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    まりも

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    まりも

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    関係にやましさを感じている恭二の恭ピエ

    ##恭ピエ

    日はもう落ちた みのりさんに深刻そうに「相談があるんだ……」と告げられて、連れてこられたのはお年玉袋売り場だった。
    「俺がピエールにお年玉あげるのって……おかしいかな!?」
    「それはちょっと……」
    取り繕うこともできなった本音がぽつりとこぼれた。
     今日は3人で少し出かけたついでに、俺はほしい雑誌があって本屋に寄りたいと告げた。すると、二人とも快くついて来てくれた。ピエールが「ボク、トイレ行ってくる!」とSPさんと一緒に場を離れた隙に、さっきみたいなことになった訳だ。
    「きっとお年玉より、うまいもんでも食わせてやった方が喜ぶと思うっす」
    「……さすが、彼氏よくわかってる」
    みのりさんが周りに聞こえぬよう声を落とし、ニヤリと笑って言った。からかわれているとわかっていたから、俺は大袈裟に反応しそうになるのを抑えて話題を変えた。
    「みのりさん、本当にピエールに甘いっすよね……」
    「甘くもなるよ!!」
    大きめの声で言葉が返ってきて、話題の舵取りを間違えたかと焦る。
    「何に対しても一生懸命!それはもちろんアイドルの仕事にも言えることだし、いつも本当に楽しそうに歌って踊ってファンに接して……!あんな健気でいい子なかなかいないよ!俺が同い年だった頃なんて……っ」
    そこでみのりさんはここがどこだったか思い出したらしい。慌てた様子でハッと口を紡ぐ。
    「……とまあ、俺にピエールへの愛を語らせたらこんなもんじゃすまないけどね!」
    その姿を見ていて、話す内容を聞いていて、つい思ったことがポロッとこぼれた。
    「羨ましいっす」
    「ん?何が?」
    「なんて言うか……混じり気なくピエールを愛せるのが」
    みのりさんがポカンとする。ああ、いらないことを言ってしまったかもしれない。
    「え……だって二人は付き合ってるのに……」
    「そうっすね……ピエールにこんな感情を抱くなんて、不純だとわかってはいるんだ」
    俺もみのりさんみたいにピエールを愛せたらよかったのに、なんてやることやっといて都合のいいことを考える。みのりさんの笑顔が消える。
    「恭二っ……それは「あ!恭二!みのり!見つけた!」」
    みのりさんの言葉の続きを聞きたいような、聞きたくないような複雑な気分だったので、ピエールの登場にほっとした。
    「なんの話、してたの?」
    「……ピエールの話だよ」
    だから、みのりさんのピエールへの返事にギクリとした。話はさっきので終わったはずだった。
    「ボクの話?」
    「そう。俺とピエールの関係が羨ましい、って」
    「ちょっ、みのりさん……っ!」
    慌てて言えば、隣にいたピエールが俺の袖をギュッと握り、心配そうに俺の顔を下から覗き込む。みのりさんは笑顔だが、目が笑ってない。俺はこの場を収めることを諦めた。
    「……二人で、話した方がいいと思うよ」
    「ボク、なんでも聞くよ」
    二人に真剣にそう言われては、頷くことしかできなかった。

    店を出れば、もう日も暮れていた。冬は日が落ちるのが早いな、と当たり前のことを実感する。さっきの話のことをどう伝えたものかと考えていた俺は、気もそぞろだったらしい。そんな俺を見て、みのりさんが苦笑いだったのにも気がつかなかった。
    「それじゃあ、俺は家に帰るけど、二人は……」
    「恭二!ボクの家で、ご飯食べてく!」
    少し強引なピエールの誘い方に頷く。みのりさんにさよならを言い、その姿が見えなくなるまで二人で見送ってから、一緒にSPさんが運転する車に乗り込む。
     帰り道、窓の外の暗い街並みを見ながら、ピエールは言葉少なだった。緊張しているのかもしれなかった。
     屋敷に着いても、まだ夕飯までは時間があった。俺は腕を引かれて、ピエールの自室まで連れていかれた。それでもなんて切り出していいかわからない俺にピエールが思い切って、という風に口を開く。
    「もしかして……ボクと別れる!?」
    「いや!違う違う!!」
    慌てて否定する。さっきまで不安げだったのはこのせいかと合点がいく。
    「そういう話じゃなくて……みのりさんみたいに、ピエールのことを愛せたらな……と思ったんだ」
    「みのりみたいに?」
    「なんというか、恋人みたいなことをするのが後ろめたくて」
    ピエールはうんうん唸って、考えているらしい。ポロッとこぼした言葉がなんだかえらい騒ぎになったな、と思う。でも、みのりさんが言う通り、二人で話すことを避けられない話題だったのかもしれない。「でも、」ピエールがそう切り出したから、ぼんやりしてた意識をそちらに向ける。
    「恭二が、そういうことをしてくれない、ボク、……困る!」
    「困る……のか?」
    「うん」
    「……はは」
    少しツボに入って笑えば、ピエールは「なんで笑うのー!?」とムッとした。そうだな、確かに同意もなしにこの関係になった訳でもない。
    「困らせたいわけじゃないからな」
    そう言って腕を広げると、飛び込んでくるピエール。昔は抱きしめる力加減もわからなかったけど、今はギュッと抱きしめても同じ力で抱きしめ返されることも知ってる。キスすれば、幸せそうに微笑まれた。こんな笑顔を見るのは恋人の特権だと思うと、それだけで俺も幸せだと思ってしまう。きっとよくないことなんだろうけど、それでも。
    「恭二……えっちなこと、する?」
    ピエールの誘いに苦笑する。魅力的な誘いではあったけれど。
    「しない。明日仕事だろ」
    それに、そろそろ時間のはずだ。おいしそうな夕飯の匂いが漂ってきた。
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