神の目にも涙「俺のこと、囲ってみません?」
ねぇ宇髄さん。と、まるで任務中にあった何でもない事を話す時のような声色で呼ばれ、特に構えもせず適当に注意を向けたらコレだ。
確かに予想外の事ではあったが、宇髄は少しも動揺することなく紫煙を吐いて、横で呑気に茶をすする男を見やる。
出会った頃より幾分か背が伸び、宇髄を真似て──あくまで本人は女受けが良いからだと言い張っているが──伸ばし始めた髪ももう腰に届く。顔も同世代の柱のような精悍さが付かなかった代わりに、大人びた鼻筋と顔の輪郭に、変わらない大きな瞳が合わさった妙な色気を纏うようになった。
容姿が語る歳月に感慨深さを感じつつも、柱に任命されたとてちっとも変わらない中身に安堵と呆れが入り交じる。
4907