大人の事情と言われて納得できるのは大人だけ「ん」
突き出されのはマスタードーナツの箱だった。
なぜこの女が、私に?好物を前に咄嗟に言葉が出ず、受け取る手が躊躇ってしまう。
チャイナ娘は丸い瞳をじとりと細めて、お前にじゃねーヨ、とわざとらしくため息をついた。
「そよちゃんにだヨ。お前通さねーと渡せねーだロ」
「ああ、そう……」
「……まァ、間違えてポン◯2個買ったから、1個くらい食ってもいいケド」
「……そう」
「そよちゃんがいいって言ったらだけど。あと、フ◯ンチクルーラーも間違えて2個あるから、1個くらい食ってもいいけど」
「そう」
やっと受け取ったその箱はずしりと重い。姫様のちいさな体にこれら全てが入り切るとは思えない。食べきれなかったら勿体無いから、私が8割くらい食べてやってもいい。
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