はやいず本編④《side I》
朝、目が覚めると喉に違和感があった。頭がボーッとして、どうにもハッキリしない。目の奥が熱くて、視界に膜が張っているようにゆらゆらと揺れる。
癒月泉ははぁっ、と心なしか熱い息を吐いた。どうやら風邪をひいてしまったようだ。
「……どうせならこういうのも治ればいいのになぁ」
泉の能力は自身のあらゆる傷の再生。病気は範疇外なのだ。
はぁ、溜め息をもう一つ。風邪なんて久しぶりだ。そのせいかどうにも心細くて、泉はちらりとスマホを見た。思い浮かべるのは先日めでたく正式にお付き合いをすることになった恋人、射守谷快惺の顔。会いたい。連絡、してみようか。
少し考えて、泉はスマホの画面を消した。やっぱりダメだ。今日は仕事があると言っていたし、風邪を移してもいけない。
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