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    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

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    むざこく30本ノック
    20日目

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    同衾 夕暮れ時に降り出した雨は一向に止む気配はなく、小雨になるのを待っているうちに深夜になった。
    「雨が降るからと早めに皆を帰らせて良かったですね」
     観測史上最多の雨量になると言われていたので、雨が降る前に他のスタッフは帰らせていた。事務所内には鬼舞辻と黒死牟だけだった。
    「この雨だと、車で帰るのも危ないな」
    「えぇ、冠水している箇所もあるようで、基本的に職場での待機を推奨しているようです」
     鬼舞辻は明日までに目を通したい資料があるから、と事務所に残るつもりだったようで、一人では何かあっては困るからと黒死牟も残っていたのだ。
    「近くのホテルを探しましょうか?」
     黒死牟が提案するが、ここで自分がホテルに泊まると、「議員様の特権だ」と騒ぐ連中がいるからやめておくと事務所に泊まることにしたようだ。
     元々、住居用だった駅近の古いマンションをリノベーションしたので、選挙前に泊まり込みが出来るようにシャワーブースや仮眠室も設けていた。なので、無理に自宅に帰らずとも、一晩くらいは過ごせるようになっている。
     しかし、三畳間の狭い仮眠室で成人男性二人が寝ることは出来ない。
     黒死牟はどう言い訳をすれば、スムーズに鬼舞辻を仮眠室で寝かせることが出来るか、パソコンと向かい合いながら考えていた。
    「先にシャワーを浴びて良いか?」
    「どうぞ。それでは何か軽く食べるものでも用意しましょうか?」
    「あぁ、頼む」
     そう言われ、シャワーブースへと向かう鬼舞辻を見届け、黒死牟は冷蔵庫を見るが、基本的に飲み物しか冷やしていない。
     一番近いコンビニまで徒歩1分。普段なら余裕の距離だが、この大雨の中となると話は別である。黒死牟はレインコートを着込んで、事務所の施錠をしっかりしてコンビニへと向かった。
     腰にタオルを巻いた姿で鬼舞辻がシャワーブースから出てくると黒死牟の姿がない。トイレかと思い、何も気にせず冷蔵庫で冷えている水を取りに行くとガチャッとドアの鍵が開く音がして、鬼舞辻は思わず掴んだ水を落とした。
     入ってきたのはずぶ濡れになった黒死牟で、おにぎりやサラダチキン、パスタ、フリーズドライの雑炊など、品薄になっている店頭から、出来るだけすぐに食べられるものを買ってきていた。
    「お前! この雨の中、出掛けたのか!?」
     驚いた鬼舞辻が近付いてくるが、自分がずぶ濡れなことよりも、ほぼ全裸に近い鬼舞辻の姿に心拍数が一気に跳ね上がる。
    「いや、その……何も用意して……」
    「ほら、お前もシャワーを浴びて来い!」
     荷物を奪い取られ、続いてレインコートを剥ぎ取られ、シャワーブースに押し込まれた。
     相変わらずスタイルが良いなぁ……と感心するが、それ以上に尋常ではない色気に当てられて、未だに動悸が治まりそうにない。
     いつも自分の不適切な恋心を押し殺して傍に仕えているのに、その気持ちを翻弄するかのように鬼舞辻は無意識に黒死牟を揺さぶってくる。脱衣所には鬼舞辻が脱いだ服がそのまま置かれており、香水の匂いで満たされている。
    「ここは職場……ここは職場……」
     黒死牟はひたすら念仏のように唱え、冷たいシャワーで様々なものを鎮めた。

     事務所に置いていたジャージを着て黒死牟がシャワーから出ると、鬼舞辻は流石に事務所に置いていたパイル地のバスローブを羽織って、ソファでスマホを弄っていた。
    「すみません、すぐにご用意致します」
    「焦らなくて良い」
     冷蔵庫の前に立つ黒死牟の後ろに立ち、濡れたままの髪に触れる。
    「髪、寒くないか?」
    「えっ……あ、だ……大丈夫です……」
     そう答えたが、鬼舞辻は器用に黒死牟の髪を纏めて黒いゴムで括った。
    「後でちゃんと乾かせよ、傷むぞ」
    「はい……」
     無理だ、この人と一晩一緒に過ごすなんて、心臓が持たない!
     黒死牟は必死に手の震えを抑えようとするが、指先に力が入らない。
    「しかし、お前、気が利くな。ちゃんと酒も買ってきて」
    「あ、はい……」
     ビールやワイン、冷凍の枝豆、だし巻き玉子、チーズ、冷奴など、割と鬼舞辻が好みそうなおつまみも買ってきていた。
    「明日は臨時休業にすると全員に連絡しておけ。今夜はのんびり酒盛りでもして過ごすか」
    「はい」
     鬼舞辻と黒死牟は来客用のソファセットで酒盛りを始めた。
     2時間もすれば、買ってきた酒は全てなくなった。追加で買い出しに行こうにも、雨は少しも止む気配がない。
    「そろそろ寝るか」
    「そうですね。先生は仮眠室をお使い下さい」
    「お前は?」
    「ここのソファで休みます」
     よし、自然な流れだ、と黒死牟は心の中でガッツポーズをしたが、「駄目だ」と却下された。
    「お前がこのソファで寝るのは無理があるだろう。だったら、私がこのソファで寝るから、お前が仮眠室で寝ろ」
    「そんなわけにはまいりません!」
     主をソファで寝かせるなど、言語道断! と黒死牟は激しく拒否するが、鬼舞辻は一晩くらい平気だから良いと言い、一歩も引かない。
     ずっとそんな揉め事が続き、黒死牟はゴミを片付け、鬼舞辻は洗面所へ歯磨きに行く。そして、戻った鬼舞辻はこう提案したのだ。
    「だったら、仮眠室で一緒に寝るぞ」
     一番避けたいルートが出てしまった。
     断ると感じが悪いし、かと言って、一組の布団で身を寄せ合って寝るとか、一睡も出来るわけがない。
     黒死牟は「髪を乾かしてきます」と一旦逃げ、半乾きの髪をドライヤーで乾かしながら、どうするか必死に悩んでいた。
     そっと仮眠室を覗くと、鬼舞辻は既に横になっている。とても横で並んで寝ることは出来ず、鬼舞辻の足元で三角座りをしていたら、「気が散る!」と怒られた。
    「だったら、私も朝までそうやって過ごす」
    「それはいけません!」
     壁に凭れて並んで座る鬼舞辻を見て、バスローブの隙間から見える胸元と足が気になって仕方なく、顔を背けた。
    「立って半畳、寝て一畳に比べたら、三畳間だと大人二人でも余裕で並んで眠れるだろう」
    「確かにそうですが……」
    「ほら、寝るぞ」
     腕を掴んで布団に押し倒された。無言で見つめ合う形になり、黒死牟の心臓は激しく脈打ち、その音が鬼舞辻にも聞こえているのではないかと怖くて仕方がなかった。
     続きを望む悪魔のように甘い囁きと、これ以上進むと戻れなくなるという警鐘が、脳内で鬩ぎ合い、頭が真っ白になった。
     鬼舞辻の右手も黒死牟の頬に触れようとするが、触れる寸前でぴたりと動きを止め、黒死牟の横で背を向けて寝転んだ。
    「おやすみ」
    「……おやすみなさい」
     黒死牟も背中を向けて眠る。こんな近い距離にいるのに、最後の一線は越えることが出来ないのか。黒死牟は互いの背中の間にとてつもなく分厚い壁があることに絶望した。
     あの躊躇いがちな右手が自分に触れていてくれたら、何かが変わっていたかもしれない。あの時の行動が全ての答えなのだと思い、諦めて目を閉じた。

     翌朝。
     緊張して心身ともに疲れ果て、アルコールも回っていた為か、意外によく眠れた。そして、何より、妙に安心感のある状態で眠っていた気がすると思い目を開けると、間近に鬼舞辻の寝顔がある。なんと、鬼舞辻の腕枕で寝ていたようだ。
     思わず悲鳴をあげ、黒死牟は布団の上で土下座した。
    「も、申し訳ございません!!」
     腕は痺れていないか、眠れなかったのではないか、と黒死牟は真っ青な顔で鬼舞辻に尋ねているが、無理矢理起こされた鬼舞辻は機嫌が超絶悪く、ぼんっと枕をぶつけた。
    「折角抱き心地の良い抱き枕だと思って眠っていたのに……」
     むすっとして、再び布団を被って眠ってしまった。
     黒死牟は静かに仮眠室を出て、洗面所へ向かった。
     あの腕に一晩中抱かれて眠ったという現実が未だ受け止めきれない。違う、寧ろ、今は必死に脳内を活性化させ、少しでも良いから、その時の記憶を思い出せと呼び起こしているが、起きた瞬間に見た寝顔しか思い出せない。
     体のどこかを触ってもらえたのではないかとジャージを確認するが、寝た時と全く変わりはない。本当に腕枕で寝ていただけのようだ。
     昨夜とは違う、弾んだような心臓の鼓動に黒死牟の頬が赤くなる。
     今、着ているジャージは洗濯せずにこのまま家宝にしようかと思うほど嬉しかった。

     これは、二人が恋人同士になる、少し前のお話。
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    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
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