雨宿りの間だけ乳繰り合う蘭はるの話ポツリ ポツリ
小さく肩を叩くように落ちてきた水の粒に気づき、三途は空を見上げた。頭上には鉛色の雲が重苦しく立ち込めている。今朝見た情報番組の天気予報では雨の予報はなかったはずだが、気象予報士は当てを外したらしい。
仕事を終えた三途は、迎えの車を待っていた。繁華街のメインストリートから少し入り込んだ雑居ビルの一角に見える空はひどく狭い。それでも、こんな狭い隙間を縫って降り込んでくる雨は少なくない。この調子では車が到着する前に水浸しになってしまいそうだ。
生憎、傘など持ち合わせていない。辺りを見回した三途はシャッターの閉まった店舗を見つけて軒先に身を寄せた。シャッターが下りて長らく経つのか、手入れされていない軒からはところどころ雨が漏れて三途の鼻先を雫がかすめていく。気持ち程度の雨宿り効果しか期待できなさそうだ。
1994