ホット・デイにサービス スマホに浮かんだ君からの通話通知とヘッドホンから流れてくる通話音に思わず椅子から飛び上がってしまった。チャット愛好型の陰キャに通話とかいう異次元手段を要求してくるとかどういうつもりなんですかね。というかいつもメッセかチャットのくせになんで電話?
「イデア先輩、助けてくださぁい…………」
「あまりにも声が情けなくて草。何、どうしたの?」
「外が暑すぎて溶けそうで……今部屋の前にいるんですけど入れてくれませんか……?」
「いやそんなんチャットでいいじゃん。なんで電話した? まあ別にいいけどさ。ロック解除するからちょっと待ってて」
「神~~~」
部屋のロックを解除すれば自動でドアが開く。その向こうから運動着姿で汗だくの君が真っ赤な顔をしてよろよろと入ってきた。ぺしょりとそのまま床に倒れ伏す。えっ、これ大丈夫なんです? 熱中症とか脱水症状とかじゃないよね?
「今日の気温があまりにもイカレすぎててキレそうでした。イデア先輩が運動系教科を全力で嫌がる気持ちがこの上なくわかりましたよ」
「それは何よりだけど水分補給ちゃんとした? へろっへろすぎて流石の拙者も心配になるレベルなんですが……」
「あ、はい。そのあたりはちゃんと。ふふ、床が冷たくて気持ちいい……」
「ああそう……休憩するのは別にいいけど、後で床拭いといてよ」
「もちろんでーす」
力なく笑った君に思わず顔を顰めた。確かにちゃんと後でやってくれるとは思うけど、それはそれとして流石にちょっとへばりすぎじゃない? 合同授業でペア組んだ感じ、人並には体力ありそうなんだけどなこの子。
「……アイス食べる?」
「食べたいです!」
がばりといきなり体を起こした君に「ひっ」と短く悲鳴を上げた。その目は太陽よろしくきらきらと輝いている。なんだよ、元気いっぱいじゃん。拙者の心配を返せ!