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    ひきなるも

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    ひきなるも

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    反社がスプラッタな部屋で遊ぶ話。反社がスプラッタな部屋で遊ぶ話。


    「「「か〜ってうれしい花いちもんめ」」」
    「「「まけ〜てくやしい花いちもんめ」」」



    東京のとあるビルの一室。

    一般人には見えない成人男性達が、手をつないで歌いながら後ずさったり、前に進んだりを繰り返している。端から見れば精神を病んだ者たちの集会サバト。各々の表情は無表情の者、ニコニコと満面の笑みを浮かべている者、渋々とした表情で控えめにしている者とバラエティ豊かであり、またその中に交じるオレ――花垣武道も死んだ目をしているのだろう。

    天を仰げば尊いせんせいがいるわけが無く、無機質なLEDの白い光が眩しいだけ。





    ――全ての始まりは死体スクラップを背景に近づいてくる愉快犯が発した言葉であった。





    「なぁ、武道〜遊ぼうぜ〜」
    「――……バカなの?」

    思わず返した直後の後悔。ぶん殴られる、と思ったし何ならどんな攻撃が来てもいいように構えた。
    「……」
    しかし予想に反して目の前の愉快犯灰谷蘭は無反応、むしろその整った顔に笑みを浮かべ見つめてくるので武道は冷や汗をかいた。

    「……オレは遊びません。」

    相手が何も言わずに見つめてくるので、恐る恐る断る。
    一緒に遊ぶくらいだったら殴られて終わるほうがよっぽど武道の精神上平和である。むしろ喜んで殴られに行こうではないか。このまま相手が飽きるまでこのやり取りに付き合ったって構わない、遊ぶ必要が無いのならば。
    たいして祈ったこともない神に心の中で手を合わせ高速で擦り合わせる。どうかこの「反社会的な誰とでも遊びたいお年頃サイコ愉快犯」を飽きさせてはくれないだろうか。助かった暁にはお賽銭箱に梵天の経理で(ココ君には秘密に)札束を投入させて頂きたい。


    しかし神は武道の味方になってはくれなかった。


    「何して遊ぶ?」

    返ってきた口調は幼子のように無邪気。だが、武道を地獄に突き落とすには十分だった。きっとこれが蘭の精一杯の裏声でも落ちていただろう。まず遊ぶ事に了承した覚えが無い。むしろ先程断ったばかりである。恐るべきスルースキル。
    武道の人権と意見は蘭にとって有って無いようなものであった。人権を侵害する反社に人権があるとは思えないけれども。

    「だから遊びませんって。」

    真っ直ぐに見返しながら、二度目は少しの苛立ちをこめて返す。
    すると蘭君はオレが一筋縄ではいかないことを悟ったのか最悪の行動に出た。

    「竜胆〜武道と遊ぼうぜ〜」

    まさかの助っ人追加。しかも二人目の愉快犯である。
    オイそこのウルフカット野郎、頷いたらタダじゃおかねェからな。お前が言っていいのは「NO」か「いいえ」だけだからな。絶対にノるなよ降りろ…!
    瞬時に脳内で牽制するが相手に届くはずもなく。

    「え、マジ?遊ぶ遊ぶ」

    呆気なく了承され武道の逃走成功確率は一気に低くなった。そうなれば後は被害を少なくする事に全力を注ぐのみ。過去、ヒーローであった時の諦めの悪さの本領発揮である。
    あまり良いとは言えない頭をフル回転させて目の前の二人の悪ふざけを抑える方法を考える。
    一番効果的なのはこの二人を隔離することだが、まず無理である。引いて駄目なら足すしかあるまい、とにかくこの二人の抑止力になる人選を思い浮かべる。
    マイキー君、カクちゃん、ココ君……。武臣君とモッチー君は良くも悪くも無いだろう。

    逆に一緒にしちゃいけないのは三途君一択。
    「混ぜるな危険」なんて言うけどこの三人は「どんな事があっても絶対に必ず混ぜるな、危険なんて生易しいモノじゃ済まない最低限・・・死を覚悟しろ最悪日本が終わる」表記をしたほうがいいレベルだ。

    閑話休題。

    随分と話が逸れていたが結論としてはユカイ・ハン・ブラザーズを抑えられる人を巻き込めば良いということである。死なばもろとも、是非とも一緒に地獄に落ちて貰おう。

    早速スマホを取り出し、第一被害者(予定)に連絡をする。
    「もしもし、ちょっとお願いがあるんだけど……うん、来てくれるかな…?……分かった、待ってるね!」


    「兄ちゃん、武道が何かしてるよ」
    「武道もワルくなったよな〜♡」


    外野の声を無視して二人目にも電話をかける。うん、上々。これなら皆揃って地獄のピクニック()が出来そうだ。調子にのって呼ぶ気の無かった武臣君とモッチー君にも声をかける。被害者は多いほうが一人あたりの被害量も減る気がするからね…!



    そして10分後、舞台地獄役者被害者が揃ったのである。



    「「「「「……。」」」」」

    案の定オレが呼び出した五人は部屋に入るなり何かを察し、こちらに「何で巻き込んだんだ」と言わんばかりの視線をよこす。

    「死なばもろとも、ですよ」

    そう言ってニッコリと笑って返せば皆、各々の反応を見せる。

    マイキー君は頬を赤らめて「タケミっち可愛い」と抱きついてくるし、逆にココ君は青ざめて膝から崩れ落ちる。「……手遅れだ……」とか聞こえるけど今更だよね?オレからの電話に出た時点で手遅れなんだよココ君。だって蘭君達に「オレ、声かけたから皆で遊ぼうよ…!(スーパースマイル)」って報告済みだからね。外堀はショベルカーで埋めるものなんだよ。カクちゃんは腹を抑えて「……胃痛が痛い……」と呟いている。随分と参っているみたいだから、全力で遊んでストレスが軽減されたら嬉しいな…!オレ、協力するよ…!武臣君とモッチー君は部屋の隅の方へ移動し、静観を決め込むようだ。この二人に関しては最初から期待していなかったので、まぁ良しとしよう。


    「じゃあ、何して遊びます?」


    お遊び開始。好戦的な色を含ませてハイタニ・ユ・カイハン・ブラザーズ(この呼び方気に入った)を見やれば待ってましたと言わんばかりに返される。

    「「花いちもんめに決まってンだろ」」

    はないちもんめ……?

    シン…と言う効果音がぴったりな位に全員がおし黙る。聞いたことはあるが、遊んだことは多分無い。他のメンバーも似たようなものなのか誰も何も言わずに首を傾げている。

    「じゃあ、始めまーす♡」
    「いや説明をしろ」

    そんな事は我関せず、と勝手に進めようとする蘭君にカクちゃんがツッコむが、全く響いていないのか、「え〜めんどくさ〜自分で調べなよ〜」と言い「あと5分で始めるかんな〜」と竜胆君を連れて武臣君とモッチー君の方へ移動していく。完全な丸投げ、完璧な無責任っぷりである。

    先程好戦的な視線を向けたのが嘘のように出鼻を挫かれた、という事実がオレの気分を重くする。


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