マーキング君に似合う色を見つけたんだ。
そう言って髪の長い彼女にエメラルドグリーンのリボンを渡した。似合う色、なんて言いながら結局は自分の色を贈っているんだから本当はただのマーキングだ。
それでも喜んでくれた君にねだられて、いつものまとめ髪を崩さないようにそっとそのリボンを結ぶ。君の髪に触れるのはとても緊張したけれど、それと同時に触れることを許してくれているという事実がすごく嬉しくて思わず笑みが浮かんでしまう。
できたよ。
そう言うと、君は嬉しそうに笑って髪の毛に結ばれたリボンを確かめるようになんども何度も指先でさわる。その姿すら愛らしくて我慢できずに笑ってしまった。それにはっとして恥ずかしそうに笑う彼女。今鏡がないのが残念だな。
彼女が動く度に揺れるリボンが存在を主張している。
彼女に贈ったリボンの端に小さく入っている『S』の文字はスリザリンか、それとも僕のイニシャルなのか。周りがどう解釈しても、これを見た人間の脳裏に僕の存在が浮かぶなら何だって構わないさ。
君に似合う色を見つけたんだ。
そう言って彼はエメラルドグリーンのリボンを差し出した。似合う色何て言いながら明らかに彼の色だということに気づいて、思わず笑ってしまう。それに彼の色が似合うなんてすごく嬉しいことじゃない。
嬉しくてにやける頬を少しでも隠したくて、珍しく彼におねだりをしてみた。
あなたに髪につけてほしい。
そういうと少し驚いた表情になってから、すごく真剣な顔でうなずいた。どこか緊張した面持ちの彼に背を向けると、まとめ髪の辺りに手が触れるのを感じた。時々首筋を掠める指先にどきどきして、よしと呟いたセバスチャンの気配が離れる。
できたよ。
その声を聞いて、そっと髪の毛に手を伸ばした。彼が結んでくれたリボンが首の後ろあたりでヒラヒラと揺れている。嬉しくて何度も何度もさわっていると、セバスチャンが笑っているのに気づいた。少しだけ恥ずかしくて誤魔化すようにわらう。
どうかな、似合う?
ああ、とても似合うよ。
蕩けるような笑みに頬が熱をもって、私も嬉しさで自然と頬が緩んだ。