全部ボクのせいにして 恭二の顔色が赤かったから、「恭二、具合悪い?」と聞きながら背伸びをして、おでこをコツン、と合わせたら、目の前の顔はさらに赤くなった。これは、以前熱っぽいボクに対してみのりがしてくれたことを真似ただけで、特に他意はなかった。でも、恭二の反応に気づかないほどボクは鈍くもなかった。
「……そういうこと、あまり軽々しくやるなよ」
恭二はそっぽ向いて怒ったように言った。でも怒ってないのも知ってる。
「軽々しく、やってない。Beitはファミリー、でしょ?」
首を傾げれば、グッと言葉に詰まる恭二。きっと恭二は自分の気持ちに気がついていて、これまでも押さえ込んでいたんだろう。……ボクに、気づかれないよう細心の注意を払ってきただろう。ボクが考えなしにあんなことをしたせいで、その努力は全部水の泡、だけど。
(ごめんね、恭二)
心の中だけで謝る。
身の危険から逃げて、この日本に来た。でもきっと、逃げ続けてばかりもいられない。いつかは、帰らなければならない。だから、思いに答えるという選択肢はない。ない……はずだ。それがなんとなく寂しくて、恭二の背中にギュッと飛びついた。
「……ピエール、どうかしたか?」
「……なんでも、ない」
そう言ったのに、恭二は体の向きはそのままにボクの頭をポンポンと撫でる。
恭二の思いにボクが気づいたように、ボクの感傷に恭二も気がついたんだろう。酷なことをしていると気がついていながらも、その手の体温に甘えてしまっている自分を心の中だけで責めた。