聞き慣れたアラーム音で、沈んでいた意識が浮上する。
「ん〜……」
なり続ける音が響いて頭が痛いし気持ち悪い。昨日勝負に負けてイッキなんかしたせいだ。重くて開かない瞼をそのままに、枕元にあるはずの音源を探る。ぽふぽふと柔らかいマットレスを叩きながらスマホを探していると、衣擦れの音がしてから画面を叩く音、そしてアラームが止まった。
「え」
_____やらかしたか!?
人がいる、と気づいた瞬間にざあっと血の気が引いて一気に覚醒する。
勢いに任せて飛び起きる。隣に、誰かいた。
まず目に映ったのは、長い長い黒髪。それから、スマホを握る大きな手。あきらかに、女性のものではない首筋と肩_____
「ん、おは、よう……」
聞き覚えのある、低く響く声。
その人が身をよじり、はらりと顔にかかっていた髪が肩に流れる。半分だけひらいた眠そうな目が、ぼくを見た。
「……しげ、もとさん?」
どう見ても重本さん。でも髪が長い。腰くらいまでありそうだ。大丈夫、おちつけ、パジャマは着ている。クマは薄いが、少し老けたように見えた。そもそもなんで同じベッドにいるんだ。昨日この人と会っていた記憶はない。というか、このベッドもぼくのものじゃない。こんなに男二人で寝てゆとりがあるほど大きくない。いや、そもそもここは、何処だ?
「どうしたんだ、そんな、昔の髪型で」
サプライズか?と言って重本さんが柔らかく微笑む。
見たことのないくらい優しい顔にドッと心臓が危険な音を立てるが、その傍で混乱は止まらない。
昔の髪型?昔ってなんだ?なぜ重本さんはぼくと同衾していることに違和感を持っていない?
「えと、あの、すみません、ぼくは」