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    まりも

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    ##恭ピエ

    冷たい頬 秋を通り越して冬が近づいたのを感じたのは、ピエールの冷えた頬に触れた時だった。今日は、仕事を終えた後、俺の家にピエールと二人で帰った。ドアが閉まるなり、「恭二、キスしたい!」と言われ、ムード……とか、手洗いうがい……とか、考えないでもなかったが素直に従った。惚れた弱みで、ピエールのお願い事にはめっぽう弱いのだ。
     その時、右手をピエールの頬に添えると、その冷たさに驚いた。普段は体温の高いピエールなのに、俺の手よりも冷たい。一瞬触れた唇は、柔らかさこそいつも通りだが、やはり冷たくて。キスの後、思わず両手でピエールの頬を温めるように覆った。
     ピエールはそれをどう捉えたのか、もう一度目をつぶって、顔を上に向ける。その仕草が、もっとキスしたい、という意味だとは気づいていた。それでも、こんな玄関で盛り上がるのは、となけなしの自制心が俺を止める。そのまま柔いほっぺを優しく撫でさすると、瞼がゆっくり持ち上がり、紫の目がじと、と俺を見る。あまり続けると機嫌を損ねるかもしれない。
    「もっと……して」
    今度は大人しくその要望に従った。触れるだけのキスをしてすぐ離れると、次はピエールから角度を変え、触れられる。
     そんなふうに、互いに触れ合っていると、段々キスも深いものになっていった。ハッと我に返りキスを中断すると、ピエールは呼吸を整えるように深く息を吸った。
    「……中、入るか」
    結局、言われるがままに口付けてしまったことに気恥ずかしくなり、ぶっきらぼうな言い方になってしまった。早く、暖房の入った部屋で、冷えた恋人の体を温めたいという気持ちもあった。
    「……えっちなこと、しないの?」
    小首を傾げて言うピエールに、俺の体温の方が上がった気がした。疑問の形を取ってはいるが、実際には「続きをしたい」という意味なのはわかっていた。
     今日は一日がかりの仕事で互いに疲れていたし、明日は、デートに行こう、と約束していた。だから、今日は何もせず風呂に入って、寝る予定だったのだ。少なくとも俺は。でも、さっきの言葉でそんな予定は吹き飛んでしまった。恋人のかわいいお願いを断れるヤツがいるのなら、会いたいものだった。
     たっぷり数秒悩んだ後、なんとか言葉を振り絞る。
    「…………風呂に入ってからな」
    「やふー!」
    キラキラと眩しい笑顔を向けるピエールには、いつだって敵わない。
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