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    @telutelute

    マホロアに情緒を破壊されている。マルマホ中心に雑食、左右非固定。デジタル絵練習中なので絵柄あっちこっち。絵文字だけで伝えきれない場合はマシュマロもどうぞ→
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    何者かに捕まったマホロアを助けに行く話。いつ4がマホロアのことを大事に思ってる様子が読みたいから書くか!と思いながら書き始めたらヘキが暴走しました。ちょっと痛い描写があります。後半カビマホ風味ですがCPではないです。




    pixivに掲載したものと同じです
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19776744

    #マホロア
    Magolor

    キミの名を呼ぶ情報を食う機械生命体の星にて

    ----------

    無機質な機械音が鳴り響く部屋で、白衣を纏った複数人の技術者がコントロールパネルを操作していた。部屋の中央には大掛かりな装置が据え付けられ、何本ものケーブルがまるで樹木の根のように伸びている。

    『被験体No.2786、これより脳内データの抽出を行う』

    頭部に一つ目のレンズを光らせた技術者の一人が静かな声でそう告げた。

    『我々の文明がまた一歩前進するだろう』
    『尊い犠牲は無駄にしない』

    周囲の技術者が賛同し、ある者は被験者を哀れみ、粛々と準備が進められていく中で哀れな被験者──マホロアは目を覚ました。

    「(……エ?)」

    『おや、目を覚ましてしまったようだ』
    『かわいそうに、夢を見たまま処置された方が幸せだっただろうに』

    部屋の中央に据え付けられた装置に手や身体を縫い付けるように拘束され、口には太い管が挿管され身動きどころか声も出せない状況をマホロアはいつもより回らない頭で確認していた。

    「(何コレ、声出ない、動けナイ……薬品盛られたカナ)」

    思考も感覚も全てが鈍い。詠唱どころか魔力を操作する集中力さえも削がれて、抵抗する気力まで奪われていた。

    「(アァ……ボクは奴らに捕まって、ソレデ……)」

    意識を失う前、よく知らない連中に狙われて逃亡していたのを思い出す。ハルバードでの交戦中、隙を突かれて捕らわれた後の記憶はない。

    『我々に選ばれたことを光栄に思うがいい』

    白衣の技術者の一人がマホロアの顔を覗き込み、恍惚とした声で呼びかけた。このような状態にしておいて何が光栄だ、とマホロアは思ったが、声が出せないため力無く睨みつけるのみに留まった。

    『──接続開始』

    「!!」

    合図と共に違和感に襲われ、マホロアは声なき悲鳴をあげた。何かが脳に直接流し込まれるような熱さと、何かが流れ出ていくような冷たさが同時に感じられとても不快だ。

    『おお、なんという情報量』
    『システム上、被験体を生かしておけないのが非常に残念だ』

    モニターに映し出されたデータを眺め、白衣の技術者たちは感嘆の声をあげた。頭部を器具で固定され、ほんの少しも動くことができずただ不快感を与えられるままになっているマホロアは目を見開いて必死に耐えた。

    「(頭のコレ、気持ち悪い、嫌だ、)」

    『素晴らしい!素晴らしい情報量だ!魔術の知識だけでなく、古代ハルカンドラ文明の詳細だぞ!』
    『我々の文明が更に発展するぞ!』

    白衣の技術者たちはモニターを眺めながら、マホロアから抽出した脳内データの内容を確認しては興奮気味に絶賛している。痛みはないが壮絶な不快感を与え続けられ、思わず息を止めるも挿管された管から酸素が定期的に送り込まれているため意識を手放すことすら許されない。心臓が跳ね上がり目の前がチカチカとして吐き気が込み上げる。

    「(熱い、冷たい、気持ち悪い、ヤメロ……!)」

    一切の抵抗を許されないマホロアが脳内を掻き回されているような感覚に世界が歪んで見え始めた頃、けたたましいアラートが鳴り響いた。

    『……待て、何かがおかしい』

    「(カービィ、もう一度会いたかったナァ……)」

    耳に突き刺さるようなアラート音に周囲の様子が一変するのを感じたが、突然消えた不快感の代わりに強烈な眠気に意識を引き込まれそうになっているマホロアにとって、既にどうでも良くなっていた。

    『技術班何をしている!エラーの特定を急げ!』
    『装置を止めないと無理です!』
    『止めるとデータが失われるぞ!』

    「(……うるさい、静かにしてヨ)」

    アラートだけでなく怒声まで響いてはうるさくて眠れないではないか。ふわふわとした微睡みの中でマホロアはぼんやりと思った。

    『なんということだ……』
    『我々の装置が……』
    『破壊されるなど前例が無いぞ!』

    先程までモニターを眺めては歓喜していた白衣の技術者たちは、動揺と絶望に包まれていた。マホロアを繋いでいる装置はアラートを鳴らし続け、一部から白煙が上がりその機能を停止している。

    『エラーの原因判明しました、【容量不足】です!』

    「(容量……ローアの容量モット増やしてあげたかったナァ……)」

    『寝言は寝て言え!我々の叡智の結晶だぞ!』
    『いえ、それが……保存可能な記憶容量を遥かに……軽く見積もっても100倍は超えており……』
    『?!』
    『……予備はどうした?』
    『無理です!リンクしている全てが破壊されました!おそらく〈Mother〉も……』
    『……』
    『……』

    「(……静かにナッタ……眠たい……)」

    うるさく鳴り続けていたアラートが止まり、場は静寂に包まれた。ようやく眠れそうだとマホロアが意識を手放そうとした瞬間、大きな声が室内に響き渡った。

    「マホロア!!助けにきたよ!!」

    勢いよく扉を開けながら叫んだカービィは、剣を構えながら白衣の技術者たちに詰め寄る。普段の朗らかな表情はそこになく、怒りに満ちた表情で再び叫んだ。

    「マホロアを返せ!」

    装置のトラブルに続く突然の出来事に呆然としていた白衣の技術者たちは、現状を認識して慌てて警報装置のボタンを押した。

    『侵入者だ!』
    『警備はなにをしている!』

    「(カービィ……?都合の良いユメだナァ)」

    夢と現実の境目が曖昧になりつつあったが、もう一度会いたいと願っていた声の主がすぐ近くにいるのを感じてマホロアは沈みかけていた意識を再浮上させる。

    「カービィこっちだ!マホロア、生きているか?!」

    装置に拘束されているマホロアを見つけたデデデ大王は、カービィを呼ぶとマホロアに駆け寄り声を掛けた。

    「意識ははっきりしないが呼吸はあるようだ。大王、拘束を慎重に破壊するぞ」

    マホロアの様子を観察していたメタナイトが静かにそう告げると手を拘束している金具を宝剣ギャラクシアで容易く切断し、舌打ちした。

    「杭を打ち込むとは惨いことを……」

    「(デデデ大王……メタナイトもイル……)」

    既に視界が霞んだままでよく見えないが、よく知った声が自分を助けに来てくれたことに安堵し、マホロアは意識を手放した。

    『やめろ!被験体に手を触れるな!』

    白衣の技術者は声を荒げたが、警備兵は未だ到着せず侵入者に対して抵抗はできないでいた。

    「断る!俺さまの友人に手を出しやがって、ただで済むと思うな!」

    大ぶりのハンマーを構えたデデデ大王は一際低い声で一喝すると、ギロリと睨みつけて場を支配した。その圧倒的な迫力に呑まれつつも、白衣の技術者は震える声で反論をする。

    『貴重な被験体だ!渡すものか!!』

    せっかく苦労して捕らえたというのに、まともな成果を出さないまま被験体──マホロアを解放しては損害が大きすぎる。せめて元を取らねば。しかし、その思いは意外な方向から阻まれることとなった。

    『局長、装置が破壊された以上、抵抗は無意味です!』
    『〈Mother〉破損の報告あり!我々の文明そのものの危機です!』

    局長と呼ばれた白衣の技術者は部下とおぼしき技術者たちに窘められ、より合理的な判断を迫られていた。


    「……ぼくたちは、マホロアを助けに来ただけだよ!」

    カービィが剣を向けながら静かに言った。

    「おとなしく引き渡して貰えるなら、これ以上危害は加えないと約束しよう」

    仮面の奥の目を光らせて、メタナイトが冷静に告げる。

    「俺さまとしては全部ぶっ壊しても構わないんだがな」

    マホロアの手の止血をしながら、デデデ大王は怒りを押し殺して吐き捨てた。

    『クッ……』
    『局長、これ以上の損害は抑えるべきかと』

    被験体を捕獲するために費やした兵力の損耗、データ抽出装置の破壊、挙げ句の果てに〈Mother〉まで破損したとあってはこれ以上この個体に固執している場合ではないと合理的な判断を下す。

    『……被験体を解放する』

    局長と呼ばれた白衣の技術者は苦々しく呟いた。


    ***


    「マホロア!大丈夫?!生きてる?ねえっ!」

    剣を納めてマホロアの側に駆け寄ると、カービィは管が繋がれた頬に手を当てながら大声で呼び掛け続けた。だが返事はなく、弱々しい呼吸音だけがかろうじてマホロアの生存を示していた。

    「カービィ、あまり揺するな。お前たち、マホロアに何をした?」

    仮面の奥の冷たい瞳が殺気を放つのを隠そうともせず、メタナイトは白衣の技術者に問いかける。

    『処置の苦痛を取り除くため麻酔で眠らせた。途中で目を覚ましていたが意識は朦朧としているだろう』

    「その麻酔とやらが生命を脅かす可能性は?」

    『長く生かすために使用するものだ。管理している間は問題ない』

    「では適切な手順で管を全て抜去してから引き渡して貰おう。マホロアの生命を脅かす真似をしたら、斬る」

    『しょ、承知した』

    管理している間は、ということは、適切な管理がされなければ命に関わるということか。そう気付いたデデデ大王ははらわたが煮えくりかえるのを感じたが、先方の協力がなければ安全に連れて帰れない以上は怒りを抑えるしかない。

    「クソっ、こんなに管だらけにしやがって……」

    マホロアに繋がる管が一本ずつ抜去されていく様子を見守ることしかできず、デデデ大王は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。モタモタと作業を進める白衣の技術者たちを睨みつけながらハンマーを握る手に力が入る。一刻も早く全て引き抜いて自由にしてやりたいのに、管を抜去したそばから傷が増えていく様子が居た堪れなくなり思わず目を背けた。

    「マホロア、もう大丈夫だよ、ぼくたちと帰ろう!」

    カービィはまっすぐマホロアを見つめながら名前を呼び、声を掛け続けている。マホロアの頭部に埋め込まれた電極がずるりと引き抜かれた際は小さく悲鳴をあげたが、それでも必死に声を掛け続けた。

    「マホロア、つらかったね、もうすぐ帰れるからね……!」

    ポロポロと涙を零しながら、マホロアの意識が戻ってくるように何度も何度もカービィは呼び掛けた。

    「(カービィ、ボクは、生きてる、ヨ……)」

    暖かい声に導かれるように意識がゆるゆると浮上したマホロアは、霞む視界の中に桃色を見つけて泣きそうになる。

    「(ボクのタメに泣かないで、カービィ )」


    マホロアに繋がれた全ての管が抜去され、白衣の技術者たちは忌々しいものを見つめるように創部の処置を施していた。

    『とんだ厄病神だ!コイツのせいで〈Mother〉が破壊された……』
    『まさか〈Mother〉すらも上回る記憶容量を持つとは……バケモノか?こいつ』
    『我々の叡智の結晶が失われるとは……おお、〈Mother〉よ、この先どうすれば……』

    機械生命体である白衣の技術者たちにとって〈Mother〉というものは大切な存在であるらしい。そして、それはマホロアのせいで破壊されたようだ。剣を構えたまま会話を聞いていたメタナイトは、そのように見当をつけた。

    「あのひとたちなにを言ってるんだろう?」

    「私たちが助けるまでもなくマホロアが何かしでかしたのだろう」

    暴れる大義名分を失い多少の物足りなさを感じたが、平和的解決ができたならそれが一番だ。メタナイトはそう自分に言い聞かせて不審な動きがないか目を光らせ続けた。

    「よし、とりあえず止血は終わった、引き揚げるぞ」

    包帯が巻かれたマホロアを抱きかかえたデデデ大王が二人に声を掛けた。心配そうにカービィが駆け寄り、あまりの痛々しさに絶句する。

    「マホロア、手も頭も血がひどい……」

    「後でバンワドに手当てさせる。今は引くぞ、カービィ」

    「うん……」

    デデデ大王に諭されてカービィは頷いた。今優先すべきはマホロアの安全の確保だ。弱い呼吸がいつか止まってしまうのではないかという不安に襲われ、カービィは身震いする。

    「やはり徹底的に壊滅させていくか?」

    「それはしないよ、メタナイト。はやく帰ってマホロアの手当てしよう……」

    意気消沈している白衣の技術者たちをチラリと見て、カービィは踵を返した。本当はメタナイトの言う通りにこてんぱんに仕返しをしてやりたかったが、マホロアを助けるという一番の目的が達成された以上はこの場所に用はない。邪魔が入らぬうちにと停泊してあるハルバードを目指して三人は駆け抜けた。


    ***


    「おかえりなさい、皆さん!マホロアさんも無事で良かった……!」

    ハルバードに残っていたバンダナワドルディは帰還した皆を笑顔で迎えたが、血塗れでデデデ大王に抱えられたマホロアを見て険しい表情になる。

    「バンワド、医務室に案内を頼む」

    「はい、こちらです」

    バタバタと駆けていく背中を見送り、メタナイトは口を開いた。

    「私は襲撃に備えて艦外の警戒にあたる」

    指揮系統は部下に任せてあるためメタナイトがわざわざ出向く必要は無いのだが、苛立つ心を鎮めるために必要だと判断し向かい始める。

    「あっ、ぼくも……」

    手持ち無沙汰なカービィは着いていこうとしたが、やんわりとメタナイトに止められた。

    「カービィはマホロアの側についていてやれ」

    「……うん」

    手当てをするなら医療スタッフや器用なバンダナワドルディの方が適任だろうし、怪我人をそっと運ぶのだって自分より身体の大きいデデデ大王の方が適任だ。友達が血塗れでぐったりしている姿を見るのはとても心が痛んだし、助けに行ったものの自分は声を掛け続けることしかできなかったではないか。そう自問自答しているうちにカービィは自分の無力さに胸が押し潰されそうな気持ちになる。

    「ぼく、なにもできなかったな……マホロア、大丈夫かな……」

    せっかくマホロアを助け出すことができたというのに、カービィの気持ちは暗く沈んだままだった。


    ***


    医療スタッフの邪魔にならぬよう、そっと医務室の扉を開けたカービィはベッドで眠りにつくマホロアを見てひどく安心した。包帯は新しいものに取り替えられており、点滴をしているが呼吸は安定しているようだった。

    「カービィ、どうしたの?」

    扉の陰から覗くカービィの様子に気付いたバンダナワドルディが声を掛けると、おずおずとした足取りで入室し小さな声で呟いた。

    「マホロア、もう大丈夫?」

    「うん、もう大丈夫だろうって言ってたよ。今は痛みを取る薬を入れて眠ってるって。カービィ、大変だったね」

    バンダナワドルディの落ち着いた優しい声に、カービィはホッとした。おぞましい装置に管で繋がれ拘束されていたマホロアの姿が脳裏に焼きついて離れなかったが、いま目の前にいるマホロアは、ちゃんと生きて呼吸している。

    「バンダナワドルディ、ありがとう。でも、ぼくあんまり役に立てなかったみたい……」

    「え……?えっと、そんなことないよカービィ。大王さまに聞いたけど、ずっとマホロアさんに声を掛け続けていたんでしょ?」

    カービィの発言が意外すぎてバンダナワドルディは一瞬言葉に詰まったが、すぐさま事実を訂正することにした。

    「カービィがマホロアさんに声を掛け続けていたの、全然無駄じゃないんだよ。意識を失わないようにさせるって大事なんだって。だから、呼び続けるのはあの場面では大正解だったと思う」

    「……そうかな?」

    「そうだよ。きっとその声が届いていたからマホロアさんは生きて戻ってこれたのかもしれないよ。まあ、これは医務室長さんの受け売りなんだけど……」

    バンダナワドルディの言葉を聞いて大粒の涙をポロポロと零しながら、カービィは心から安堵した。

    「そうだといいなあ……っ」

    「頑張ったね、カービィ」

    「うん……マホロアが助かってほんとよかった……」

    戦って敵を倒すだけが誰かを助ける方法ではないのだ。そんな単純なことに気付けないほどカービィは追い詰められていたのだろう。そこまで気持ちを傾けてもらえるマホロアのことを少し羨ましく思いながら、バンダナワドルディはカービィにハンカチを差し出して落ち着くまで背中を優しく撫で続けた。


    ***


    「(……アレ?ココは……)」

    ぼんやりとした視界に見慣れない天井が映り、マホロアはしばらく考え込んでいた。記憶がひどく曖昧で混乱していると、鮮やかな桃色が顔を覗かせた。

    「マホロア、おはよう!目を覚ました?いっぱいお昼寝してたんだよ!」

    「カ…、ビィ」

    ケホ、と掠れる声でマホロアが名前を呼ぶと、その桃色はマホロアの手を優しく握って満面の笑みを浮かべた。

    「うん、ぼくだよ、カービィだよ。マホロア、どこか痛いとか気持ち悪いとかない?」

    「ん……」

    麻酔の影響で意識は未だはっきりしないが、カービィの手を握り返すとそのまま身体ごと抱きしめられた。

    「マホロア、生きてて良かった……間に合って良かった……」

    「……?」

    表情は見えないが、カービィが小さく震えているのが伝わってくる。

    「マホロアが捕まっちゃったとき、もう会えなくなったらどうしようって、すごい怖かったんだよ」

    いつものカービィらしくない、消え入りそうな震えた声がチクリとマホロアの胸に突き刺さった。

    「ゴメンネ、カービィ……」

    マホロアはヒリヒリと痛む喉で謝罪の声を絞り出した。その声にカービィはハッとして、静かに身体を離してマホロアに向き直る。

    「マホロアは謝らないで!……ぼくの方こそ、遅くなってごめんね」

    俯くカービィの頭に、マホロアは力の入らない手を精一杯伸ばしてポンポンと撫でる。安心させたくてニコリと笑って見せれば、逆効果だったようでボロボロと涙を流し始めたカービィに無言で抱きつかれてしまった。

    「(心配かけてゴメンネ、カービィ……)」


    ***


    「もう、あいつらったら酷いよね!マホロアにこんなことしてさ!」

    散々泣いてスッキリしたのか、カービィはいつもの調子を取り戻していた。ベッドサイドで軽食をつまみながら、食べたり怒ったり忙しくしている。

    「マァ、ボクはこうして生きてルわけダシ……」

    麻酔の影響が消え、水分を摂れる程度に回復したマホロアが相槌を打つ。

    「ほんとはお返ししてやりたかったんだよ!でも、マホロアの手当ての方が大事だと思ったから……」

    ビスケットを囓りながらぷりぷりと怒るカービィの姿に、マホロアは胸が熱くなるのを感じた。自分の為に泣いて怒ってくれる、ただそれだけで十分だった。

    「ボクなんかのタメにアリガトウ、カービィ」

    思わず口をついて出た言葉に、カービィはすかさず反応する。

    「『なんか』なんて言わないでって前も言ったー!マホロアはぼくの大事な友達だよ?」

    まっすぐな瞳でそう言われてしまい、マホロアは自分の迂闊さを恥じた。こればかりは癖になってしまっていて、なかなか治せそうにないのだ。

    「ゴメンゴメン、いてて……」

    慌てて謝罪をしたら手と頭の傷に響いてしまい、鎮痛剤が切れかけていることに気付く。一度意識してしまうとズキズキと脈打つような痛みが居座り続けて冷や汗まで出てきた。

    「傷、痛む……?」

    心配そうに見上げてくるカービィにこれ以上心配をかけたくなくて、平気そうに振る舞う。

    「大丈夫ダヨ。アイツら好き勝手やってくれたヨネェ……」

    巻かれた包帯の上から手の傷をさすり、マホロアは答えた。

    「何が目的だったんだろう?」

    「ボクの頭脳が欲しかったミタイ。失敗してたケド」

    聞いた話と断片的に覚えていることを繋ぎ合わせてみると、自分の頭脳が狙われていたことは間違いないだろう──被験者の生命は一切保障しない方法で。

    「キカイが壊れたとか騒いでたよ」

    「アー、容量不足トカ聞いた気がスル」

    「どういうこと?」

    キョトンとした顔で訊ねるカービィに、マホロアはできるだけわかりやすい説明を試みる。

    「ボクの頭の中身が多すぎて機械の方が壊レタ」

    「えっ……」

    「……ドン引きしないデヨ」

    端折りすぎただろうか?頭の中身で機械を壊した、間違ってはいない。間違ってはいないが何か変な誤解を与えてしまっただろうか?

    「あー、うん、さすがマホロアだね!」

    マホロアが不安になっていると、なんだか雑に褒められた。ドン引きされるよりはマシではあるが──

    「……褒められても複雑ダヨォ」

    マホロアの脳内データの容量が、機械生命体の惑星全体を司る〈Mother〉のそれを超過し破壊した上バケモノ呼ばわりされていたのは事実である。さすがマホロア、の一言で片付けるには少々スケールの大きい話ではあったが、シンプルな言葉選びがカービィらしくてマホロアは小さく笑った。

    「……痛いの、ちょっと紛れた?」

    「エ……?」

    悪戯っぽく笑うカービィにマホロアは呆気に取られる。

    「マホロア、さっきから無理してるでしょ。駄目だよちゃんと言わなきゃ」

    あまり表面に出していたつもりはなかったのに、見透かされていた。

    「痛そうなのは心配だけど、無理して隠してるのはもっと心配になるよ」

    「……ウン」

    結局、カービィに心配されてしまった。心配をかけないようにして更に心配されてしまうのは本末転倒ではないか、そうマホロアは反省し、今後は少し改めるかと心に刻む。

    「お薬もらってこようか?」

    「イイヨ、あまり効かないカラ」

    「そうなの?」

    「ソウイウ体質ミタイ」

    マホロアにとって鎮痛剤の類いは、量を増やしても副作用ばかりが強くなるだけで肝心の痛みにはどうも効果が薄いのだ。そういうものだと割り切っているので問題はないし、痛みはただの電気信号だと思い込めばそれなりに我慢できる。

    「えーと、じゃあさ」

    カービィが何か思いついたようにマホロアの額に柔らかな手を当てて呟く。

    「いたいのいたいの、とんでけー!」

    「?」

    額を優しく撫でてから何かを放り投げる仕草で痛みを除去するなどあまりにも非科学的だ。だが、額に触れた暖かさとカービィの笑顔は、本当に痛みをどこかへ消し去ってしまった。

    「おまじない。どう?」

    「チョットだけ効いた、カモ……」

    おまじないも思い込みも本質は同じ、気の持ちようだ。だが、他人から自分のことを想われるという点では大きく異なる。独りのときでは決して気付けなかった違いを、この桃色の友人はいつも気付かせてくれるのだ。

    「ああそうだ、まだこれ言ってなかった」

    カービィはマホロアの手を両手でしっかり握ると、視線を合わせてこう言った。

    「マホロア、おかえり!」

    キラキラ輝く紺碧の瞳が眩しい。マホロアはカービィの手を力強く握り返し、感謝の気持ちを込めて帰る場所がある喜びを噛み締めながら呟いた。

    「ただいま、カービィ……!」


    〈了〉
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