初めて彼を見た時、こんなに完璧な人が世の中にはいるんだなとそう思った。高級そうな洋服すら、彼を引き立たせる一つのアイテムに過ぎないのだろう。整った容姿に、人懐っこい笑顔をこさえれば、彼のことを嫌いになる人なんていないはずだ。かくゆう俺も、歯を見せられてつい見惚れてしまったのだから。
「御影玲王と言います。貴方が優秀だと聞いて、本部には少々無理を言ってしまいました。これからよろしくお願いしますね」
お手本のような挨拶をすると、御影玲王は手を差し出して握手を促した。これから俺の雇い主になる人だ。有名な御影財閥のお坊ちゃんで、俺と歳は変わらないというのに子会社をいくつか任されているらしい。今回新しく立ち上げる企業の社長になるということで、護衛を主とする周囲の世話役を頼まれた。なぜ俺が選ばれたのかは分からないが、軍にいるより給料はずっといいし、あれこれ優遇してくれるらしいし、二つ返事で承諾した――もとより拒否権はなかったが。
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