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    namae_ha_niwa

    @namae_ha_niwa

    ⚠️真面目な投稿とカス性癖投稿が混在しているので、作品一覧は開かない方がいいです‼️

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    namae_ha_niwa

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    執行盾ムルグレです。
    ラブラブ甘々、エロいことはしていない(人間基準)なんですけど、ドエロいことはしています(執行基準)。

    天使の文法⚠️このお話の読み方⚠️
    ・執行ムルソー×ツヴァイグレゴール
    ・全てにおいて捏造マシマシ
    ・ラブラブの甘々
    ・2025年5月13日ムルグレの日おめでとう!


    ==========

    「ムルソー」
     彼にそう呼ばれた者は、実は人間ではない。ムルソーは天の執行官の補佐という生き物で、とある経緯で彼に惚れ込み、今は一つ屋根の下で暮らしを共にしている。そんな彼に今まさに押し倒され、ベッドの上に茶色い髪を散らばらせている彼は、グレゴールという。
    「ムルソー」
    「……」
    「何怒ってんだよ」
    「怒ってはいない」
    「嘘吐け、そんなむすっとした顔して」
    「やや不快ではある」
     グレゴールは仰向けに寝転がったまま、自分を見下ろすムルソーの頬に手を伸ばした。
    「隠さないのかよ」
    「天の執行官の補佐であるが故に」
    「そこは『俺に訊かれたから』だろ、可愛くない」
    「嘘を吐くべきだというのか」
     グレゴールはそれには答えず、くすくすと笑った。
     ムルソーが不機嫌そうな表情を隠しもしていないのは、グレゴールが着ている寝巻きのせいだった。柔らかい生地でできたそれは一見何の変哲もない、どちらかというと質は悪くないものだったが、言われてみれば気付くような特徴があった。ボタンが多いのだ。
     正中線に沿って布地を繋ぎ止めるそれらは小ぶりで、半透明の目立たない色味は寧ろワイシャツなどにこそ似つかわしいと思われる。それだけではなく、いつ使うのか分からない胸ポケットの蓋を留めるものや、ただ並んで二つついているだけの飾りボタンなど、およそ寝巻きとしての機能に関係のないものまでついている始末。ムルソーはそのボタンたちを睨みつけていた。
    「……」
     ムルソーは無言で、胸ポケットの上で孤軍奮闘しているボタンに手を伸ばすと、指先で探るように撫でた。
    「んっふふ……そこから外すのか?」
    「この一つだけ外せば他の全ても外れる、ということはないだろうか」
    「ないよ! んっふふ……怠惰過ぎるって……」
    「ならこの二つは」
    「ざーんねん、その二つは飾りさ。外れないよ」
    「……」
     ムルソーは、グレゴールの素肌に触れたいのだった。素肌で触れ合って、愛を交わしたいのだった。それを、グレゴールは留め具だらけの布を纏って、意地悪に邪魔しているのである。
     ムルソーは大柄な人間程度の大きさをしているが、本来はもっと規模の大きい存在だ。身体のサイズが、という問題ではない。存在の規模だ。彼は本来、グレゴールの生きる世界の因果律を見下ろすような世界に住み、少し気を抜けば四季が巡ってしまうような時間感覚で生きているのだ。
     そんなムルソーにとって、グレゴールの服の上にある小さな小さなボタンを、因果律に干渉することもせず、ただ手指の物理的な操作で以って外す作業は、かなりの集中力を要する仕事だった。人間の感覚で例えるなら、柄付き針で蚊の幼虫から唾液腺を引き摺り出す作業のような細かさと言えるだろう。
     ムルソーはしばらく唸ってから、観念したかのように、グレゴールの喉元にあるボタンに手を伸ばした。
    「服は壊してはならないから、難しいな」
    「そうだぞ〜、そのくらいの甲斐性は見せてくれ」
     グレゴールはツヴァイ協会の中でも四課に所属している。故に、身体は鍛えているし、そんなにヤワなはずもない。しかし人間である以上、ムルソーなら容易に壊してしまえる。ムルソーは、自分の腕がグレゴールの首や胸を壊してしまわないよう、一層の注意を傾けながら布とプラスチックを摘んだ。
    「……」
     室内灯を微かに反射する円板を傾けて、柔らかい布地に空いた穴を潜らせようとするムルソー。しかし、二度、三度やっても上手く穴の端を捕まえられず、ただつるつると表面を撫でるばかり。早々に先行きが不安になったのか、ムルソーが眉間に皺を寄せる。
    「……やはり、因果律を操作して“外れたことにして”はいけないだろうか」
    「ダメだって! まずはちゃんと、人間のやり方で愛してくれよ」
     笑ったグレゴールの胸が細かく上下するのを、ムルソーはパジャマの生地越しに感じた。
     その後も大変に苦労を重ね、まるで練習中の幼児のように長い時間をかけて、ムルソーはグレゴールを脱がせるのに必要なすべてのボタンを外し終えた。グレゴールの、しなやかな筋肉に覆われた、それでもムルソーのそれよりかは薄い胸板が、今やムルソーの眼前に晒されていた。
    「やればできるじゃないか」
    「……頭を撫でてほしい」
    「おーよしよし」
     グレゴールは、ムルソーの頭をそのまま胸骨の辺りに引き寄せ、抱え込むようにして撫でた。ムルソーは少しの間、むずがることもなくその温もりを甘受していたが、やがてグレゴールの体表を這うように前進すると、顔を上げてグレゴールの目を見た。
    「そろそろ良いだろうか」
    「……あぁ、良いよ」
     グレゴールの言葉を合図に、ムルソーは沈み込み始める。比喩ではなく、本当にムルソーの身体がグレゴールの体内へと沈み込んでいるのだ。
     まずはムルソーが人間のやり方で愛し、次にグレゴールが天上のやり方で愛される。初めからそういう約束だったのだ。ムルソーはグレゴールの要望通り、きちんと手でボタンを外して彼の身体に辿り着いた。今度はグレゴールが、正体不明の愛情を受け容れる番だった。
    「あぁ……っ、……」
     物理法則を超えたムルソーがこの世界に持ち込んだ愛情は、敢えて人間の言葉で表現するのなら、「共有」や「同化」となりそうなものだった。グレゴールの身体の中にムルソーの精神が入り込み、身体の感覚を味わったり、動作の主導権を握ってみたり、直接感情を覗き見たり。肉の檻とクオリアの壁に阻まれた人間同士では決してできることのない交わりを、ムルソーは求めていた。
     そして、それを安全に行うために、衣服が邪魔だったのである。間に異物を挟んだまま、ムルソーが彼の中に入ろうとすることで、グレゴールに何か悪影響があってはいけなかったから。
    「……あぁ、また。また、俺の身体が好き勝手に動かされちまうんだな。……嫌じゃないよ。慣れないだけ」
     鼓膜を介さず聞こえる声が、だんだんと大きくなるのを感じて、グレゴールはあやすような調子でムルソーに弁明した。得体の知れぬ何かに身体を侵蝕される感覚の中、紡ぎ出された言葉に満ちるのは、空虚な諦念などではなく、ただ甘やかな赦しの調べ……。
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