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    seibuyde9321

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    seibuyde9321

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    幽霊海賊のアベンチュリンをみて書きたくなり、ちまちまと書いていましたが、続きが思い付かずひとまず載せることにしました。
    気が向けば、続き書くかもです。

    とっても暇な時に読んでいただけると幸いです。

    幽霊🦚のレイチュリとある街の酒場で幽霊船の噂が立っていた。
    『会いたい人を思い浮かべながら、地底の船に近づくと、会いたい人の場所へ案内してくれるんだと』
    それを聞いたレイシオは噂話をしていた男に近づく。
    「その噂は本当なのか?」
    「おぉ、かっこいい兄ちゃんだな。そんな兄ちゃんがこんな辺鄙な場所へ何しに?」
    「僕の質問に答えろ」
    「へいへい分かりやしたよ。その物騒なものはしまってくれ。んで、その噂なんだが、本当らしい。昔新入りが惚れた女に会いたくて、実際にやったら会えたんだと。ただその時に対価を求められたらしく、とある言葉を取られたらしい。」
    「とある言葉?」
    「なんでも『大嫌い』だと。まぁ好きな女にこの言葉はいらねぇわな。」
    「…………………なるほど。情報感謝する。」
    レイシオは情報提供者に金貨の袋を置いて出ていった。
    後ろからの歓喜の声を無視して。
    (やはり、君は僕を許さないのだな。)

    幽霊船の船長のカカワーシャは今日も海から眺める。
    一人でに動く船の先頭に座りながら、揺蕩う月明かりを眺める。
    (今日も見つからなかったな)
    はぁとため息をつく。
    僕を庇って死んだあの男に会いたくて、ずっと待ち続ける幽霊船。
    (どうして僕を庇ったのか聞きたいだけなのに、随分とかかってるな。)
    すると、ぷかぷかとこちらに向かって漕いでくる小舟。
    定期的に現れるその小舟は人を載せてやってくる。
    その人たちは大切な人に会いたいと願ってここまでくるらしい。
    まぁ、大体その人は死んでるんだけど。
    だから、冥界まで渡し船をする。
    その対価に魔女との約束の『とある言葉』をもらって。

    魔女との約束。
    彼を生き返らせる代わりに、僕は『とある言葉』しか話せないという約束。
    僕としては一目見れればよかった。
    彼が元気そうにやっているところをみれれば。
    もう僕のせいで命を落とすことがないように。
    そのまま僕を好きにならないで。
    そうすれば、未練がなくなるから。

    その小舟は珍しく、人が2人乗っていた。
    (珍しいこともあるんだね。)
    その小舟に静かに近づいていく。
    そこに乗っていたのは、金髪の女性と藍色の男性。
    ………………………藍色の男性?
    急いで船を止めようとするも、急に止まることができず、海からでてきた幽霊船は小舟に寄り添うように止まった。
    僕は仕方なく梯子をおろし、小舟の2人を引き揚げる。
    どちらも身なりは良いため、どこかの金持ちかと思う。

    「あなたがおまじないの方?」

    『そうかもね。』
    幽霊船の船長は空中に文字を書き連ねる。
    青白いそれは綺麗だかどこか癖のある字体だった。

    「どうか、あの子に会わせてほしいの。」

    『それは僕の気まぐれだよ。』

    「それでも構わないわ。名前は……………」
    女性は意を決して言葉を放つ。



    『カカワーシャ』



    その幽霊船の船長は目を開き、そのまま嘲笑った。

    『その名前は久しいね。でも会えないよ。』

    「何故だ。」

    『だって彼はこの役目を終えれば、泡となって消えるからね。』

    「…………………どういうことだ。」

    『彼は泡になる前に魔女に契約を持ちかけた。《    》を生き返らせる代わりにとある言葉を集めると。』
    途中書き消したため、途中読めないところがある。

    「その言葉を集めてどうする」

    『その言葉がナイフになったら、その身を貫くのさ。彼の思い人の本心はそれだったのだと。それさえなければ、彼は死なずに済んだのだと。』

    「………………………」

    『もう少しでナイフになるところだったのに。君たちのお陰でぱぁになりそうだよ。』
    その彼はそう綴ると遥か彼方を見つめる。

    「嘘をつくときは上手につきなさい、カカワーシャ。」

    『ぼくは』

    「その癖は幽霊船の船長になっても治ってなかったのね。」
    女性は胸に手を当て、深呼吸をする。

    「残りの言葉はこれでいいかしら?」
    深呼吸の後に発せられた言葉は人間では聞き取れないが、確かに彼には届いた。
    言葉が形をなし、短剣となる。
    その様子をじっとみていた船長は、ゆっくりと短剣をとる。

    『いいのかい?』

    「それがあの子の望みなら。」
    悲しそうに笑う女性に船長は胸を痛める。
    何か大切なことを忘れているような。
    それを無視して、短剣の先を胸につける。

    『ぼくがしんだらこのふねはくずれる。だから、さきににげて。そしてかれにつたえて。《い嫌大》って』
    それは呪いに乗っ取られた青年の祈り。

    「それは出来ない相談だ。」
    男性は短剣を取り上げると、彼を押し倒しお腹に跨がって、胸に突き立てる。

    『どうして』

    「どうして、か。このナイフで消えるのは君ではない。彼(君の呪い)だ。」
    そう言って、彼はナイフを彼に突き刺した。






    波の音が聞こえる。
    とても懐かしい音。
    その音を聞きながら、過去を思い出す。
    昔々、人魚のとある部族には姉弟がいた。
    そして弟は地母神の加護を受けている神の子だった。
    他部族から迫害を受けている彼らは弟によって被害は最小限で済んでいた。
    しかし、その姉が人間に連れていかれそうになった時、弟が身代わりになった。
    「僕の方が価値がある」と交渉し、弟は連れていかれた。
    ただし彼らには手を出すなと。
    そこからは地獄の日々だった。
    弟の鱗は薬や装飾品として売れ、彼の流す涙は真珠となりそれも売れ、彼の声は惚れ薬として売れた。
    血も肉も美味だとご主人様は言っていた。
    幾度も変わるご主人様は、弟に執着し早く出せとせっついた。
    痛み、快楽、洗脳。
    ありとあらゆる手段を用いて搾り取った。
    弟は正気を失い、見目麗しい姿が鱗はまばらに、声も涙も枯れ果て、身体は痩せ細り、だが彼を着飾る装飾品は幾つもあり、歪さが否めなかった。
    そんな地獄に藍紫色の人間がやってきた。
    新しいご主人様かと、弟は教えられた媚び方で出迎える。
    彼はそれを断り、彼を連れ出した。
    希少種の人魚に虐待、搾取。
    彼らは博識学会に提供すると約束したが無断で断り、強行突破に出たのだ。
    あまりの痛々しい姿に藍紫色の人間は顔をしかめた。
    弟はどうしてそんな顔をするのか分からず、うつむいた。
    「そんなことしなくていい。」彼はそう言った。
    その言葉に弟は救われた。
    もう人間に媚びなくていいのだと。
    弟は彼の元で治療され、以前の見目麗しい姿に戻った。
    そして弟の心に抱いてはいけない感情がすくすくと育っていた。
    それは人魚を泡にする呪い。
    姉から聞いた「人間に恋をすると結ばれることはない。そしてその代償に泡になって消える」のだと。
    この気持ちは蓋をして優雅にそしてあどけなく振る舞う。
    それに彼には女性がいる。
    多分恋人か婚約者か。
    叶わぬ恋に弟の胸は張り裂けそうだった。
    それでも蓋をし続ける。
    とある日に彼は弟を水槽から抱きかかえた。
    「君を家に帰そう。」
    辛そうに告げる彼の真意が分からない。
    どうして、と告げるも彼には伝わらない。
    人魚の言語と人間の言語は違う。
    弟の疑問は答えてくれなかった。
    そのまま、浜辺に連れてこられた。
    ちゃぷと海に浸けられた。

    「君は自由だ。そのまま進めば家族や仲間に会えるだろう。」
    きみは?
    「僕はやることがある。だから行けない。」
    どうして?
    「君はあの水槽にいるのはあまりにも惜しいと思ったからだ。自由にのびのびと泳ぐ方が似合っているだろう。」
    …………………
    「さあ、行け。あまり時間を稼げない。また虐げられたくなければ。」
    彼は弟の背を押す。
    弟はお礼として、背を伸ばし彼の額にキスを送る。
    あまりにも熱すぎる人間の体温に火傷しながらもそれでも。
    彼の行く末に幸運を。
    そして、叶わぬ恋にさよならを。
    彼からの火傷を彼がつけてくれた証として、そのまま海に潜った。
    それから姉や仲間に会い、再開を喜ぶ。
    そして幼い頃の生活の戻りつつある時、風の噂で聞いた。
    彼が死んだと。
    弟を逃がしたあと、弟を逃がした罰として拷問をうけ、処刑されたと。
    その言葉に彼は絶望した。
    僕が逃げてしまったから。
    逃げなければ彼は死なずに済んだのに。
    僕の幸運が作用しなかった。
    僕が叶わぬ恋をしてしまったから。
    僕が、僕が、僕が。
    その絶望が弟の身体を蝕んでいった。
    このままだと泡になって消えてしまう。
    僕はそれでもよかった。
    でも姉や仲間を残して逝けない。
    その意地で呪いに抗った。
    弟の肌に泡が纏わりつき、それを払いながら、彼らと過ごす。
    姉は気づいていた。
    弟が叶わぬ恋をしていることを。
    それに呪いが蝕んでいることも。
    その時に魔女の噂が流れてきた。
    人間を生き返らせることが出来たとか。
    弟はその噂を聞いたとたん、飛び出した。
    彼が生き返るのなら。
    それのためならどんな代償だって。
    そして魔女と交渉し、彼を生き返らせ、弟の仲間や姉が不自由なく過ごせる加護を与える代わりに弟の存在は消え、約束がのこった。

    そんな過去を思い出していたカカワーシャは目を覚ますと、いつもの寝床だった。
    岩陰の奥深くにつくった寝床。
    あの時存在が消えたのでは?ときょろきょろと見渡すと上に続く道が続いていた。
    道なりに行くと家のようなところについた。

    「!?目が覚めたのか!」
    駆け寄ってきたのは、藍紫色の人間だった。
    僕が恋に焦がれた人。
    彼は僕をこれでもかと強く抱き締める。

    「本当に本当によかった。」
    涙ながらに聞こえる声に疑問が絶えない。

    「どうして?」

    「君があんな無茶をするからだ!僕を生き返らせるためにあんな代償を!」

    「君は僕を知らないはずだろう?」

    「知らないわけあるか!僕の初恋だ!」
    突然告げられる告白に、カカワーシャはフリーズする。

    「はっ、へっ?」

    「僕は君が好きだ!愛している!」

    「ちょ、ちょっと待って。」
    頬を真っ赤にして顔を背ける。
    勢いで発言していた男は発言内容を今理解したのか、抱き締めていた腕を離す。

    「す、すまない。急にあんなこと言われても困るだろう。忘れてくれ。」
    無かったことにしようとする彼。

    「や、やだ!そんなことしないよ……………。」
    背けていた顔を彼に向けた。

    「だ、だって僕も好きだから。君を失うのが怖いほど。」
    頬を真っ赤に染め告白し、両想いになった彼らは互いに抱き締めあった。


    おまけ
    「何で僕と話が通じるの?」

    「君と同じ人魚になったからだ。ただ、完全ではなく薬を飲んで半日ほどできれる。あとは君の言語を勉強した。」

    「そ、そんなに僕と話したかったの?」

    「話したいだけではなく、触れたかったのもある。あの時は君のことを優先したら、君はいなくなったからな。もうこんなことが起きないようにしたかっただけだ。」



    おまけ2
    「私の弟のこと、ありがとうございました。」

    「それを言うのは僕の方だ。ありがとう。それとすまない。僕が上手く立ち回っていれば、彼を失わずに済んだだろう。」

    「いえ。あのままでも居なくなっていたのは確実です。泡となって。」

    「そうだったのか。なおさら、彼がもう一度くれたこの生を謳歌しなければならないな。」

    「弟を泣かすようなことをしましたら、承知しませんから」

    「………………肝に銘じます。ないようにしますが。」
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