みし、と音がした。
鈍く光沢を持ったその部位は、今や自分の身体の一部であるように感じられる。不思議なものだ。以前は違和感しかなかったのだが。
めきっ。
「っ」
無意識に息を詰めると、それに勘づいたらしい狂人が、やたらと嬉しそうに口角を歪めた。
「ああ、怖いか?大丈夫だ、私がついている」
「……どの口が」
そう吐き捨てた自分の声の弱さを自覚して、舌を噛みちぎりたくなった。
左側から何かが軋む音がする。
「ふむ。やはり工具の方が負けてしまうな」
そいつは然程残念でもなさそうに呟くと、部屋の外に顔を出し、そこにいた魚人に声をかけた。
「──、──」
何度聞いても不快な言語だ。自分に自由な手がふたつあれば、今すぐ耳を塞いでいただろう。
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