俊國くんとみちか♀さんのおねショタ あ、私、逮捕される。
みちかの脳裏を過ったのは、自分が児童に対し猥褻な行為をして逮捕されるショッキングな見出しの週刊誌記事だった。
それもそうだろう。自分は今、裸の児童と共にベッドで寝ているのだから。
勿論、自分も裸で。
この児童は誰か。
勿論、見知らぬ子供ではない。
この子は自分が受け持っている人気子役の俊國だ。
ンマー! 寝顔も可愛いわ! と感動していたが、問題は俊國が全裸で、しかも自分も全裸で、ひとつのベッドで寝ているのだ。
え、なんで!? と、みちかは何度も自分の体と俊國を交互に見る。
まさか、本当にこの幼気な美少年に猥褻な行為をしたのでは……と真っ青になっていると俊國が目を覚ました。
「みちか、おはよう」
やだ……彼氏みたいでカッコイイ!! と、みちかはキュンキュンするが、そんな場合ではない。事実確認しなくてはいけない。
「おはようございます。あの俊國君、昨夜は……」
「あぁ……昨日は良かったよ、最高だった」
ええー! 私、何をしたのー!? と、みちかは頭を抱える。
その姿を見て、俊國はぺちんっとみちかの額を叩いて、呆れたような溜息を吐いた。
「あのなぁ……僕の歳を解っているのか? 残念ながら、僕のコレでは、君を満足させることはできないだろう?」
「きゃっ」
みちかは思わず両手で顔を隠すが、俊國の股間のそれは、可愛らしい子供のそれで、男性器と呼ぶのは未だ早いそれである。
「では、これは一体……」
「単なる僕の悪戯だ。それより、みちかさん。いいかげん、服を着たら?」
「きゃっ! すみません!!!!」
みちかは体にシーツを巻き付けてバスルームへと走って行った。
俊國は小学生でありながら、その美形ぶりから「スーパー彼氏」と世間で呼ばれている人気の子役なので、熱い夜を過ごした翌朝感などお手の物である。
しかし、一体どうして自分は裸になり俊國と同じベッドで寝ていたのか。
何にせよ、こういうことは悪戯でしてはいけないと俊國に注意することから始めようと、みちかは考えた。
「俊國君」
バスローブを羽織ったみちかがベッドに戻ると、俊國はベッドに寝そべって妖しい笑顔を見せる。
「どうしたの、みちかさん。やっぱり僕が恋しくなった?」
「俊國君!!」
真っ赤になりながら、みちかは俊國に説教する。
「俊國君はこれから大人になるにつれて、こうやって女性からお誘いを受ける場面が増えると思いますが、こういった行為は大好きな女性とするものです! 悪戯でするものでは……」
「大好きな女性とするもの? だったら僕、みちかさんのことが大好きだから悪戯ではないな」
ウインクする俊國を見て、胸をズキュンと射貫かれる。この年齢で、この色気。末恐ろしい男である。
「大人をからかうのはやめなさい」
「からかってないさ、本気だよ、みちかさん」
俊國はみちかの手を握り、その手を自分の唇に押し当てた。
「僕がオトナになったら、みちかさんを満足させてあげるからね」
「俊國君!!!!」
どこでこんなことを覚えてくるのか……しかし、めちゃくちゃ格好良いな、と自社タレントながら惚れ惚れしてしまう。この子は絶対大切に育てて、将来は二枚目俳優として成功させるのだ、と、みちかは心に誓いつつも、俊國にウインクされると、その度に心臓発作を起こしそうになっていた。
あれから10年。
「みちかさん」
18歳になった俊國が背後から抱きついてくる。みちかよりも背が高くなり、抱き締められると、その逞しい腕にドキッとしてしまう。
「俊國君、女性にこんなことしちゃ駄目って教えたでしょう」
「みちかさんにしかしないよ。みちかさんは特別だから」
また、そんなことを言う……みちかは呆れていたが、18歳の俊國に言われると、妙に胸がざわついてしまう。
みちかの思惑通り、俊國は今や国民的なイケメン俳優となり「彼氏にしたいタレント」として常に1位に君臨し続けている。
しかし、未だ浮いた話がひとつもない。
それもそのはず。
「俊國君、初恋の人は誰?」
「マネージャーのみちかさんです」
「では、好みのタイプは?」
「マネージャーのみちかさんです」
「将来結婚するなら、どんな人がいいの?」
「マネージャーのみちかさんで」
一貫して「マネージャーのみちかが好き」と答えるので、事務所の方針なのだな、と皆、スキャンダル対策だと思っているので、俊國が本気であることは俊國自身とみちかしか知らない。
「僕、オトナになったから、みちかさんのこと、すごーく満足させてあげられると思うけど?」
「生意気言うんじゃありません。まだまだ子供です」
ツンッと軽くあしらわないと本気で反応してしまうと、何もかもが駄目になってしまう。楽屋で着替えている俊國を見たが、子供の頃の華奢さは完全になくなり、腹筋が六つに割れた逞しい男の体になっていた。そして、ボクサーパンツの股間の膨らみを見るに、なかなか立派そうだな……と不埒なことを考えたことが何度もある。
なので、俊國にそう言われると、正直フラッと流されそうになるのだ。
「ねぇ、みちかさん」
「駄目です。そういうことは好き合って交際している男女でするものです」
「だったら付き合おうよ、みちかさん」
「大人をからかうのはやめなさい」
俊國は10年間、ずっとこうやってみちかにアプローチしてきた。
しかし、俊國は光り輝く18歳だが、みちかは既に30代、40歳が目前に迫っている状態だ。
顔だって老けた。俊國に裸を見られた頃に比べ、胸もやや垂れてきたし、腰回りに贅肉もついて、だらしない体型になった。何より、自分は俊國の彼女というより、俊國の母親と年齢が近い、彼のお母さん的な存在なのだ。
いいかげん親離れしてくれ、と思うが、実際、そんな日が来ると寂しいのだろうな、とも思う複雑な気持ちだった。
ある日、地方ロケに行った際、俊國がホテルの部屋にみちかを呼び出した。
俊國の気持ちを知っているので絶対に個室で二人きりにならないよう気を付けているみちかだが、その時は他のスタッフも不在で、完全にふたりきりになってしまった。
「あのさぁ、みちかさん」
「何かありました?」
普段通りに自然に接していたが、俊國にベッドに押し倒された。
「みちかさん、本当に僕がみちかさんを満足させることが出来たら、僕と付き合ってよ」
「俊國君、駄目です」
「まぁ、僕に任せてよ」
キスをされた時、本気で拒もうと思えば拒めたはずなのに己の欲に逆らえず、子供だと思っていた俊國に抱かれた。
情けないこと、この上ない。
恐らく……多分、いや、そう信じたいが、童貞であろう俊國とのセックスは今まで一番気持ち良いものだった。
ヤバい、これを知ったら他の男では満足できない。
性欲に支配された脳ミソは俊國の体を求め、自分から俊國の上に乗り、腰を激しくグラインドさせた。
好き、大好きと口走りながら、俊國とキスを交わし、翌朝、俊國の腕枕で目が覚めた。
「みちか、おはよう」
あの時と同じ挨拶。ここまで一途に自分を愛してくれる男がいただろうか。
美少年だった頃の面影を残したまま、すっかり大人になってしまった俊國だが、変わらずに自分を愛してくれている。自分ももう、感情に蓋をするのはやめようと決意した。
翌月、自分たちは皆に祝福され結婚することになった。