黒の懐刀と兄貴 あの日、そのガキを拾ったのはただの気まぐれだ。
ガキを盾にする哀れな男は完全に恐怖で動けなくなってるっていうのに、俺を見るガキの目に恐怖はない。
銃を突きつけられたにもかかわらず無抵抗で、この世の全てを諦めてような顔で俺を見たガキ。そのくせ、俺に向けられる殺意が込められた目だけがギラついていやがる。
面白いガキだ。
だがこのガキを助ける理由も、道理も、俺にはない。それにこんなクソ施設にいるってことは大方親に売られたか、誘拐でもされたんだろう。んなことでいちいち同情する気もないが、このガキを簡単に殺すのは正直惜しい。
「おい」
気付けば俺はそのガキに声をかけていた。
諦めと殺意といった真逆な性質を磨けば使えるだろうと、打算でしかなかった。それだけのつもりだったんだが……
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