パチパチと音が聞こえる。
深夜を回り後数時間で朝を迎えようとしている中数人の男女がすぅ、と寝息を立てながら眠っていた
それらを照らす様に焚き火が音を立てて静かに燃えている。
そんな中、一人の少女はその場に居る者達を起こさない様にゆっくりと音を立てずに起き上がり一度周りを見渡した後森の奥深くへと歩いていく
少女が居なくなった後も火はゆらゆらと揺れていた
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どれ程歩いたんだろうか。いや途中から空を浮遊したのだが。先程までいた拠点から随分と離れた場所まで来てしまった、と少し頭を悩ませる。
やはり帰ろうかとも思ったがここまで来てしまったし引き返す訳にもいかない
今いる場所から見下ろしてみれば森が随分小さく見える。空よりも高い場所にいるから当たり前なんだけれど
一つ深呼吸をし前を向けば大きな人影が見えた。自分よりも遥かに大きい
更に歩み進めるとその姿が見えた。
薄い桃色の長い髪をした美しい男がそこにいた。
彼はこちら見るなり睨みつけ舌打ちをし呆れた、と言わんばかりの溜め息を吐く。そして吐き捨てるようにまあ来るよなと怒りを顕にしながら言った
昨日までとは随分態度が違ったが概ね予想はしていたので驚きはなかった
「もう猫かぶりはやめたのかしら」
「この場には俺とお前しかいないからな、する必要もないだろう?」
「ふーん…あっそ。ていうかなんで月?ロマンチストにでもなったわけ?」
「あっはは、ほんと死ねば良いのに〜」
殺意。感じ取らなくても分かるほどに男の殺意が突き刺さっていた。今すぐにでも殺してやろうか、と言われている様な気がして少し寒気がした気がした
今までも多くの人間や生物達に殺意を向けられた事はあったがこれとは比べようもなかった
「はあ、それで?私に何か用があるんでしょ?なら早く済ませて。明日は」
「ああ明日は大事なあの男との世界破壊の日があるんだろ?勿論知っているとも。何、早々に終わらせてやるから大人しく聞けよ」
男。いやテロスはジョニーの眼前まで歩み寄り片手で軽く首元を掴む。少しでも余計な事を言えば即座に力を込め手折る気だろう。死にはしないが痛いのは好きじゃない。今は大人しくしておこう
「明日、必ずお前を殺す」
「まだ話は終わってない。喋るな。その前に一つだけ聞いておこうと思ってさ」
酷く冷たい目がこちらを見下ろしていた。その目からは憎悪や黒くぐちゃぐちゃになった様な感情が見えた。無意識に逸らしてしまった様で首元が少し苦しくなる。目を逸らすな、と言われているようだ
「どうして逃げた」
「…………………………………………は?」
その言葉を聞いた途端何かがぶつりとキレた。
コイツは何を言っている?
「あは、、はっ…!はははははははははは!!」
壊れた機械の様にひたすらにゲラゲラと笑い続ける少女にテロスは訝しげな目を向ける。
数十秒。笑っていた少女は途端にぴくりとも動かなくなった。気味が悪いと手を放すと膝をつきがくり、と項垂れた
沈黙。数秒だったか数分だったか分からなかったが体感的には長い沈黙が流れていたがゆっくりと首が動きこちらを見て
「お前らが追放したんだろうが」