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    いち→うた

    自販機喉が渇いたから自販機へ駆け足で向かう。

    何を飲もうかな。スポドリか炭酸かどっちも捨てがたい。

    自販機がある場所まであと数メートルというところで、見知った後ろ姿が2つ自販機の前に並んでいた。歌川と菊地原だ。心臓がドクリと大きく脈を打った。どうやって声をかけよう。どうすれば普通だっけ? あー、こういうのって考えるだけ無駄だよな。ええいままよ。


    「歌川! 菊地原!」


    2人は同時に振り返りこちらを見た。歌川はおお、といつも通り爽やかに笑いかけてくれ、それとは反対に菊地原はゲッと言わんばかりの顔をしていた。


    「おい、菊地原! 人の顔みてその表情はどうなの?」
    「別にいつもこんな顔なんだけど」
    「こらこら、2人とも。喧嘩するな」


    喧嘩じゃない、と菊地原と声が重なる。歌川は目をパチパチとして、おかしそうに笑った。


    「確かに仲良しそうだ」


    菊地原が無言で歌川を肘で攻撃する。痛い、と声を上げた歌川を無視して菊地原はスタスタと歩き始めた。


    「ちょっ、菊地原」
    「僕は先に行くから」
    「えぇ、まだオレ買ってないんだが?」
    「知らないよ。雪丸と一緒に帰ってこればいいんじゃない?」


    先に飲み物を購入していたらしい菊地原の手にはペットボトルが握られていた。歌川は一体何なんだ、とぼやきながらオレをチラリと見た。視線がぶつかり、ドキリとする。


    「雪丸は飲み物買った後、隊室に戻るのか?」
    「あっ、うん。そのつもりだけど」
    「じゃあ途中まで一緒に行ってもいいか? 見ての通り、菊地原に置いていかれたしな」


    肩をすくめて見せた歌川に、勿論と首を縦に振る。菊地原のやつ、絶対オレの気持ちをわかっててやってるだろ。アイツのサイドエフェクトって心音とかもわかるんだよな? だとしたら絶対に気づいているはずた。ありがたいけど、あからさま過ぎて歌川に気持ちがバレるんじゃないかとヒヤヒヤもする。いや、バレた方がいいのか? いやでも、まだ早い気がする。


    何にしようと呟き、自販機に向き直っている歌川の横顔をチラリと盗み見る。うーん、絶対オレのことなんて眼中にないよな。こっちはこんなに心臓バクバクなのに。


    視線に気づいたのか雪丸? と首を傾げるその様子すら可愛いと思ってしまう。同じ男なのに、なんならオレより背高いのになんでだ。


    「あー、歌川って顔整ってるなーとか思ってた」
    「なんだ急に、褒めても奢ったりはしないぞ? それに雪丸の方が顔整ってると思う。愛嬌もあるしな」
    「あ、ありがと」


    あーーー! もう本当にこういう所なんだよな。サラッと褒めてくるし! 全然照れずに歯の浮く台詞言えちゃうのなんなの?! 絶対にこれで落ちる奴たくさんいるだろ。やめろよ! ライバル増やさないで!
    ……でも逆にこういうこと面と向かって言えるからこそ、脈ねーよなぁとも思う。諦める気は全然ないけどさ。うん、その為にはまず行動だな。


    「逆にオレが奢るわ」
    「えぇ? 別にそんなつもりで言った訳じゃないから、大丈夫だ」
    「いーやーだ! オレが歌川に奢りたいの!」


    自販機に入っていた小銭を取り出して歌川に渡し、自分の財布から小銭を取り出して投入した。歌川は眉を下げて困惑していたけど、こういう積み重ねが大事だって結束と片桐も言っていた。


    「何がいい?」
    「じゃあ、水で……」
    「安いから水にしてない? いつも水なんて飲んでないじゃん」
    「いや、悪いし」
    「諏訪さんとかには奢られてるじゃん」
    「諏訪さんは年上だし、雪丸は同じ年だろ?」
    「そんなの関係ない。スポドリ? いつもこれ飲んでね?」


    ポチッとボタンを押して落ちてきたペットボトルを歌川に渡す。よく見てるな、と歌川は目を瞬かせて呟いた。歌川のことが好きだから知ってるんだよ。とは言えないから、まぁね。とだけ答えておいた。


    「折角だからオレも同じのにしよ」


    これくらいのお揃いなら許されるだろう。喉が渇いていたから、すぐに蓋を開けて中身を飲む。うん、美味い。そういっただけなのに、歌川も美味いよな、これと笑ってくれた。


    「ありがとな。次はオレに奢らせろよ」
    「じゃあ次ここでバッタリ会ったらお願いしよーっと!」
    「了解」


    2人で隊室に向かって歩き出す。この後の予定とかも聞いてみたけど防衛任務が入っているらしく、飯に誘うのは断念した。2人で歩く短い廊下はあっという間だ。


    「じゃあ次は学校でな。これ、奢ってくれてありがとう」


    ペットボトルを軽く振った歌川はニコと笑うと背中を向けて歩き出した。それだけで奢ってよかったなんて、簡単すぎる。持ち上がる口角を指摘されるまであと数秒。
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