初恋ふとした時に見たあいつの横顔。煙草の煙をはき出して海を見つめるあいつに俺は恋をしていると自覚した。いつの事だったかなんて忘れた。自覚と共にこの想いを伝えることなんて出来ないと諦めた。これは想ってはいけない感情。あいつは俺の仲間であり、女好き。おれの初恋はこうして幕を開いた瞬間に閉じた。
「お頭の初恋っていつですか?」
宴の席で酔っ払ている中、聞かれた言葉を理解するには時間がかかった。初恋。おれの…。
「あー覚えてねェよ」
「えー。おれは小さい頃でしたよ。近所のねぇちゃんに……」
初恋話を聞かせてくれるその言葉に耳を傾けた。
「初恋っていやぁ初恋は適わねぇとも言うそうですよ」
「……そうなのか?」
「らしいです。まぁだいたい…えっ、お頭の初恋は叶えたい相手なんですか?」
2019