Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    wafu

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 28

    wafu

    ☆quiet follow

    限黒(成長小黒)
    ※二人をここへ閉じ込めたのは普通の非能力者のモブ腐女子です(登場しません)

    SEXしないと出られない部屋(師父目線)【前編】 小黒と私の前にキングサイズのベッドが置かれ、その枕元の上空には「SEXしないと出られない部屋」という文字が浮かんでいる。
     …これは一体何なんだ?

    * * * * *

     久しぶりに小黒と一緒の任務を終えた帰り道。
     夜半の森から突然何者かに現在の場所に転移させられた。私や小黒に気配さえ感じさせないとはかなりの手練れと思われる。
     先程の任務で捕獲した妖精の仲間か、はたまた新たに別の事件が発生したのか――詳細は不明だが、現在、私と小黒が何者かの敵意にさらされていることだけは分かる。
     転移先は小さな個室だった。広さは、平均的なホテルの一室くらい。天井には薄暗い明かりが設置され、その下には透明ガラス張りのシャワー室とキングサイズのベッドのみが置かれており、壁には出入り口のドアが一つだけ。
     室内にいるのは私と小黒のみで、室外には誰の気配も感じられない。単に部屋の外が無人な訳ではなく、意図的に隔離された時空空間であると感じる。
     これが幻覚等ではなく、本当に物理的に移動させられたのは分かる。相手はおそらく空間能力を持つ者だろう。
    「小黒」
     私は警戒しながらも、小黒の無事を確認する為彼に声をかけた。返事はない。振り向くと、彼は場違いな笑顔を浮かべながら立っていた。
    「…小黒?」
     違和感を感じ、もう一度声をかける。
     小黒は、え、あ、はっ?と小さな奇声を上げた後、ゆっくりと顔を向けた。頬が紅潮しており、目元は潤み、口元は緩んだままだ。
     私自身は精神的・肉体的な違和感を感じていなかったが、明らかに小黒の肉体には異変が起きている。妖精にだけ効く、毒ガス等が散布されているのかもしれない。
    「大丈夫か?」
     私は小黒の異変がどの程度か確認する為、彼に手を伸ばした。頬に触れると、明らかに熱っぽい。
     意識はどうだろう。果たして正気を保っているのか。
     私は彼の名を呼びかけながら、頬を軽く叩いた。小黒が泣きそうになる。
     苦しいのか?
     私は彼の手を取って、ベッドに赴き、ベッド下や毛布の中の安全面を確認してから、彼をその上に横たえた。その間小黒は、「はわわ」等と小さな奇声を上げながらも、大人しく着いて来る。
     衣服を緩め…ようと思ったが、小黒の任務服には緩める要素がない。いつ敵が襲ってきても鋭敏に動く為には、ここで服を脱がすわけにもいかない。とりあえず帯布だけは取り去った。これで少しは楽になっただろうか。
    「小黒、しっかりしろ。私が分かるか?」
     彼の額に手を置いてみる。通常時より熱を持っているが、高熱と言うほどではない。はい…と小さな声で答えるが、体に力が入っていない。
    「私は誰だ?言ってみなさい」
    「ふぇ、師…む、無限……」
     私の事は、認識できているようだ。
    「先ほどまで、共に任務に就いていたのは覚えているか?」
     試しに先程の任務内容を説明させたが、口調に覚束ない部分があるものの詳細はしっかり記憶していた。個人の過去の記憶にまで作用する毒ではないのかもしれない。
    「体の具合はどうだ。辛くないか。」
     小黒は少し考えた後、
    「大丈夫だよ」
    と小さく笑って答える。覇気のない声で、彼が本調子でないことが分かる。
     小黒の事だから多少の不調はどうにかするだろうが、足りない部分は私がカバーしなければならない。
     …いや、万全を期して、小黒は私の霊域に避難させた方がいいのかもしれない。相手の能力を把握できていない状態で、今の彼に対応させるには危険過ぎる。
     しかし、この異常な空間から霊域に移動出来るだろうか。試しに霊域の出入口を出現させようとしたが、案の定というべきか出て来ない。もしやと小規模な己界を発生させようとした所こちらも出現しない。金属性の能力も封じられているようだ。
     この中では犯人以外の術者の能力は使用できないのか、はたまた何か出現条件があるのか。小黒にも室内や室外へ転送できるか尋ねると不可とのことだった。ヘイショも出せないらしい。
    「あれ…?」
     先程まで若干ぼんやりしていた小黒だが、自分の今の状態を知ったことで段々と正気に戻ってきたようだった。
     毒ガスの類いは、軽い物だったか、もしくは私の思い違いだったのかもしれない。まだ油断は禁物だが。
     目に光が戻ってきた小黒が、私に話しかけてくる。
    「あの、師父、一応確認なんだけど…」
     不安げな表情。それはそうだろう。
     高い空間能力を持っている小黒や私をここまで簡単に閉じ込めるとは、油断ならない相手だ。きっと館も把握していない能力者だろう。
    「僕達これからHするんだよね?」
     …?
     えっち…とはなんだったか。
     今回の任務の合図や合言葉には使われていなかったはずだ。他の任務の物と混同しているのだろうか。それとも私の聞き違いか。
    「すまない小黒、今、何と言った?」
     小黒は再び顔を赤らめた後、小さな声でもごもごと呟く。
    「小黒、聞こえない」
     小黒は、も、もうーーー!とよく分からないリアクションを取った後、私を手招きしてくる。耳を近づけると、
    「だ、だから…っ、H…SE…性交渉するんだよね…?」
     ……?
     場違いな単語に私は首を捻る。どうやら仕事関係の用語ではなかったようだが、この状況で小黒の突発的な発言は意味不明過ぎる。やはり妖精だけが精神的に混乱する毒が散布されているのか。
    「小黒、おそらくだが、ここには妖精の精神・肉体にだけ作用する毒ガスが撒かれている可能性がある。自覚して行動しなさい」
     小黒は一瞬動揺した後、自分がおかしな子扱いされていることに気づき、頬を膨らませる。
    「違うよ!師父にもあれが見えてるよね!?」
     彼が指差した方向に目を向けると、ベッドの上に何らかの物体が宙に浮いている事に気が付いた。いくつかの文字で構成されている物のようだ。犯人には物体の浮遊能力もあるらしい。
     警戒しながら文字を眺める。
    「……」
     文章の意味を読み取った私は犯人の意図を図りかねた。小黒を振り返ると、彼は犯人の意図を承知しているらしき様子で頷いている。
    「…小黒、あれは何だ?」
    「っ、だ、だから、文字通りの意味だよ。ここは、せ…っしないと出られない部屋なんだ。だから、し、しないといけないんだよ……」
    尻すぼみになる小黒の言葉を私は一切理解できず、かつて小黒に抱いた「ジェネレーションギャップ」というものを思い出していた。

    * * * * * *

     これは一体何なんだ?
     というのが正直な感想だった。

     小黒の説明によればネットのみで伝聞されている情報で、ある次元に時折出現する不思議な部屋らしい。
     では、この部屋は執行人である私や小黒を狙ったものではなく、一般大衆の誰でもターゲットになりえるということか。なんて危険極まりない、厄介な場所だ。
     犯人はおそらく空間属性の妖精だろう。各地に存在するのであれば、複数の犯行か、考えたくはないが組織化している可能性もある。一刻も早く帰還して館に報告し、対策を練らなければ。
     現在の優先事項は、ここの空間を展開している妖精を捕えるか、脱出するかのどちらか、あるいは両方だ。
    「師父」
     私の腰かけているベッドの隣にいる小黒が、顔を赤らめたままこちらを恐る恐る見上げてくる。
    なるほど。
     小黒の様子がおかしかったのはこの部屋がどういうものか分かっていたせいだったのか。毒ガス等の影響ではなかったことに一安心する。
    「だから、え、Hさえすれば出られるから大丈夫だよ」
     大丈夫じゃない。
     一切、全く、大丈夫ではない。
     いつになく危機管理の薄い小黒の様子に不安を抱く。やはりこの部屋には判断力を低下させるような薬剤が撒かれているのかもしれない。
    「そんな事はしないから安心しなさい。ここから出る方法を、模索してみよう」
     彼を安心させる為にそう告げると、
    「駄、駄目だよ!」
    と小黒は必死に私の腕へ縋ってくる。
     私の身を心配してくれているのだろう。弟子の健気な姿に思わず涙腺が緩んだが、今は和んでいる場合ではない。小黒を犠牲にするなんて絶対駄目だ。

     誰にも言った事はないが、私は小黒に百年近く懸想している。出会った時は小さな子供だったこの子を師として厳しく鍛える一方で、父のように兄のように愛情を持って見守ってきた。親愛の情が恋情に変わったのはいつの事だったろう。
     子供の頃は、昔受けた傷を埋める為か、ことある事に私の愛情を確認したがっていた小黒も無事下山し、今では重要な任務を任される立派な執行人に成長した。社交的で友人も多く、私には言わないがきっと特別に愛情をかける相手もいるのだろう。
     私は師として小黒を見守る今のポジションに満足している。時折、小黒と食事を共にし、楽しそうに近況を話してくれる様子を見られるだけで、充分過ぎるほどだ。これ以上の立場を望むつもりはない。
     という事情もあり、私と小黒が性交渉することは絶対に避けるべき事案だ。自分の下心を満たす為に、脱出を口実に弟子を嬲るなんてあってはならない。
     もしも何かの弾みにそんな展開になったら私は自分を許せないだろう。執行人を辞して死ぬまで霊域で自粛するつもりだ。
     小黒も最初は動揺するかもしれないが真実を知れば私を軽蔑するだろう。あの子には心強い仲間も親しい友人もたくさんいる。いつか私との思い出は薄れるだろう。長い目でみれば、心配はいらない。

    「師父あのね」
     小黒が呟く。
    「大丈夫だよ。僕が女性体に変化すれば、師父にも抱けるでしょ?僕、任務で、女性体に変化する事もあるから、慣れてるんだ」
    と拙い笑顔で私に笑いかける。
     私は心の中で頭を抱えた。
     小黒は基本的に優秀だが、時折「自分がなんとかしなければ」と背負い過ぎるきらいがある。今回もそれが悪い方向へ出ている気がする。きっと薬の作用もあるのだろうが心配だ。まだ理性を持っている私が止めなければいけない。万一、私にまで薬の影響が出始めたら大変な事になる。
     私は小黒に、この場所がいかに危険な場所か滔々と言い聞かせた。そもそもこの部屋の指示に素直に従っても本当に出られる確証はない事、ここを見張っている者がいる事、仮に脱出できたとしてもそのあと大変な事態になる可能性もある事…
     長年執行人に携わり、世の中にはいくらでも悪知恵を働かせる存在がいることを重々承知しているはずだが、小黒には昔から妙に甘いところがある。根が善良なのは美点だが、一般人ならともかく館の戦闘要員として生きる以上その甘さが命取りになる事もある。
     そう考えると今回の出来事は小黒の意識を是正するのに幸いだったかもしれない。これから先も執行人としてやっていくなら、戦闘能力以外も磨いていかねばならない。
    「とにかく、まずは、ここを脱出しなければ」
    「そうだね。早くHしてここを出なきゃね」
     さっきまで私の話に聞き入っていたと思っていたのに、また小黒が頓珍漢なことを言っている。薬剤の影響が小黒の頭を完全支配する前にここから出なければ。
    「その必要はない」
     私は立ち上がり、ドアをドア枠から外してみた。物理的な力が通用した為少し期待したが、あいにく外には何もない空間が広がっているだけだった。空間の外側でも能力は発動しない。
     しかし本当に誰もいる気配がない。性交渉すれば出られると言うが、誰がその判定をしているんだ。もしや部屋自体が犯人の妖精なのか?
     いや、仮にそうであれば、ドアを壊した時点で何らかの拒否反応が出るはずだ。もしくは本当に隠しカメラのようなものが付いているのだろうか。部屋の中を一瞥したが、それらしきものは見当たらない。
    「師父落ち着いて。一回Hすれば平和的に外へ出られるんだよ?」
    「お前も落ち着きなさい…」
     なぜ、そんなに性交渉にこだわるんだ。
     いけない。少し気持ちが波立ってきている気がする。当たり前だが小黒に怒っているのではなく、全く姿を見せない相手に苛立ちを感じている。
     姿を確認できれば、なんらかの方法で捕縛することが可能なのに。目的が不明確な所にも姑息な悪意を感じる。
     私はこっそりと溜息をついた。
     まあしかし、今まで絶体絶命と思われる状況もどうにか打破してきた。今回もどうにかなるだろう。例えならなくてもどうにかする。もう十分生きた私はともかく、小黒だけは生還させなければ。
     私は再びベッドに腰を下ろした。小黒もそれに続く。
    「小黒、え…とか、そんな行為をする必要はない。私達としばらく連絡が取れなければ館も動いてくれるだろう。その間にここから出る方法も思いつくかもしれないし、焦れた犯人が顔を見せるかもしれない。じっくり腰を据えて対応を考えよう」
     長期戦も覚悟しているから大丈夫だと小黒を励ます意味で伝えたら、
    「駄目だよ。しばらく絶食なんて、食いしん坊の師父に我慢できるはずないし、衰弱した所を襲われたら対応できないよ。それに師父も僕も、館の大事な戦闘要員なんだから、急に二人も抜けたら他の人に迷惑かけることになっちゃう。一刻も早く脱出しないと。
     師父には馴染みのない情報かもしれないけど、僕はネットでこの場所のことよく知ってるんだ、本当にHすれば出られるから!大丈夫、僕を信じて!」
     私の手を両手で包んで、必死に訴える小黒。その熱意に私は少し、自分の考えを省みてみる。
     …確かに業務用のスマホすらあまり触らない私よりも、日頃からネット情報に詳しい小黒の方がこの部屋について正確な情報を知っている可能性はある。こんな奇怪な場所も最近は普通に存在して、人々に受け入れられているのかもしれない――よく分からないが――しかしそんな場所を館が放置しているはずはないし、私に隠匿する必要性も感じない。
     それに、他のことならともかく性交渉とは…あまりにも度が過ぎていないだろうか。まだ口吸いや愛撫くらいならともかく…。いやもしかしたら、それらも広義の性交渉に含まれるのだろうか。
     外国の漫画動画――アニメでは、初々しいカップルが手を繋いだり関節キスすることさえ一大事のような描写で描かれることがあるという。そういう文化圏も存在する。
    そのような軽度な行為でも許されるのであれば、小黒と私でも実行可能ではないか。
     相変わらず私の手を掴んだままの小黒に目をやってみる。小黒は諦めていないようだ。
     そんなに性交渉が有効な方法であるなら、一度は試してみる価値があるかもしれない。本音を言えば、こんな不愉快な場所からは早く離れたい。
    「小黒、せ…いや、「えっち」というのは、どの範囲まで含まれるんだろう。手を繋いだり間接キス等も有効なんだろうか」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺👏👏👏👏👏👏👏👏👏☺☺☺☺☺☺☺☺☺☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works