循環障害 全国大会が終わり、遼平を招いて遊んでから1週間が経った。解いていた問題集から顔を上げて俺は軽いため息をつく。自分に集中力がないのはわかっている。頭の中は遼平と会った1週間前のことを気づけば無意識に反芻していて思考を邪魔していた。
あの日は特別何か起こったわけではない。けれどすごく楽しそうに沙絵と笑い合っていた遼平の顔を何度も思い出してしまう。自分でも無意識で行ってしまうので気づいたら遼平の顔が思い浮かんでは記憶が再生される。これは一体なんなのだろう。確かにあの時間は楽しかったけれど。
遼平はいつも明るくて、遊びに来た時には家の雰囲気を明るくしてくれる。広い家の中にはそれなりに人数もいるはずだが、いつも静かだ。しかし、遼平がいる間は明かりが灯ったように温かく笑い声が溢れて心地よい。あの日を恋しいと感じているのかもしれないと、この時ぼんやりと意識したのだった。
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