次のヨシ霊没案「お前も来るのか」
「不都合ですか?ああ、霊幻さんの生気補充の役目を奪ったりはしませんよ」
「根に持つな」
「根に持ってはいません。人として自然過ぎて驚いたので印象に深かっただけです」
くるっとキーを弄び、矢張り可笑しそうに瞳を細めるのでどちらが部下か分からないなと坊主頭を掻いた。
仙狸(せんり)という人の生気を吸う妖怪である霊幻新隆に出会った頃、大きな怪異の討伐で力尽きた彼に咲心(しょうご)が口付けて命を取り留めようとした事がある。
勿論誰から与えられても同じ生気なので何の問題も無い行為だが、それを見てつい、戦いっ放しで力の入らない身体を叱咤してまで部下から彼の身体を奪って口付けるという、大人げない行動をとった事があった。
咄嗟の事で驚いたのは咲心(しょうご)だけではなく、誰より自分が一番驚いていた自信がある。
昔からの命の恩人ではあるが、それにしても出会ったばかりのあの時点で相当に惚れ込んでいたという事だ。
「美しい方ですからね」
「慰めるな」