急な話だが、私には前世の記憶とやらがある。
1年前の話だ。
父の書斎に入り、昆虫図鑑を眺めていた時に、急な頭痛がしたと思ったら、初めて読むはずの昆虫図鑑に、妙な既視感を感じるようになったのだ。
それまでか、今まで知らなかった語句がするすると頭から出てくるようになった。さっきまであまり知らない昆虫だったはずなのに、そこには書かれていない生態を思い出せてしまう事に、背筋が凍った。
私は急な脳の変化に戸惑ったが、妙な記憶の数々が次々と解決案を引きずり出してきたおかげで、急速に落ち着きを取り戻した。
寧ろ、今までの自分と比べると落ち着きすぎるくらいに、私は様々な知識を得たのだ。
普段の生活にも役に立つ生活の知恵、四則演算のコツ、そして、完全にこの世界とは異なる未知の嗜好品の数々。
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