夏の終わりの優しさに。駄菓子の詰め合わせを。 それは、夏休み最後の日のことであった。
「おォ桃吾、遅かったやん。今日こそ遅刻して来るかと思ったわ」
「最後の日に遅れるやつとかアホやんけ」
時刻は六時二十五分。円と桃吾はラジオ体操が行われる公園に集合していた。
円はいつもより遅れてやってきた桃吾の姿に、どこか違和感を感じて首をかしげる。そして、その首に毎日かけていたはずのカードがないことに気が付いた。
「桃吾、スタンプカードどこやったん?」
「……なくした」
「ええ⁉昨日まであったやん。もったいないのぉ」
「やから今日は行かなくてええ思ったんやけど、オカンが『ここまで毎日行っとたんやから、最後まで行け』言うねん。しゃあないから来たわ」
「おまえ、去年も途中でなくしとったやろげー」
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