遠くから若き友が手を振って駆け寄ってくるのが見える。前に見たときよりも少しばかり大きくなっただろうか?
目の前でゼェハァと息を切らしている若者につい口元が緩む。
「そんなに急がずとも、私は逃げたりしないぞ。」
「先生…!!ずっと会いたかったです!」
私もだ。両腕を広げるとすかさず抱きついてくる君。
「もっとゆっくりしてきても良かったのだが。」
「だって先生がさっさと先に行っちゃうんですもん。」
そう言って口を尖らせる君。のし掛かる罪悪感を笑ってごまかす。過ぎたことは仕方がない。今は久しぶりの再会を喜ぶとしよう。
「そういえばミリアムさんは?ここに来てるんですよね?」
「あぁ、入れ違いになってしまったか。君の到着を聞くなり探しに行ったよ。私はここで待っているべきだと言ったのだが…。お、彼女が戻ってきたようだ。」
人混みに揉まれながらも満面の笑顔で手を振る愛しき妻にまたしても口元が緩む。
どうしてこうも皆じっとしていられないものか。無論、私が言えた口じゃないが。
ミリアムに手を振り返しながら、隣の友人にそっと尋ねる。
「私がいない間も真面目にしていただろうな?」
「もちろんですよ、先生。話したいことがたくさんあるんです。」
我々の出立の意思を汲み取ったのか、ほどなくして汽車がやってくる。まばゆい光を纏って現れた蒸気機関車はこの世界と同じように真っ白だった。話の続きは乗ってから聞くとしよう。
ミリアムも無事合流し、三人ともに、乗車する。