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    Ikaryaku_BAL

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    Ikaryaku_BAL

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    ラヴィさんの過去編補完
    前編です続くかはわからない
    ラヴィさんのお姉さんの名前がレッカさん
    前は違う名前を言っていたかもしれませんが今日からレッカさんです。

    或る女レッカは村で一番頭がよかった。
    村のどの子よりも早く文字を覚えて、五つになる頃には家にある子ども向けの本に飽き、父の読む新聞を覗き見ていた。聡明で利発。レッカを褒める大人たちは口を揃えてそう言った。

    レッカは村で一番友達が多かった。
    早熟なレッカが新聞で知った遠くの出来事を話せば、子どもたちは物知りな少女に尊敬の眼差しを向けた。頭の回転が早く、子どもたちのどんな問題も解決してしまう少女を、みんなが慕っていた。他の子より少しだけ体が弱かったものの、レッカの周りにはいつも人が集まっていた。

    レッカには妹がいた。
    妹はレッカと違って平凡な子どもだった。読み書きはもちろん勉強中だし、引っ込み思案な性格で人見知りもした。けれど、レッカは妹が一番大好きだった。妹が熱を出したとき、村のみんながレッカと遊びたがっても、レッカはつきっきりで妹を看病した。体の弱い自分に熱がうつるかもしれないと知っていても、弱った妹を支えたい一心でそばに居続けた。
    妹もまたレッカのことが大好きだった。いつでも姉の後ろをひょこひょことついてまわって、誰より近くで姉の話に目を輝かせていた。

    姉妹には日課があった。
    文字を学んでいる最中の妹のために、毎晩レッカは本の読み聞かせをしていた。レッカが妹の年だったころにはとっくに一人で読めるようになっていた童話を、少しずつ読み進めていく。お姫様が王子様に出会って真実の愛に目覚めるありふれたお話。レッカの言葉に聞き入った妹が、真剣な顔で文字をなぞる。その姿が、レッカには何よりも可愛く見えた。

    姉妹はお互いを愛していた。姉は妹を可愛がり、妹は姉を尊敬していた。



    ♦︎

    月日は流れ、姉妹はそれぞれ子どもから少女へ、そして大人のすこし手前まで成長していた。

    その年は、レッカが生まれて初めて体験するほどの不作の年だった。それは明日食べるものさえ心許ないほどに人々を追い詰めて、平和な村はあっという間に不安と憂鬱に飲み込まれた。
    村の子どもたちのうち何人かは、遠くの奉公へ出された。青年たちは出稼ぎのために村を出た。何もない辺境の、平和だけが取り柄のような村にとって、この大不作は受け入れがたい大きな不幸だった。それでも、人々は何とか日々を繋いでいた。いつ日か、もとの暮らしに戻れるだろうと期待して。



    ♦︎

    不作の年から二年が経った。しかしいつまで待っても、村に以前の暮らしが戻ることはなかった。二年の間ずっと、村の暮らしはぎりぎりだった。いや、本当はとっくに崩壊していたのだろう。いつの間にか村から老人が消え、子どもの声はとても少なくなってしまった。大人たちに活気はなく、終わりの見えない飢餓に誰もが絶望していた。

    その年の冬は、凍える村人たちの心よりももっと冷たく、厳しい風と雪を村にもたらした。村は深い雪に閉ざされ、他所の村に食糧を買いに行くことすら難しい日が続いた。一日一食のうすいスープは最早塩水と変わらない味がした。日に日に苦しくなる生活の果てに、遠からぬ未来、人が亡くなり始める予感があった。妹の器に少しだけ多めに塩水のスープを注ぎながら、レッカはこのままでは自分がそうなるだろうと思った。

    風が激しいある晩に、レッカは父母が暗い表情で何か話しているのを聞いた。気配を殺して耳を側立てると、それが口減しの話だと分かった。
    それぞれの家から、役立たずを追い出す。買い付けのためなどと理由をつけてはいるが、この吹雪の中では近くの村まで到底辿り着くことなど叶わないだろう。体の弱いレッカは、あまり力仕事ができない。言うまでもなく村に不要な役立たずだ。自分が死ぬ、という予感が途端に現実味を帯びて、何か冷たいものに貫かれるような感覚が全身を支配した。死にたくない、と強く思った。

    そのとき、小さな物音がした。父母は気がつかなかったその音に、レッカは気づいてしまった。レッカの可愛い妹もまた、その話を聞いていた。そのことに気づいたとき、レッカの頭は、至極冷静に、冷酷に、ある答えを導き出した。


    つづく
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    Ikaryaku_BAL

    TRAININGラヴィさんの過去編補完
    前編です続くかはわからない
    ラヴィさんのお姉さんの名前がレッカさん
    前は違う名前を言っていたかもしれませんが今日からレッカさんです。
    或る女レッカは村で一番頭がよかった。
    村のどの子よりも早く文字を覚えて、五つになる頃には家にある子ども向けの本に飽き、父の読む新聞を覗き見ていた。聡明で利発。レッカを褒める大人たちは口を揃えてそう言った。

    レッカは村で一番友達が多かった。
    早熟なレッカが新聞で知った遠くの出来事を話せば、子どもたちは物知りな少女に尊敬の眼差しを向けた。頭の回転が早く、子どもたちのどんな問題も解決してしまう少女を、みんなが慕っていた。他の子より少しだけ体が弱かったものの、レッカの周りにはいつも人が集まっていた。

    レッカには妹がいた。
    妹はレッカと違って平凡な子どもだった。読み書きはもちろん勉強中だし、引っ込み思案な性格で人見知りもした。けれど、レッカは妹が一番大好きだった。妹が熱を出したとき、村のみんながレッカと遊びたがっても、レッカはつきっきりで妹を看病した。体の弱い自分に熱がうつるかもしれないと知っていても、弱った妹を支えたい一心でそばに居続けた。
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