愛を与える男、奪う男。 -Pete編- *
痛いのは好きじゃない。
父さんがいつから暴力を振るうようになったのか。実を言うと、はっきりとは覚えてない。でも俺が小さかった頃は、どこにでもいる普通の家庭の優しい父親だったような気がする。
父さんがボクシングを始めた切っ掛けをばあちゃんがいつだったか教えてくれた。"女手一つで育ててくれる母親を守れるように強くなりたい" そう、笑う息子だったと。俺の手を掬い上げ、ごめんねと謝りながら話すしわくちゃな手は震えていた。
父さんと母さんは若くして結婚し、周りより少し早く親になった。子供心に何か変だと感じはじめたのは俺がボクシングをやらされる少し前あたり。怒鳴り声で目覚めた真夜中過ぎ、そこには涙を浮かべる母がいた。
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