「がふっごほっ……はあ……」
今日もまた、高山は細く白い花弁を吐き出した。
「結構、苦しいなあ……」
息をつきながら、ぽつりと漏らす。
隠そうとした努力も虚しく、父親に花を吐いていることがバレた高山は、すぐに病院へと連行された。
そこで下された診断は、嘔吐中枢花被性疾患。
通称花吐き病と呼ばれるこれは、片想いを拗らせたら花を吐いてしまうというなんとも奇妙な病気だった。現状、好いた相手と両想いになること以外、完治の方法は見つかっていないらしい。
(両想いなんて、とても無理だ)
(だって、僕の好きな人は───)
「っゲホッゴホッ……うわ」
気づけば、今度は花弁ではなく花そのものを吐き出していた。
細い花弁が反り返るように並んだ花───白い彼岸花だ。
普段5つ、6つほどの花が纏められて咲いているそれは、個別になるとなんだか百合に似ている。
(そういえば、花吐き病は完治する時、白銀の百合を吐くんだっけ)
「これが、白銀の百合ならいいのに……」
「そんなことを言うくらいなら、沢城殿に告白したらどうなんじゃ?」
「父さん、いつのまに……おかえりなさい。」
「今戻ったところじゃよ。ただいま、鬼太郎。……のう、先程も言ったが、沢城殿に告白してみたらどうじゃ?案外OKしてくれるかもしれんし、ダメでもそこから意識させることもできるかもしれんぞ?」
「あはは、そんなこと言えませんし言うつもりもありませんよ、父さん。きっと沢城くんを困らせるだけですから」
「……なぜそこまで、自信を持って言えるのじゃ?」
「彼も、僕と同じ"鬼太郎"だから、です」