プロローグ 鶴丸国永はアトリエを持っている。
色鉛筆。クレヨン。水彩絵の具。
画材は問わない。時たま、アトリエに籠もっては、一心不乱になにかを描いている。なにを描いているのかどうかは、大倶利伽羅にはわからない。なにせ、鶴丸の描く絵はいつだって真っ白なのだ。何度も何度も、手を動かし白を塗りつぶしていく。そうして、満足した絵を、金色の額縁にいれて飾るのだ。
いつからそうなのか、ということも大倶利伽羅は知らなかった。ここは刀剣男士の保養所であり、かつては本丸所属ではあったものの事情があって引き取られてきた刀剣男士の仮初めの居場所だった。大倶利伽羅がこの施設にやってきたときには既に鶴丸はアトリエを持ち、作品を作っていた。
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