寝落ちからの寝落ち『千空ちゃん…』
夢の中のゲンは、とろりとした甘い声で自分を呼ぶ。
熱を帯びた瞳で見つめてくるその顔に触れうと手を伸ばし………いつも、そこで目が覚める。
「~~、またかよ」
千空の手が、ゲンに届いたことはない。
現実で振れる勇気はないくせに、夢の中でなら触れるなんて都合のいいことは起こらないのか。
行き場のない感情から意識を逸らそうと夢のメカニズムについて考えてみるが、すぐあまりの無意味さに溜息が漏れる。
乱暴に頭を掻くと、隣で何かが動いた。
「………ゲン?」
顔を横に向けてそれが何か視認し、驚いて体を起こした。
ゲンが、千空の布団に胸から上だけ乗せ、千空の方に顔を向けて俯せに眠っていた。部屋に入り込む月明かりに照らされて、アシンメトリーの白髪が輝いている。
1890