月光の審判さらさらと心地よい夜風が開け放たれた窓からそよいでいる。闇にかがやく月が天高く翳したのだから、普段ならそこの寝台でゆっくりと一日の疲れを癒しているはずなのだ。それなのに。
「……こひつじ君、審問の時間ですよ」
窓枠に腰掛けるその人は、異端審問官の衣装を身に纏い、愛用の杖と共にやってきた。
「え、は……?」
「おやおや、いつもの凛々しいお姿はどこへ?部屋着とはいえ、なんだかいつもより幼い気がします」
「こ、こんな時間に訪問しておいて……」
「フフ、そうでした。ねえ…この間のお話、覚えていますか?」
「……え!?えーっと……」
予想外の言葉が彼の口から飛び出してくる。いや、予想外の言葉はいつも聞いているのだがそれとは区分けそのものが違う気がした。自分の発した言葉に心当たりがないか必死で記憶を辿るが、当然そんなものはない。段々と彼の表情は曇り、それは悲しみに変わっていく。さっきまでの愉快な口振りから一転、落胆の滲む声音が部屋に響いた。
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