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    まりも

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    まりも

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    ピエールが帰国する前、最後の二人の時間な恭ピエ

    ##恭ピエ

    叶わなかった未来の話ピエールと二人ベッドに横になって、どんなことがしたいか、話す。どんな馬鹿げたことでもいい、と前置きをして。
    「ボク、たこ焼き、食べくらべのお仕事、したい!」
    「そんなに量食えなくないか?」
    「食べられる!恭二は?」
    らしいことを言うピエールに微笑ましさを感じながらも、悩む。言い出しっぺなのに全然考えてなかった。
    「俺は……好きなゲームの舞台化を演じるとか?」
    「戦うやつ?」
    「ああ」
    「恭二、似合う、思う!絶対、かっこいいよ!」
    「……サンキュ」
    いつも、こうやって褒めてくれるピエールに、たくさん自信をもらったと思う。
    「でも」
    「……やっぱり一番は」
    「「ドームツアー!」」
    声がそろって、二人で笑い合う。
    「Beitで、やりたい!」
    「……きれいだろうな。客席が全部水色になって」
    ピエールも想像したのだろうか、二人の間に短い沈黙が落ちる。何故だかそれが耐えられなくて、慌てて口を開く。
    「仕事以外でやりたいことはないのか?」
    「うーん、ボク、ずっと、みんなで遊園地、行きたかった」
    「遊園地?」
    「……うん。全部に、乗りたかった」
    ピエールが切なそうに笑うのがつらくて、抱き寄せる。
    「なら、俺は観覧車だな」
    「カンランシャ?」
    「大きくて丸いやつだ。ゴンドラに乗ってゆっくり空中を回るんだ。」
    「恭二、カンランシャ、好き?」
    「……一人で乗りたいって意味じゃないぞ。デートでは、カップルがよく乗るだろ。……だから、ピエールと乗りたいと思って」
    ピエールが息を呑むのを感じた。話題の選択をミスったかもしれない。ピエールになんて声をかけようか迷う俺からスッとピエールは離れた。
    「ボク、もう、行かなきゃ」
    時計を見ると、確かにそれは二人の時間が終わったことを告げていた。
     ピエールは明後日、国に帰る。全ての事情を打ち明けられ、帰らなければいけない、と告げられたのが随分昔のような気がした。帰りの準備をするピエールの後ろ姿をぼんやり見つめる。荷物の少ないピエールはすぐに支度を終え、玄関へと向かう。その後ろをのろのろとできるだけゆっくりついて行った。
    「じゃあね、恭二」
    「……また、空港まで見送りに行く」
    「うん、……ありがとう」
    ピエールが、くい、と俺の袖を引く。今まで何度も繰り返されたそれは、二人の間での合図みたいなものだった。目をつぶってキスを待つピエールに、口付ける。きっと、これが最後だ。
    離したくない、と思うのに、物分かりのいいふりをしてここまで来てしまった。キスが終わったら、この関係も終わりだと思うと、唇が離れなければいい、なんて馬鹿な考えまで浮かんでくる。それでも、胸を押すピエールの手に、俺は大人しく従った。
    「恭二……ずっと、大好きだよ」
    俯いてそう言ったピエールは、顔も見せないまま、ガチャリとドアを開けて、その隙間からスルと出ると、すぐにドアをバタンと閉めた。
     きっと泣いている。でも、俺にその涙は見せたくないのだとわかっていたから、追わなかった。じわじわと痛む目を、ぐいと擦る。追いかけたら俺も、みっともないところを見せてしまうから。
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