取れない蓋に手を掛けた「よっしゃ、泥った! 3凸! こいつは周回がますます捗ってしまいますなあ〜!」
思わず端末片手にガッツポーズ。2凸までは割とさくさくいったけどそこからいきなり渋くなるからマジでどうしようかと思った。ソシャゲあるあるとはいえムカつくものはムカつくので。
ふと表示された時刻を見ればとっぷり夜も更けた時間だった。はて、と首を捻る。部屋をぐるりと見渡す。いつもならとっくに入り浸ってるか逆にそろそろ帰りますねと言ってくるあの子がいない。拙者が気づかない間に来て帰って行ったのだろうか。
端末のアプリを切り替える。特に新規メッセージもチャットも来ていなかった。あの子は先輩の部屋に連日入り浸る程度には図太いくせに妙に律儀だから来る時と帰った後は必ず一言残していく。謙虚さはないけど真面目だよね、と言ったら「ふふく」と陳情が来たのを思い出した。もしかしてそれが来なかった理由、とか?
「………いやいやいや! 別に来なくなってもいいじゃん。寧ろゲームに開発に自分の時間がたっぷり確保されて寧ろ最高だよ。それにあっちだって僕以外の奴のとこに行ったっておかしくないですし? 寧ろ今までがおかしかっただけっていうか? うん、元に戻っただけだから何も問題ないっていうか?」
胸によぎった臭い物に蓋をして自らに言い聞かせる。その言葉がいやに空虚に響いて変なところでじくりとしたけれど、見なかったことにした。こんなくだらないものに時間なんて掛けたくない。
翌日、呑気な顔して「イデア先輩、今日遊びに行きますね」なんてほざいた君にうっかりキレそうになった。マジでなんなの?