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    wafu

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    wafu

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    限黒(成長小黒)
    ※文章(漫画じゃない)
    ※小黒100歳くらい(300歳限黒とは別の世界線)
    ※両片想い
    ※とても中途半端なところで終わる
    ※全然工口くない

    SEXしないと出られない部屋 師父と僕の二人きりの部屋の中に「SEXしないと出られない部屋」という文字がふわふわと浮かんでいる。
    (例の部屋だ…!)
     運が良ければ出会う部屋だと、ネットで何度か見たことがある。僕は心の底から湧き出る喜びを素直に享受し、世界に感謝した。

    * * * * *

     子供の頃から師父のことが好きだった。彼のそばにいたい一心で修行に励み、無事に彼の相棒の座をget。
     しかし現実はそんなに甘くない。相棒を組んだ半年後には、
    「上位の執行人であるお二人が組むほどの任務は滅多に起きません。平時はソロで仕事して下さい」
    と本部から通告され、涙を飲んだ。
     任務で会えない時はマメにメッセージを送り、少し時間ができれば遠方だろうと構わず会いに行く。
     八歳と十八歳の時に告白して振られているから、今世で結ばれるのは諦めているが、今でも僕にとって世界で一番大切な人に変わりはない。

     久しぶりに師父と任務が一緒になった日。
     館の捕縛部隊に犯人を引き渡した後、僕らは二人で森の中を歩いていた。もう少しで夜も明けるし、ご飯を食べてひと眠りしたら二人でゆっくり過ごそうよ、なんて話していて、気がついたら冒頭の部屋にいた。
     ときおりネットで見かけることのある場所で、そこでは文字通りのことをしないと解放されないらしい。あれ、この部屋ってこんな風に不意に現れるものなのかな?まあ細かいことはどうでもいい。一番大事なポイントは、これで大手を振って師父とHできるってこと。
     師父には不服な事態だろうけど仕方ないよね、それしか方法がないんだから。
     ………。



     ヤッフーーーーーーー!!!!!!!!! \(^◇^)/



     僕にとっては長年片想いしてる師父とヤれる千載一遇のチャンス。これを逃したら、こんな貴重な機会は二度と訪れないかもしれない。
     …師父の気持ちが僕にないなんて分かってる。でもだからこそ、心が無理なら体だけでも…と思う僕は不埒な奴だろうか。

     喜びに浸る僕に気がつかない師父は、いつもの無表情のまま、大丈夫か?と声をかけてくる。こんな時まで僕の心配をしてくれる師父に後ろめたさを感じつつも、
    「うん、でも仕方ないよね。しないと出られないんだから仕方ないよ。一回だけでいいからさ」
    という方向に持って行こうと口を開きかけた僕の頬に、師父の手が優しく触れて、僕は文字通り飛び上がった。
     え、え…?
    「小黒…」
     師父の手も、目も熱い。
     え、師父も、その気になってくれたってこと?
     本当に?
     師父のことだから「ここから一生出られないよりは弟子とSEXした方がマシ」という結論に達したのだろうけど、それにしても判断が早い。
     でももしかしたら…師父も僕とのH、そんなに嫌じゃないってことかも…………?
     僕の胸に淡い期待がむくむくと湧き上がってくる。師父と合意(not恋愛感情)した上でHできるなんて最高じゃないか。
     師父は何度か僕の頬を優しく撫でた後、僕の手を取ってベッドに導いた。はわわ、師父にベッドに手を引かれてる…!夢みたい/////
     え、するの?本当に?師父のナニを僕の下腹部にINしてもいいの?
     ふわふわした足取りでベッドに辿り着いた僕を、師父は優しくベッドに横たえる。

     するんだな。
     今、ここで…!!!

     スルリと解かれる帯布。
    「小黒…」
     師父の手が僕の顔を撫でる。さっきから僕の心臓はバクバク騒がしくてたまらない。
    「私は誰だ?言ってみなさい」
     師父、と言いかけて、師父が求めている答えはそうじゃないと気がついた。
    「無限…」
     師父の熱い瞳に魅せられ、僕は思わず俯く。心地よい羞恥心が僕を襲う。
     これから師父に抱かれるんだ…!
     ありがとう世界。生きていれば、こんな幸運に見舞われることもあるんだね……!!
     まさか、こんな成り行きで関係を持つことになるとは思わなかったけれど、平時では叶わない夢だったからすごく嬉しい。今夜の思い出を一生の宝にして生きて行こう。
     そこで、なぜか師父は唐突に、先ほどの仕事内容について尋ねてきた。急な話題転換に一瞬違和感を抱いたが、違う、師父も緊張しているのだ…!と思い直す。
    「体の具合はどうだ?辛くないか?」
     これは…どういう意味だろう。
     あっ、「これからHするけど覚悟はできてるか」って確認しているのか?そうだよね、直前で怖くなって拒否する人もいるだろうから、念のため確認しとかないとね。合意を得たと思いこんで、強姦まがいの行為になるのはお互い避けたいもの。
     答えはもちろん YES だ。
     告白したのは昔だけど、今でも僕の特別に大切な人はたった一人、師父だけ。
    「大丈夫…」
     多少の痛みや辛さには耐えるよ。師父に抱かれるんだもの。
     師父は僕の答えに、ふむ、と応えると目を瞑った。師父も覚悟を決めているんだろう。
     そして、ふと目を開けると、
    「私の能力は効かないようだ。お前も転送を試してくれないか」
     …ん?
     そこで改めて違和感を抱いた。なんか、さっきから話が嚙み合ってないような…。
    「あの、師父。一応確認なんだけど…僕たちこれからHするんだよね?」

    * * * * *

     そもそも師父はこの部屋が何なのか、よく分かっていなかったらしい。なんてこと。
     ずっと師父の行動を誤解していた僕はただの道化じゃないか。二重の意味で僕は肩を落とした。
     師父はそんな僕の反応に全く気づいてなかったようだった。恥ずかしい勘違いに気づかれなかったことはありがたいけれど、それだけ師父は僕にそういう関心を持ってないんだなあと実感する。がっくり。
     僕は簡潔に説明した。
    「…という訳で、Hさえすればすぐに出られるよ。害はないし…」
     僕がそう言うと、師父は小さな声で「害しかないな」と呟いた。僕は胸がチクリとする。
     そうだよね。師父は僕としたくなんかないだろう。師父にとって僕は弟子の一人に過ぎない。そもそも師父は人間だし、異性愛者だし、彼がその気になれば相手はいくらでもいる。
     でも…
    「大丈夫だよ、僕が女性に変化するから。サクッと終わらせちゃおうよ」
     場を和ませようと明るく言うと、師父は当惑した気持ちを若干表情に出す。
    「そういう問題じゃない。こんな場所があちこちにあるなんて危険この上ない。館に報告して早々に犯人を突き止めねば」
     え、何を言い出すんだ。
    「ここは外部から意図的に隔離された空間だろう。幻覚ではなく、物理的に強制転移させている。仮にも執行人である私たちに全く気配を感じさせないとは、かなりの手練れ。早急に排除しなければ手遅れになる」
     ここでは師父の能力も無効化されているらしい。己界は発生できず、金属を動かすこともできず、霊域への出入り口も出現させられない。
     僕も転送術を試してみたが全く作用しない。それどころか黒咻の一匹すら出せない。
    ここって結構すごい場所だったんだな。
    「犯人はおそらく、空間系能力を持つ者だろう。まずはここを脱出しなければ…」
    「そうだね、早くHしてここから出なきゃね」
     言われてみれば、放置していたら危険な場所だ。何も知らない一般人が巻きこまれて意図しない相手とHすることになったら可哀想だ。今、師父もそういう立場に置かれていることには見ない振りをするけれど。
    「その必要はない」
     師父はドアのノブが動かないことを確認すると、ドアの中央を片足で蹴破った。
    「し、師父!?」
     そして、へしゃげたドアの金具部分を力任せに引きちぎり、物理的に外れたドアを無造作に床へ落とす。転がされたドアが激しい音を立てた。
    「何してんの、師父!」
     師父は本気だ。どうしよう。もしもH無しでここを出ることができたら、師父とHできるチャンスは永遠に失われてしまう。
     幸い、壊れたドアの向こう側はぽっかりと穴が開いており、何も存在していない空間だった。おそらくHしないと外部に繋がらないのだろう。
    「師父、落ち着いて。一回Hすれば、平穏に出られるんだよ?」
     僕は慌てて言葉を紡いだ。だけど師父の表情は険しいままだ。
    「そんな保証がどこにある」
     僕は目を見張る。
    「本人の意思に関係なく、こんな場所へ強制的に閉じ込めるような輩が、そんな簡単に私たちを解放するだろうか」
    「え、そこ、疑うところ?」
    「犯人のメリットが全くない。…もしや、隠しカメラで撮影し、後で恐喝の手段にでもするつもりなのか」
     えええ。
    「そこまで疑わなくても…」
     こういう場所は作者がエロを描きたいけどネタが思いつかない時に設置する舞台ってだけだよ…。普段そういう情報に疎い師父には理解できないのかもしれない。ここを無事に出られたら、老君にレクチャーしてもらわなきゃ。
    「とにかく、そんな行為をする必要はない。しばらく私たちと連絡が取れなければ館も動いてくれるだろう。その間にここから出る方法を思いつくかもしれないし、焦れた犯人が顔を見せるかもしれない。じっくり腰を据えて対策を考えよう」
    「え、だ、ダメだよ!」
     大事になる予感に慄きつつ、僕はどうにか師父をそういう気にさせられないかと頭を捻る。
    「しばらく絶食なんて食いしん坊の師父に我慢できるはずないし、衰弱したところを襲われたら対応できないよ。それに、師父も僕も館の大事な戦闘要員なんだから、急に二人も抜けたら他の人に迷惑かけることになっちゃう。一刻も早く脱出しないと。」
    僕は畳みかける。
    「師父には馴染みのない情報かもしれないけど、僕はネットでこの場所のことよく知ってるんだ。本当にHすれば出られるから!大丈夫、僕を信じて!」
     師父の両手を両側から包み込んで、必死に言い募る。この機会を利用しなければ、もう永遠に師父とHする機会は失われてしまう。

     お願いします!
     一回だけで…
     いや、先っぽだけでいいから……
     僕とHして下さい!!!

     僕の必死さが伝わったのか、師父は僕から目線を外して少し遠くへ目線をやる。考え直してくれているみたいだ。良かった。
     これで考えを改めて、Hしてくれたらいいんだけど…
    「小黒」
    「うん」
     どうかな、Hしてくれるかな。僕は再び心の中で師父に祈る。
    「「えっち」というのは、どの範囲まで含まれるんだろう。手繋ぎや間接キスなども有効なんだろうか」
    「へ」
     …これは予想外の疑問だった。自分は「SEX=性器を相手の性器に入れて擦って射精すること」と思っていたけれど、そう言われれば確かに、そこまで正確に定義づけされていないかもしれない。挿入が必須であれば女性同士はどうすればいいんだ。しかし僕もそこまで詳細にこの部屋を調べていたわけではないし。ううん……。
     いや、待て。
     もしも、その方法が可能であれば、手を繋いだぐらいで二人とも解放されてしまうじゃないか。
     僕は師父と「性器を相手の性器に入れて擦って射精する」Hがしたいんだ。関節キスくらいで満足しないぞ。
     …でも。
     強硬に抵抗している師父も、挿入無しであればOKしてくれるかもしれない。でも手繋ぎや関節キスレベルでは、ちょっともったいないな…。
     僕はどの程度であれば、僕も師父も満足できるか必死に頭を動かし始めた。昔から頭脳労働は苦手だけれど、今はそんなこと言ってる場合じゃない。
     まず僕自身は、どの程度で満足するのか考えてみよう。

    手繋ぎ…物足りない
    間接キス…全然物足りない
    キス…したい、けどできればもっと先までやりたい
    愛撫…同上
    相手の性器をこする…同上
    相手と性器をこすり合わせる…同上
    素股…やりたい
    後ろの性器に指を入れる…入れて欲しいけど、できればもっと(後略)
    後ろの性器に性器を入れる…同上
    入れた後、擦る…そこまで行ったら最後までやりたいな
    擦った後、中出しする…うん、やっぱりここまでやりたい。可能であれば何回も。
     よし。
     次は師父だな。

    手繋ぎ・関節キス…僕が子供の頃は普通にしていたから、たぶん大丈夫
    キス…うーん、世の中にはSEXよりキスの方が重要だと考える人もいるんだよね。師父はどうかな。本音では「今まで色んな人にしてきたんだから、これくらいケチケチしないでよ」と思うけど。
    愛撫…僕がやってあげればいいじゃん!
    相手の性器をこする…同上
    相手と性器をこすり合わせる…これは抵抗があるかもしれないから省略しよう
    素股…挿入よりは抵抗ないかも…
    後ろの性器に指を入れて解す…僕が自分ですればいいじゃん
    後ろの性器に性器を入れる…これはまあ抵抗あるよね…これ以上を師父に望むのは難しそうだ
     はっ……!
     その時、僕に天啓が下りてきた。別にそれぞれ単体で考えなくても…

     どこまで行ったら出られるのか、全部試せばいいんじゃない?

     これだー!
     いきなり「挿入して」って言ったら師父も抵抗あるだろうけど、徐々に進めて、それぞれのハードルの抵抗感を薄くしていけば、ワンチャンあるかもしれない。
     最後は僕が泣いてすがれば師父も…うーん、それはどうかな。師父はとても優しい人だけど、情に流されるタイプじゃないんだよな。僕が女の子ならともかく。
     でもこのまま何もしないまま、館に救出されるのだけは避けたい。
     せめてキスだけでもしたい!!!
     よし、師父に提案してみよう。もちろん僕の下心は隠したまま。そうと決めたら善は急げだ。
     なぜか室内をうろうろしている師父を見ながら、僕はそうっと体を女性に変化させた。説得するなら、女の子の見目の方がいいだろう。
     部屋のすみっこにいた師父が、僕の声に気づき近づいてくる。そして、変化を終えた僕に気づいたのか、一度目を瞬いた。
    「師父…」
     なるべく神妙な顔を作りながら、師父に上目遣いで呼びかける。
    「ここの部屋がどの段階で解放してくれるのか分からないなら、少しずつ試してみたらいいんじゃないかな…?」
     師父が眉を寄せる。
     下心を見せないように…真剣に考えてる振りをするんだ……今こそ、館の広報用のグッズやCMで培った演技力を生かす時…!
    「ほら、まずは手を繋いでみて…」
     師父に片手を差し出してみる。
     師父お願い…応えて…。
     そして、この部屋の主さん、この程度でOK出さないで~~~。
     僕は心の中で、必死に二人に祈る。
     少しの間を置いて師父も僕の手を握った。そのままニギニギと手を動かしてから部屋を見渡す。何か変化がないか確認している様子だったが、そのまま何も起きることはなかった。僕はそっと溜息をつく。
     よし、第一段階クリア!このまま最後まで突っ走る!どうか中出しするまで脱出不可でありますように…!
     手を離した師父が、僕の隣に腰をかける。
    「今のはダメだったみたいだね」
     師父はちらりと目を向けながら、
    「どうして女性体になっているんだ」
     え、理由は明白だと思うけど…改めて言って興が削がれないだろうか。僕はそろそろと口を開く。
    「だって師父の好みは成人女性でしょう。大丈夫、僕は仕事で変化に慣れてるし、ちゃんと内臓まで人間の女性と一緒なんだよ。だから心配いらないよ」
     師父の懸念を払うつもりで伝えたのに、師父の顔は険しい。
     師父は一呼吸置いてから、
    「小黒、お前はいつも仕事に一生懸命でがんばっているね。でも館はお前が思っているほど柔ではないよ。私達二人が抜けたくらいではびくともしない。だからお前がそこまでする必要はないんだよ」
     そうして僕の頭を優しく撫でてくる。
     …僕が何を考えているのか知らないくせに、優しくしないで欲しい。師父はいつもそうだ。僕が我儘を言っても軽く流して、その上で優しく受け止めてくれるんだ。
    「だって…こうでもしないと、師父は僕を抱いてくれないでしょ?」
     ダメだ。本当のことを言ってはダメだ。
     二度も告白してきっちり振られているのに、これ以上言ったら師父を困らせてしまう。
     いや、もしかしたら、師父は優しいから僕から距離を取って会わないようにするかもしれない。だって師父は本当に優しいんだ。仮初めの優しさは相手の為にならないって知ってる。例え相手に愛着があっても、自分からあっさり縁を断つんだ。
     僕が初めて館に行った時もそうだった。師父はそれなりに僕を気に入ってくれていたのに(これはずっと後になって、本人から聞いた)、僕が家を欲しがっていて、人間を嫌っていることを知っていて、自分から進んで離れていったんだ。
    「でも本当は…ずっと師父の恋人になりたかった。無理なのに…師父が僕をそういう目で見てくれることは一生ないのに、諦め切れなくて…」
     目蓋が熱くなっていることに気づいて、慌てて顔を背ける。ここで泣くなんて卑怯だ。師父は涙に惑わされたりはしないけれど、でもやっぱり少し困らせることは分かっていた。可愛がっている弟子の僕なら尚更。でも一度でいいから抱いて欲しい。
    「師父は僕とHするなんて嫌なんでしょ?大丈夫、僕が全部するから。師父は寝てるだけでいいから……」
     師父は一瞬目を見張り、すぐ無表情に戻った。
    「…私は、お前にそんなことをさせる気は一切ない」
     目の奥に、いつにない凄みを感じて僕は肩を震わせる。しまった言い過ぎた。師父は弟子にそんなことをさせる人じゃない。
    「ごめんなさい」
     僕が謝ると、師父は少し慌てたように言葉を紡ぐ。
    「そうじゃない。私が言いたいのは…お前が犠牲になる必要はないと言うことだ。性交渉は、想いを言い交わした相手と愛情と敬意を持って行うものだ。それ以外の状況でするものでは絶対にない」

     想いを言い交わした人と…

     愛情と敬意……

     僕の心臓がドクリと音を立てる。
     分かってる。師父は僕のことを心配して言ってくれているんだ。
     頭では分かっているのに、師父にとって僕はそういう対象ではなく、師父がそういう意味で僕とHすることはこの先永遠にないんだと宣言されたように聞こえてしまう。実際そうなのだから仕方がない。でも、僕の中でいけない考えがムクムクと頭をもたげてくる。

     師父は僕のことが好きじゃないんだ。

     僕はHする価値もない妖精なんだ。

     師父に振られてから何度もそういう考えが浮かんでは、必死に頭から振り払ってきた。自分だって、つきあって欲しいと言ってくれる相手を断っているのに、自分が断られたら嫌だなんて矛盾してる。
     師父にも相手を選ぶ権利はある。我慢しなきゃいけない。二度も断られてるのに、これ以上師父を困らせたらいけない。
     でも…でも、この機会を逃したら、もう永遠に師父とできる機会なんてない。
     僕自身の魅力の無さを非常事態で補おうなんて、僕はひどい妖精だ。師父の気持ちより自分の気持ちを優先しようとしてる。
     こんな自分勝手な自分は嫌だ。いつでも、師父の気持ちを考えて、師父を大事にして、師父に幸せでいて欲しいのに。
     でも…

     一回くらいなら許されるんじゃないか?

     普通の人間の寿命をはるかに凌駕するほど生きている師父の、ほんのわずかな時間。つきあって欲しいなんて大それたことは望まない。今回一度きりなら師父も、僕が上手くやれば応じてくれるかもしれない。

    「もう師父ったら。今のは冗談だよ」
     僕は気を取り直し、明るい感じで切り出す。
    「師父はかっこよくてモテるから、今まで何十人、何百人とそういうことしてきたんでしょ?だったら、その中の一回くらい、僕にくれてもいいじゃない」
     さっきの告白は些か重くなってしまった気がするので、今度は軽い調子で師父に笑いかけてみる。軽い奴だと思われてしまってもいい。師父もその方が気が楽だろうし。
    「いや、さすがにそんなには…」
    と当惑気味な師父。
     え、そうなの?
     強い師父に反発してる妖精もいるけれど、想い慕ってる子もたくさんいる。街に出た師父を見つめる視線も一つや二つじゃないんだけどな…。
     僕は師父を見上げた。
    「じゃあ、何人くらいとしたことあるの?」
     さっきまで深刻に悩んでいた僕も、気になっていた新規情報に少し胸が沸き立つ。
     僕のあけすけな質問に師父はしばらく悩んでから、僕を無言でじっ…と見つめてきた。
     あ、これ、話をうやむやにしようとしてるいるな。およその人数くらい知りたかったのに。ちえっ。
    「実は私もお前のことが好きなんだ」
     ん?
     …んん?
     なんだか、今、師父に告白された気がするけれど…。
     そんな…いやまさか…と、少々期待しながら師父を見上げると、師父はいつもと同じ無表情だった。
    「…もしかして今、僕に告白した?」
     少なくとも外見はいつも通りの師父に、僕がそう尋ねると、
    「そうだ」
     同じく平坦な答えが戻ってくる。
     秘めた思いを告白する者の情熱や恥じらいが全く感じられない。それとも師父はこういう場面でも、通常運行の表情と声なのだろうか。
     それにしても、あまりにも…

     嘘くさい。

     僕はジットリと座った目つきで師父を見る。師父は目を反らさない。いつも通りの「無」の瞳である。さっきの、誤魔化そうとしている師父ととても似通っている。
    (嘘だな)
     僕は確信した。
    「嘘だね」
     あきれた様子を隠さない声を出すと、この期に及んで
    「嘘じゃない」
    と言ってくる。



     ほーーーーーーーーーーん?



     好きな相手が「抱いて」って言いながら告白してきたら、すぐ押し倒すでしょ。なのにさっき手を出さなかったでしょ。
     それが答えじゃん…!
    「本当に僕のことが好きなら、さっきHしてるでしょ」
    「え…」
    「好きな子がHしようって言ってるのに断る男なんていないよ」
     図星を突かれた師父が、焦りの表情を瞳に浮かべる。僕はその様子を見てフンッと顔を背けた。
    「『僕の事が本当に好きだから、こんな場所でしたくない。一刻も早くここから脱出して、落ち着いた場所で改めて結ばれよう』…なんて言うつもりでしょ。Hを回避する為に嘘ついてるんでしょ?」
     そりゃ、ネット情報に疎い師父には大変な状況に見えるかもしれないけど、僕だってがんばって告白したんだよ?
     そんな決死の告白を軽んじるような師父の発言を受けて、僕の中に苛立ちと怒りの感情が芽生えてくる。

     こうなったら絶対にHしてもらうんだから…!
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