好奇心は煩悩を全力で殺す ふと目が覚めてスマホを手に取る。時刻は明け方を示していた。全然二度寝できるじゃん、なんでこんな時間に目が覚めたんだ拙者。
スマホの画面を落として放る。なんとなく横を見ればすやすやと気持ちよさそうに眠る君の姿があった。平和なおかおで夢の中を漂っているのだろうか。
ぼけっと寝顔を見ていて、口がもごもご動いていることに気づいた。髪の毛は特に口に掛かってないし、夢の中で何か食べているのだろうか。食い意地張りすぎでは?
なんとなく手を伸ばして唇に触れてみる。ふに、とおよそ人体とは思えない柔らかさにびくついてしまった。反対の手で自分のそれに触れる。少しばかりかさついたそれはウルウルでプルプルの君のそれとはあまりにも触感が違くて戸惑いが脳を占める。人間として同じ部位の筈なのになんでこんなに違うんです?
プニプニと君のやわっこい唇の弾力に興味をそそられていると、不意に指の腹が湿ったく濡れる。その感覚を理解するや否やかぷりと君の口に僕の指が咥え込まれてしまった。驚きのあまり悲鳴すらも上がらず、しかし髪は勢いよく噴き上がる。
君の口の中は一瞬でふやけそうなくらい熱くてぬるぬるしている。僕の指を何と勘違いしているのか、カプカプと甘噛みしては小さな舌が絡んでちゅうちゅうと吸う。呼吸の乱れが一切ないから本当に寝入っているのだろう。
無垢な顔で、無邪気に、僕の指をしゃぶる様が。拙者の煩悩に向かって無慈悲に殴り掛かってくる。じわじわと熱が溜まっていく。つ、と首筋に汗が一筋伝った。