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    狐の嫁入り(2)(楽ヤマ)

    ##楽ヤマ
    ##文章

    「子種……」
    「そう、子種。八乙女家次期当主の子種」
    「俺の…子種…」
    楽はそれ以上何も言えなくて、言われた事を鸚鵡みたいに返すしか出来なかった。
    「一応、お宅とは利害関係があるわけよ。お宅の無病息災、家内安全、商売繁盛を願う代わりにお宅の当主の子種を頂くと」
    「……人間と狐の子を作るというのか…?」
    狐はすっかり白無垢を着崩し、足を出して胡座をかいている。上座に置かれた御神酒を手に取り、三三九度の用の盃に注いでいた。わぁ、いい酒だ、流石八乙女家と言いながらぐいぐい飲んでいく。楽もこの状況に馴染むためにも…と同じように御神酒に手を伸ばしたところで狐が止める。
    「やめといた方がいいんじゃない…?」
    「何でだ」
    元々は家のものだぞ、と言いかけたところで狐が少し寂しそうに告げる。
    「…お前さん、ちゃんとヒトの嫁を貰うだろ?こんなところで狐と祝言みたいな事しちゃだめだ」
    「……」
    そう言うのであれば、と手を引いた。先程の話の続きをしなくてはいけない。
    「で、どうして俺の子種が必要なんだ?」
    「…純血種だけだと血が濃くなりすぎる…あと、この家からは妖力の高い子が産まれやすい…らしい。もう長いこと上手くいってないけど」
    「そう、なのか…」
    妖の世界も世継ぎの問題というのがあるのか。
    「…お前さん、母親がこの家にいないだろ?」
    「ああ…俺が15の時に…」
    出て行く母親の背中を時折思い出す。あの時の肌で感じた空気や庭の花の匂いを鮮明に覚えている。
    「現当主とこちらとの間に子が出来なかったんだ。そうすると、この家にいる一番若い他所から来た人間のことまで護れなくなって…」
    一番若い嫁が追い出されるという事なのか。なんとも勝手な話である。家のために人一人の人生を変えてしまうものなのか。楽の怒りに気付いた狐は、勝手な話だけど居たら居たで命に関わる事があるかも知れないから…と弱く呟いた。
    「お前さんの言う通り、こんな事は終わらせるに限るな。お前さんなら何があっても大丈夫そうだ」
    狐は楽の希望を叶えよるような事を言い出した。
    「……そうなると…そっちは、どうなるんだ?」
    「…一応他にも嫁に行った奴いるから、なんとかなんだろ。あ、もっと綺麗な狐いるからな?俺みたいなのばっかりじゃねぇよ。一応名誉のために言っておくな」
    狐はどこか申し訳無さを滲ませた声で俗的な事をぺらぺらと話続ける。なんとか沈んだ雰囲気を明るくしようとしているのだろうか。
    「…お前はどうなるんだ?」
    「どうだろ?わかんねぇ。烏天狗がしつこく行け行け言うから…柄にもなく一族のためにやるか、って感じで来たから。あっちに帰ってフラフラするかなー」
    少し遠い目をして床の間の隣にある扉を見つめていた。狐は狐の事情があるらしい。ここまで聞いてしまうと放っておくのも気が引ける。
    楽は覚悟を決めたかのように、一度目を閉じた。目を開いて狐の顔を正面から見る。
    「…どうやって、子種をやればいいのだ?」
    楽の言葉に狐は切長ではあるが、案外大きな目を見開いて楽の顔を見ていた。
    「…ど、どうって…そりゃ…やり方は人とおなじ…」
    狐の事をずっと強い目で見ている楽に、居た堪れなくなっているのか狐は目を逸らし居住まいをただす。先程まで見えていた足は着物の中に仕舞われた。
    楽は狐との距離を詰めると先程も美しいと思ったその手を取る。
    「……知ってはいるが、した事はないので、駄目な所があれば言ってほしい」
    「は、初めてが妖相手ってそれでいいのかよ…」
    「ここまで来て放り出すのは目覚めが悪い」
    「お前さん優しいんだね」
    狐の声はどことなく寂しげに聞こえたが、何故と問うても答えは無い気がしてそれ以上は何も言わず打掛に手をかけて肩から落とす。狐も自ら帯を解き始める。一人では大変そうなので楽も手を出す。
    上等な正絹の着物は狐の肌に馴染んでいて素直に綺麗だと思えた。
    これからする事を考えたら着物を汚してしまいそうだが、いくら畳の上とは言えそのまま先に進める事も躊躇われる。襦袢一枚になった狐を見つめる楽の考えている事を察したのかそっと指を座敷の奥の方を差した。
    「…あっち、布団ある」
    狐がぽつりと言う。この座敷に入って来た時は気付けなかったが床の間と反対側の奥に方に布団が敷いてあった。今夜、何をするために用意されたものなのかはっきりと実感した楽の動きが止まる。
    「嫌なら、やめておけ」
    狐は立ち上がって布団の方へと歩いていく。襦袢から覗く足首に目がいってしまう。
    「いや、そんな事出来ない」
    狐の後に続くように楽も布団へと向かった。

    つづく
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