熱 熱に浮かされる、なんて言葉がある。
この日のオレと宮城はまさにそうだったと思う。
練習試合を勝利で終えた日。宮城が部室に残って部誌を書いていたので、オレも残っていた。用があった訳じゃねぇけど、なんだか帰りたくなかった。試合の余韻みたいなのが体に残っていて、熱が引かないようなそんな落ち着かなさを抱えたまま、一人で帰りたくなかった。だから、部誌を書いている宮城の机の前に椅子を持ってきて、腰を下ろしていた。
「なぁ、宮城」
「なんすか」
紙の上を滑る鉛筆の音がしている。
オレはその鉛筆の先を見るとも無しに見ていた。
「なんかさ」
「……なんすか?」
宮城の鉛筆の先は、文字なんか書いていなかった。なにやら星だか丸だか不思議なものを書いていた。なにしてんだ、こいつ。
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