もしもを空想するもしもの話をしよう。
もしも、きみが一介の冒険者で自由に世界を駆ける翼を持っていたとしたら、きっときみと出会うことはなかっただろう。そして出逢ったとしてもこんなにきみと親しくなるようなことはなかったにちがいない。どこかですれ違うだけで盟友にはなれなかっただろう。
もしも、光の戦士なんて大層な肩書きを自分が持っていなかったら。蛮神退治なんて絵空事のようなことを可能にしてしまえるこの力がなかったら。
彼の船が北へ向かっていなかったら。きっときみと出会うことはなかっただろうし、雪の中できみたちの暖かさを知ることはなかっただろう。
もしも、そうだな。もしも。きみが生きていてくれたら。たくさんやりたいことはあるし言いたいことも連れて行きたいところも見せたい景色も一緒に食べたいものもたくさん、たくさんあるけれど、もしも、生きていてくれたのなら。
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