おはようのチュウ体が揺さぶられる。起きろ、と優しい大好きな声が聞こえてきた。いつもはここでおはようって言いながら起こしてくれた遼に抱きつくんだけど、今日は違ったことをしてみたい気分だった。
「遼がキスしてくれたら起きる」
目を瞑ったまま言ってみる。付き合いはじめて、一緒に住むようになって初めてこんなこと言ったかも。どんな反応が返ってくるだろう。呆れたように何言ってるんだ、なんて言う姿が瞼の裏には浮かんでいる。
柔らかい感触が唇に降ってきた。
思わず目を開いた。目に入った遼は全然照れた様子もなくおはよう、なんてキラキラとカーテンから差し込む光も相まってあまりにも眩しく見える。
急にドキドキと高鳴りだした心臓と熱くなってきた頬。完全にやられた。呆れるどころか何も言わずに実行して、爽やかにしているなんて! オレの恋人カッコよすぎる……!
「お、はよう」
「おはよう。ほら、今日は朝から任務なんだろ。ご飯出来てるぞ。さっさと顔洗って歯を磨いてこい」
テキパキとオレの布団を捲ったかと思えば、手を掴んで上半身を起こされた。寝ていた場所に着替えを置かれて、あまりの完璧さに惚れ直してしまう。
「ちょ、遼さん? あまりにスパダリ過ぎない? キスの余韻にも浸れてないんだけど?」
「はいはい」
ひらりと抱きつこうとしたのも避けられて早く来ないと冷めるからな、と言い残して部屋を出ていった。
いや、マジでオレの恋人出来すぎてる。強いて言うならキスした時にもっと照れた顔も見たかったけど。
ベッドから降りて洗面所で歯を磨き、顔を洗う。それらを終えてリビングへ向かう。廊下冷たい。
「おぉ、いつもながらすげー」
テーブルには白飯と味噌汁、サラダに目玉焼き、煮物まで並んでいる。部屋も暖房がつけられているから暖かい。
「別にすごくはないだろ。昨日の夜の余りだしな」
「いやいやいや、すごいって! オレ1人暮らししてた時、コンビニ飯ばっかだったぜ? それに昨日の残り物なの煮物だけだろ。朝から色々作ってくれてありがとな」
「もういいから、ほら座れ。食べるぞ」
素っ気ない遼にはーい、と従い椅子に座る。正面から遼を見ると少しだけ頬が赤くなっていた。なんだ照れてたのか、とニヤニヤしてしまう。自分からキスしても全然照れない癖に、少し褒めるだけで照れちゃうとか可愛いな。
「どうした、ニヤニヤして」
「照れてるの可愛いなって思って」
「雪丸のがいつも可愛いだろ。さっきだってキスしただけで、照れてたしな」
「あれはまさか本当にしてくれると思ってなかったから。へへ、嬉しくて」
「それは、恋人からして欲しいって言われたら、するだろキスくらい」
「そっか。じゃあこれからもたくさんおねだりしよーっと」
「……嬉しいけど、ほどほどで頼むな」