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    ちりもち

    @magimoji

    ツイッター:ちり@magimoji(現在鍵付)
    愁遼妄想描いたらポイポイしていきます。

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    ちりもち

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    愁視点の誕おめ愁遼です。
    原作未読、アニメのみ視聴済みでの妄想。
    藤原邸敷地内について勝手に妄想した非公式なものが含まれています。
    他妄想が多分に含まれているため、ご了承の上お読みください。
    最初は束縛強強彼氏な愁くんだったのでマイルドに修正しました笑

    循環障害 全国大会が終わり、遼平を招いて遊んでから1週間が経った。解いていた問題集から顔を上げて俺は軽いため息をつく。自分に集中力がないのはわかっている。頭の中は遼平と会った1週間前のことを気づけば無意識に反芻していて思考を邪魔していた。
     あの日は特別何か起こったわけではない。けれどすごく楽しそうに沙絵と笑い合っていた遼平の顔を何度も思い出してしまう。自分でも無意識で行ってしまうので気づいたら遼平の顔が思い浮かんでは記憶が再生される。これは一体なんなのだろう。確かにあの時間は楽しかったけれど。
     遼平はいつも明るくて、遊びに来た時には家の雰囲気を明るくしてくれる。広い家の中にはそれなりに人数もいるはずだが、いつも静かだ。しかし、遼平がいる間は明かりが灯ったように温かく笑い声が溢れて心地よい。あの日を恋しいと感じているのかもしれないと、この時ぼんやりと意識したのだった。


     
     
    * * *


     
     遼平と遊んでから2週間が経った。先週より自身に空虚さを感じるようになった。必要なものが欠けているような、欲しいものがあって目に見えているのに手が届かないような、そんな感じがする。
     遼平が最初に家に来た時に、彼の言葉で俺は今まで気づけられなかったことを気づくことができ、満たされた。あのかっちりと自分の空いていた心に嵌るピースを手渡された感覚は初めてだった。『すごいな、遼平くんは』あの言葉はありのままの言葉だ。今でもあの時の衝撃と幸福感は心に残っている。
     彼に会いたいと思っていることには今週に入ってから気づいたことだ。あの柔らかい雰囲気をまた感じたい。だけれど連絡を取る手段はあっても理由がなかった。今まで友人に自分から必要な時以外連絡を取りたいと思ったことがなかった。なのでこういう時にどう連絡すればいいのかわからない。沙絵はまた会いたいと言っていたので口実にしてもいいのかもしれないけれど遼平が沙絵ばかり構うのを、今は良しとできない気がした。
     どうしよう、と考えているうちに週末が終わってしまって、空虚感を抱えたまま週明けを迎えてしまった。



     
    * * *

     
     
     空虚感が飢餓感に近いな、と思い始めた4週間目、遼平から連絡がきた。携帯のロック画面に遼平のアイコンが表示された通知があるのを見つけるとすぐに確認する。
    『こんにちは、この間はお招きありがとう』
    『また愁くんと遊びたいんだけど、また今度遊びに行ってもいい?』
    『何かしたいわけじゃないんだけど、愁くんと話すと元気がもらえるからお喋りできたら嬉しい』
     頭の中で文章が遼平の声で再生される。なんてこともなく素直にまた遊びたいと言ってくれる素直な遼平に無意識に口元を上げてしまった。
    「愁、食事中に携帯を見るのは控えなさい」
    「すみません。……父さん、先日遊びに来てくれた遼平を今度また家に招待したいと思っているんですがいいでしょうか」
    「遼平さんまた来てくれるんですか?その時は私も会いたいです兄様」
     遼平と聞くと沙絵は目を輝かせてこちらをみてきた。俺は家に友人を呼ぶことがほとんどないし、沙絵もそうだ。家で家族とお手伝いさん、学校で同級生、お稽古事で先生や友達。それ以外他者と関わりが薄かった沙絵にとって遼平は親しみのある優しいお兄さんなのだろう。今まで俺が積極的に関わりを持っていなかったのもあるからかもしれない。毎回遼平が来ると短時間でも顔を出してきて、とても喜ぶものだから両親も許容している。害はないと判断されているのだろう。
     いつ来るのか連絡をするように言われ了承し、その日の夕食は何事もなく終わったが沙絵はそれ以降機嫌が良さそうだった。来る日を教えてくださいね、絶対ですよ!と念を押されたのはそれだけ沙絵が遼平に懐いている証拠だろう。
     彼の話題が出るだけで俺も沙絵も会話や表情が明るくなってしまう。ここには居ないのに居るように感じて気持ちが温かくなり不思議な気持ちになった。
    部屋に戻ると携帯を取り出しすぐ返信する。
     『いいよ。今週末は空いてるけどどうかな』
     今回は自分の欲求通り最短日を提案した。

      

     
    * * *
     
     
     
     週末、待ちに待った遼平が来た。朝食時に沙絵がそわそわしていたのが微笑ましかったが、自分も内心そわそわしている。行動に出していたつもりではなかったが、両親には普段とは違うように映ったようでそんなに楽しみにしていたんだな、と兄妹で揶揄われてしまった。
     「愁くんこんにちは!今日はOKしてくれてありがとう。楽しみにしてたんだ」
     お昼過ぎに来た遼平と応接室でお茶を飲みながら話をする。何をする、と決めていたわけじゃないから連絡があった通りにお茶をしながら話をした。最近の各々の弓道部が主な話題だ。
     朗らかだけれど穏やかで、春の陽だまりで日向ぼっこをしているような気分だ。昨日まで感じていた空虚感が満たされていくのを感じる。なんだか飢えている狼が餌を与えられて満足するまで貪っているイメージが出てきて、俺が感じていた飢餓感という表現はあながち間違いではなかったんだなと納得してしまった。
     しばらくするとお稽古から帰ってきた沙絵が合流した。年齢の割に落ち着いていて大人しいと言われる沙絵が遼平の前だと表情豊かに子どもっぽい仕草が出てきていて、それだけ気持ちが高揚しているのがわかった。相変わらず優しいお兄さんの遼平はそれが可愛いようだ。今まで俺を見ていた瞳は沙絵に割かれるようになって、また空腹感が出てきたのを感じる。何故、と思うより先に俺はこの目の前にいる温かい光が欲しいのだと、自分のものにしたいのだと自覚した。ストンっと心に入ってきた自覚に、目線を伏せて口元を手で隠して浸ってしまう。これがもしかして恋というものなのか……。
    「愁くんどうしたの?何かあった?」
    「兄様?」
     2人が大きい目をこちらに向けて首を傾げている。どちらも可愛く愛らしい。が、自分が感じる気持ちの種類と大きさが違うのはわかる。
     いつも通りにしなければ、となんでもないよと誤魔化した。特別変に思わなかったのか、遼平は俺に沙絵ちゃん来たし何かして遊ぶ?と話を振ってきて、3人でたわいも無い話をしながら今日の遊びを決めていくのだった。



     
     楽しい時間はすぐ時間が経ってしまう。気づいたら空がオレンジと藍のグラデーションになっており薄暗くなっていた。遼平を見送る時間になり沙絵も一緒に玄関先に出てきて遼平が帰ってしまうのを惜しんでいる。
    「また遊びに来てくださいね」
    「沙絵ちゃんや愁くんが呼んでくれるならいつでも遊びにくるよ」
     遼平は幸い遊びに来るのを楽しみにしてくれているようだ。今回も自分から言ってくるくらいなのだし、今日も気分を害したところはなさそうだ。それならば……
    「遼平、今度はたこ焼きを食べに来ないかい」
    「この間の懇親会の時みたいにまた愁くんがたこ焼き焼いてくれるの?食べたい!沙絵ちゃんも一緒にたこ焼きパーティしたいね」
     沙絵の方を見ながら、ね!というと沙絵もこくこく首を縦に振ってこちらを見てきた。2人の期待にキラキラした目に頬が緩む。
    「決まりだね。次来るときは午前中においで。一緒に作ろう」
    「愁くんが教えてくれるならぜひ!」
     沙絵と遼平がまたハイタッチをして喜ぶのを見るとこちらも嬉しくなる。興奮気味なのか顔が頬を赤くしている沙絵を落ち着けたくて頭をポンポンと軽く撫でる。
    「いつなら空いているかい?」
     遼平は目線を右上に彷徨わせて悩み始めた。
    「来週も空いてるけど、あんまり頻繁にお邪魔するのは良くないだろうから…うーん」
     考えが声に出ているのに気づいていないのが彼らしい。そんなに無防備で大丈夫なのかと少し心配になる。
    「いや、俺も空いているし問題ないよ。沙絵も大丈夫かな」
    「お稽古事はありますが、少し時間をずらしてもらえないか聞いてみます!」
    「本当?来週も会えるなら嬉しいな。愁くんと沙絵ちゃんと遊ぶの楽しいから、毎週でも遊びに行きたくなっちゃうんだよね」
     迷惑だろうからそんなことしないけどね!と慌てて否定しているが、同じ気持ちなのは嬉しい。
    「嬉しいな、俺も遼平と遊ぶのが楽しくて週末しか会えないのが残念だよ。じゃぁ来週はたこ焼きパーティをしよう」
     理由がなくても来るたびに次の約束を取り付ければいい、そうすれば遼平と定期的に会うことができるだろう。彼から毎週でも会いたいと言われたのだから、嫌がらないペースで遊びに誘うことにした。
     来週は何と言って約束を取り付けよう、と目の前で喜んでいる顔を見ながら考えていた。



     

    * * *

     

     ※以下、藤原邸敷地内について記載していることは勝手に妄想した創作で非公式のものです。
      その他妄想が多分に含まれているため、ご了承の上続きをお読みください。



     

     って思っていた時期もあったな、と思い出していた。
     今日は5月11日、俺の誕生日。遼平と2人きりの時間が欲しくて散歩している。自由には外出できないので敷地内の神社だけれど、それでもいいと思い沙絵と合流する前に移動した。
     恋心を自覚したばかりの頃は、自分の飢えを満たすことばかりを優先していた。しばらくした頃、静弥から『恋人でもないんだからちょっとは控えなよ』と言われてしまったので少し反省している。たまに遼平も困った顔をする時があったので、強引なところがあったのかもしれない。指摘されたことで自分を情けなく思ったけれど己を変える機会があってよかったのでは、と今では思っている。
     「愁くん」
     隣にこちらを見て笑顔を浮かべる遼平がいるだけで心が飢えなくなった。一瞬一瞬がとても満たされている。
     「藤の花綺麗だね。こんなに沢山咲いてるの初めてみた」
     庭師が手入れをしている藤棚は丁度満開の時期だった。花房がいくつも垂れ下り視界を鮮やかな紫で楽しませてくれる。毎年見慣れている俺とは違い、遼平は携帯で写真を撮るのに夢中になっている。花を近くで撮ったり、全体的に撮るためにしゃがんで煽り気味に撮ってみたり、色々な角度で撮ってはすごいすごい!とはしゃいでいる。可愛い。
    「撮れたかい?」
    「うん。どう、綺麗に撮れてるでしょ?」
    「良く撮れてるね。花と一緒に撮るかい?」
    「撮る!愁くんも入って!」
     撮る係を申し入れたつもりだったが、彼は自撮りと受け取ったらしく顔を近づけてくる。
     遼平が携帯を持ち画面を合わせていたので、俺は彼の腰を引き寄せた。慣れてなかったからか少し恥ずかしそうにしていたが、しばらくくっついていると落ち着いて、腰に置いた手に空いた手を重ねてくれた。俺が空いた手で画面に触れると藤の花をバックにお互い笑顔の写真が撮れていた。
    離れるのが惜しくて空いた手を今度は遼平の頬に添える。頬が高揚しているのを優しく撫で、俺から顔を近づけるとギュッと目を瞑られてしまった。意識して貰えるのも期待してくれるのも嬉しいけれど、意地悪したくて頬にキスをした。
    「……愁くんが意地悪だ」
    「遼平が可愛いのがいけないんだよ」
    「それは、……うー」
     顔が赤いまま唸ってしまうところはやっぱり可愛くて、心がぽかぽかする。
     先日、遼平と付き合うことになった。まだそうなってから時間が経ってないから遼平が恋人のスキンシップに不慣れなのは当たり前だった。なにせ付き合うのは初めてらしい。遼平の初めての恋人になれたと知った時はとても気分が高揚した。俺も自分から告白して付き合うのは初めてだと伝えると、遼平は顔を隠して悶えていた。頬と耳が真っ赤だったのは言うまでもない。
     俺が恋心を自覚してから遊ぶたびに次の予定を立てていたが、遼平が毎回了承するので大体1週間に1回のペースになってしまい、家に来るようになって3ヶ月ほど経った頃には月1回でお泊まり会をしていた。遼平は誘ったら予定がない限り乗ってくれるので、嬉しいのだけれどこちらが戸惑ってしまうこともあった。もしかして沙絵に会いに来ているのかと思った時もあるが、毎回俺のところに最初に来て何でもない話題でも楽しそうにしてくれるし、3人でいるときも俺を除け者にすることもなく終始“3人で“楽しむスタンスだった。それに沙絵と2人っきりにならないように気をつけているようだった。遼平が家に来始めてから半年経つ頃には、流石に俺のことを嫌がってないと言う実感はできた。
     どこまで受け入れてくれるのか判断するのには時間を割いたけれど、ちょっとした出来事があり亮平を抱きしめてしまった時の遼平の反応で大丈夫なのではないかと思い、その場で告白したらいい返事をもらうことができた。その時に顔が真っ赤で、涙目でどうしたらいいかわからないと固まっていた遼平は今思い出しても頬が緩んでしまう。
     今も外せない予定がない限り遼平は週末に来てくれるので、付き合う前と同じような生活をしている。静弥から小言をもらってからも縛りすぎてはいけないと、遼平の意思を尊重しながら予定を組んではいたけれど、以前と変わりがないのは遼平も俺と一緒にいる時間を欲しているのだと思う。同じ学校だったら毎日会えるのにな、と思ってしまうのは仕方がない。
     俺は卒業後、大学に進学する。そこではもっと遼平に近くにいて欲しいと思う。今から週末は一緒に勉強する時間を作るのもいいかもしれない。今は進路が決まってなくても、今後決める上で学力があることに越したことはないだろう。上京を視野に入れれば同じ学校ではなくても一緒にいられる選択肢は増える。
     そう遠くない将来のことを考えてしまうが、一旦考えるのを止める。恥ずかしがり唸っていた遼平が少し落ち着いたのでゆっくり抱きしめる。今日のところは遼平との時間を満喫したい。
    「遼平、今日は祝ってくれてありがとう」
    「……こちらこそ、祝わせてくれてありがとう。改めて誕生日おめでとう」
     遼平も優しく抱きしめ返してくれる。今までの誕生日の中で1番幸せなように思えた。
     今後共にいる限り満たされるのと同時に空腹を感じていくのだろうと思うと、彼は手放せない存在になってしまった。
    「さっきの写真、後で俺にも送ってくれるかい?」
    「もちろん!」
    体を離すと甘い雰囲気は薄まり、短い2人きりのデートは終わらせ沙絵の元に移動するのだった。

     
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    循環障害 全国大会が終わり、遼平を招いて遊んでから1週間が経った。解いていた問題集から顔を上げて俺は軽いため息をつく。自分に集中力がないのはわかっている。頭の中は遼平と会った1週間前のことを気づけば無意識に反芻していて思考を邪魔していた。
     あの日は特別何か起こったわけではない。けれどすごく楽しそうに沙絵と笑い合っていた遼平の顔を何度も思い出してしまう。自分でも無意識で行ってしまうので気づいたら遼平の顔が思い浮かんでは記憶が再生される。これは一体なんなのだろう。確かにあの時間は楽しかったけれど。
     遼平はいつも明るくて、遊びに来た時には家の雰囲気を明るくしてくれる。広い家の中にはそれなりに人数もいるはずだが、いつも静かだ。しかし、遼平がいる間は明かりが灯ったように温かく笑い声が溢れて心地よい。あの日を恋しいと感じているのかもしれないと、この時ぼんやりと意識したのだった。
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