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    こは斑ワンドロワンライいつも開催ありがとうございます!
    お題「ベッド」お借りしました

    安心地帯 ベッドは二人で選んだ。無駄に広いくせに寝袋だけが置いてあるアパートの一室で、斑が「そろそろ買わなきゃいけないなあ」と聞えよがしに言うので、ここぞとばかりにこはくも「せやねぇ」と返した。
     次の休みが重なった日に一緒に店に行き、店頭で一番大きなサイズのベッドを二人は並んで眺めた。下に収納のついた、クイーンサイズのベッドだった。
     こはくは斑が、もう少し小さなものを二つ購入すれば良いと言うかもしれないと思って、なんと返すかずっと考えていた。しかし結局のところ、斑はちらりとこはくを見て「君も育ち盛りだからなあ」となんだかよく分からないことを言ったきり、そこから動かなかった。

     ただ帰る場所に困った人間が、身体を休めるためだけに用意した部屋ではなくなっていた。そうしておくには、この部屋には二人の気持ちが染み付きすぎてしまった。そしていつしか、それを悪く思わない自分がいることにこはくは気がついていた。
     組み立て式のクイーンサイズのベッドは、部屋の場所を適当な業者に知られたくないと斑が言うから一緒に運び入れて、半日と少しかかって組み立てた。きっと斑だけだったら、もっと早くに作業を終えることができたかもしれない。こはくは慣れない作業に手間取ったけれど、斑が横からあれこれとコツを教えてくれた。
     寮で使っているベッドよりもうんと大きなサイズで、最初は落ち着かなかった。そもそも、斑と並んで横になるのは不思議な心地だった。手を伸ばせばすぐに触れられる距離に、大きな体躯が寝そべっている。昼間はあんなに自分を大きく、強く見せようとしている男が、無防備に、静かに寝息を立てているというのがどうにもむず痒かった。こんな距離に慣れることはあるまいと思っていた──けれども、人間とは適応する生き物である。

    「こはくさん」
    「なんじゃ、今忙しい」
    「次のお仕事の下準備かあ? 感心、感心!」
     スマホを熱心にスクロールするこはくの背中にのしかかり、斑はくすくすと笑った。重い、と睨みつけるがどこ吹く風だ。ベッドの真ん中にあぐらをかいていたこはくは、深くため息をついて眉間を揉んだ。
    「斑はんも明日朝早いんやろ、ちょっかいかけてないではよお風呂入って」
    「ふふん。忙しくしている君にいいことを教えてあげよう!」
    「話聞けや」
    「なんと! いま俺にキスをすると、良いことがあります……☆」
     ぽかんと口を開けるこはくを見、斑は首を傾けて試すような視線を向けてくる。翡翠の瞳がライトの下でくるりときらめいた。
     良いこと。キス。いま限定?
     そのまま考え込みそうになったが、やめた。ただでさえ頭の中は次の仕事のことでパンパンだ。疲弊した脳は思考を早々に放棄した。
     素早く彼の頬に唇を寄せる。斑が「ん?」と少々不満そうな声を上げた。
     次に鼻先に。今度はくすぐったそうに喉の奥で笑うので、こはくはスマホを膝の上に置いた。
    「ん、ふふ、ん、」
    「あぁもう、なんやねん……ん、ぅ」
     そうして後頭部をがっしりと掴んで引き寄せ、唇を重ね合わせると、斑がやっと満足そうに瞳を閉じた。柔らかくてあたたかな、薄い皮膚同士が触れ合う感覚を楽しむ。角度を変えてふにふにと触れ合わせて、最後にぺろりと上唇を舐めてやると、斑もお返しとばかりに下唇を食んできた。
    「……で? ええことって?」
    「ふふ。もう起きてるだろう。君には気持ちの余裕ができて、俺のご機嫌が良くなる」
     そう言い残すと斑は「すぐ出るから君も早くお風呂の支度しちゃいなさい」と、さっさとパジャマを手に寝室を出ていってしまった。
     一人残されたこはくは、しばらくじっとしていたが、やがて自分もタオルと洗面具を引っ掴んで斑の後を追って行った。
    「なぁ、わしもご一緒してええ?」
    「ええけど、明日も朝早いからえっちなことはしないぞお」
    「せぇへんわ!」
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