嫌よく踊るような足取りで戻ってきた。
箱には主張の激しい赤い文字で『完熟トマト』と書かれている。
彼の血の気がサッと引いていく。
「何をすれば良いか……わかるよね…… タカヒト」
彼女はタカヒトを嗜虐的な笑みでタカヒトを見下ろした。
その笑みに彼の身体はゾクリと震える。
泣きそうな顔で小さく首肯した。
「ふぅん……いい子だね」
そう言って彼女は箱からそれを取り出す。
真っ赤な果菜は艶やかな光沢を放ちながら、その存在を主張していた。
「ほら、あーん」
彼女はどんどんとそれをタカヒトの口に入れていく。
「んっ……むぐっ」
グチュッとした青臭い種と酸味の強い濃厚な味が広がり、タカヒトの口の中を蹂躙する。
そして喉奥へと侵入すると思わず彼はえずきそうになる。
「んぐっ……おッ……んんっ」
彼はそれを吐きそうになるが、無理矢理咽頭に押し込んだ。
「美味しい?タカヒト」
「うん……おいしいよ……ありがとう……とおる」
タカヒトは少し涙目になりながらも笑顔を見せる。
しかし、まだ終わりではなかった。
「タカヒトのためにうーんと美味しいトマトを買ったんだ♡もっと食べるよね?」
「え……」
彼女は彼の返事を聞く前に、さらに大量のトマトを取り出す。
そして間髪入れずに彼の口にそれを捩じ込む。
「ほうら、どんどん♡」
わんこそばの要領で、強制的に口内に放り込まれたトマト。
口いっぱいに自身の嫌いな食べ物を入れられて彼はそれを処理しきれるはずもない。咥内がそれの味で侵食される。
「んぶっ……んぐうううッ!」
必死に吐き出そうとするが、彼女に頭を押さえつけられているためそれは叶わない。
「食べないとだめだよ。動画の企画なんだから、こんなに頑張ってるタカヒトさんのお願いだから聞いてあげたいんだけど……これは貴方のためなんだよ」
「うっ……んんッ……」
彼は慈愛に満ちた、まるで聖母のような彼女のこの表情に弱かった。
___彼女は俺の為に頑張ってくれてるのに……このままじゃ俺は捨てられてしまう……。
無理矢理それを飲み込もうとするが、喉の奥でそれを拒絶する。
「ぶッ!う゛ッ……ッッ………!!ッッヴォエ……!」
「あーぁ……勿体無い。なんでタカヒトはちゃんと食べることもできないのかな?」
「ごめんなさい……」
「私にもだけど、せっかく美味しく作ってくれたトマト農家さんにも謝りなよ」
「はい……申し訳ありませんでした……本当にすみません……許してください……」
彼は吐瀉物まみれになった床に這いつくばって謝罪の言葉を述べる。
「床も汚れちゃったし、ちゃんと綺麗にしてね。」
そう言うと彼女はタカヒトの頭を掴んで、彼の口を床の吐瀉物へ押し当てる。
「……!?」
「ほら、舐めて掃除して?これでトマトも無駄にしなくて済むでしょ?」
「はい……」
タカヒトは嫌々ながらも、舌を出してちろりと吐瀉物を舐める。独特の苦味と酸味が口に広がる。
「う゛ッ……」
「ふふ……ちゃんとお掃除もできて偉いね。よしよし」
一瞬、その酸味にビクッと肩を揺らすが咥内の刺激に脳が痺れてその感覚もすぐに快楽へと変わる。
「かいちょ……うさん……♡んッ
……んんッ……んんんッッッ!!!!」
タカヒトは身体を大きく痙攣させて絶頂した。
「あれ……?口移ししただけでイッちゃったの?相変わらず早漏だね」
彼女はそう言うと妖艶に微笑む。
「だって……会長さんとのキス気持ちよくて……ッ♡」
タカヒトは目の端に涙を浮かべながらも、うっとりと答える。
「ふふ……仕方ないなぁ。ほらもう一回、もう一口今度は自分で頑張って飲み込んでごらん?」
「はい……♡」
タカヒトは言われるままに、また口を開いてそれを受け入れた。
「んむっ……♡んっ……♡んっ……♡」
「そうそう……偉いねえ……いい子いい子」
「んんっ……んっ……んっ……んっむ……」
タカヒトはその甘美な口移しを恍惚の表情で味わう。
「んっ……ふッ♡……ん……ッ」
彼が全てトマトを飲み込む頃にはすっかり息が上がってしまっていた。
「全部飲めたね。偉いよ番井さん」
彼女はそう言うと彼の頭を優しく撫でた。
「……ッ♡とおる……ッ♡好きぃ……」
タカヒトは子供のように甘えた声で彼女に抱きついた。
「ふふ……私も好きだよ」
彼女はタカヒトを抱き締め返すと、彼の耳元で囁いた。
「愛してるよ。私の可愛い番井さん……」
彼女の甘く優しい毒が今日も彼を蝕んでいく。
その甘さに溺れきった彼は、きっとこの後も抜け出せないのだろう。
この関係に終わりが来るまでは……
*
その後、この動画は炎上に近い形で久々の高再生数を叩き出すも、センシティブな動画として収益化が停止されてしまったのであった。
それにより、タカヒトは彼女からまたお仕置きを受けるのであった。