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    雑魚田(迫田タト)

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    POIPOI 21

    特に山も落ちも意味もないトームリ
    いろいろ描写は適当です

     共寝の翌朝。予定があるから、と早々に起床したムリナールが身なりを整えていく後ろ姿を、トーランドはベッドに寝転がったまま何となく眺めていた。
     ムリナールはトーランドの視線など今更気にも留めず、お気に入りらしいロイヤルブルーのシャツを羽織り、上からボタンを留めていく。次にスラックスを手に取り、それに脚を通して引き上げたところで、見ていたトーランドは「おっ」と小さく声を出した。
    「……先程から何だ、じろじろと」
     ムリナールはトーランドに背を向けたまま、不服そうに言った。もちろんその顔はトーランドからは見えていないが、声色からそれを想像するのはトーランドにとっては容易なことだ。
    「ズボンの穴に尻尾通すところ、じっくり見るの初めてだなと思ってよ。俺はいつも脱がすしかしねぇからなあ」
     お気楽に笑うトーランドに対し、ムリナールは相変わらず背を向けたままで黙っている。また妙なことを言い出した、と呆れているのか、もしくは──昨夜脱がされた・・・・・時のことを思い出しているのか。
    「ま、気にせず続けてくれや」
     トーランドは止めるつもりなど微塵もなく、また観察の構えに戻った。
     ムリナールは気が進まない様子だったが、もちろん服を着ないわけにもいかない。ムリナールは少々ぎこちなく手を後ろに回し、尾を根元から持ち上げた。ボリュームのある豊かな毛を途中で纏めて折り返して掴み、それをスラックスの内側から穴に通す。そして、外側から地道にその毛を引き出していく。
     一連の工程を、トーランドは感心しながら眺めていた。明らかに根元より太い先の方をどう外に出しているのかと思えば、それはひどく地味な作業の積み重ねで成り立っているのだ。
    「上側でボタンか何かで留めるタイプじゃダメなのか?」
     トーランドはふと頭に浮かんだ疑問をムリナールの背に投げかけた。ムリナールは少しだけ肩を落とす。
    「……尾自体が重いからな」
    「なーるほど! ボタンが吹っ飛んで脱げるわけか」
     その光景を想像し、トーランドは思わず声を上げて笑った。もし衆人環視でそんなことが起きてしまえば目も当てられない。
    「それ、むしろ不意打ちに使えるんじゃねえの? 敵さん絶対二度見するぜ」
    「茶化すな」
     まだ笑っているトーランドの方を、ようやくムリナールは振り返った。話しているうちにすべて引き出し終えていた尾が、動きに合わせてゆったりと揺れる。
     振り返ったムリナールは、言葉に反して少し口角が上がっている。自然な表情を返すムリナールが新鮮で、トーランドは何となく嬉しくなって目を細めた。

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