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    本編でモクマさんが重症を負った時に、タンバ様と再開する夢を見ていたらいいなと書いたやーつ。

    少々ホラー(背後に何かが的な)描写あり。

    モクマは目の前の、紅葉が舞うマイカの里に立ち尽くしていた。

    マイカの里はミカグラの人々を救う為に沈み、失くなった。この目で確かに見届けたマイカの里の最期。しかし今はどういう訳か目の前に広がっている。

    ならばこれは夢か。通りで若い頃の姿をしている。それならば腑に落ちる。
    せっかくだ、覚める前に散策をしてみるとするか。

    モクマはそう思っていると背後から、ただならぬ気迫と気配を感じると共に声がした。

    「久しいな、モクマ」

    懐かしい声にモクマは振り返る。
    そして橋の手前で仁王立ちしている者を見ると目を見張った。

    「タンバ様…」

    瞬時に近づき、片膝をつく。

    「タンバ様…俺は」

    「皆まで言うな分かっておる。我が命の通り後を追わず、守り手としてよく生き、最期まで大義であった誇らしいぞ」

    その言葉でモクマは思い出す。
    守るために動き、その結果、4発の銃弾を受けて意識を失ったのだと。
    そして今、ここにいるのは自分は守り手としての最期を迎えたのだと確信した。

    モクマは頭を垂れる。

    「…ッ……勿体なき、お言葉…ッ」

    「さぁ此方へ来て休むといい、そしてまた、あの大樹の上で話そうではないか。美味いリンゴもあるぞ」

    タンバが振り返るとそのまま橋へと歩みを進めた。
    このまま向こうへと行けば全て終わる。
    待ち望んでいた終わり。
    烏滸がましく愚かにも羨望していた終着。

    モクマの視界が滲む。
    涙が零れ落ちる前に拭うとハッキリとした声で返答し、一歩踏み出した。

    そして踏み出したその足は雪に深く嵌まった。

    「」

    モクマは驚く。
    目の前にいたタンバが居ないどころか全く見知らぬ、雪が吹雪く真っ白な雪原に独りでいた。
    モクマは混乱する。
    マイカ、もといミカグラ島は赤道の付近、足首まで深く雪が積もる事はない。馴染みのない景色だ。
    そうこうしている内に足が雪に埋まっていく。
    体を動かそうにも不思議と微動だにしない。

    そうしているのもつかの間。
    吹雪がビュウと吹いた瞬間、時が止まったかの様に辺りが無音となる。
    その時、背後から気配を感じた。

    「『─────』」

    後ろから微かに、しかしはっきりと聞こえた二つの聲。
    一つは男の聲。
    もう一つは女の聲。
    聞き覚えのある聲が自分を呼んでいた。
    その聲は叱るかの様にも、怒る様にも、哀しむ様にも、切望しているかの様にも聞こえた。

    直後、体の縛りが解けたと感じると直ぐ様、後ろを振り返った。
    しかしそこには誰も居らず紅葉が舞うマイカの里の風景が広がっていた。

    「どうした、モクマ」

    タンバの声にモクマは向き直す。

    先程の雪原はなく、橋の向こう側の岸にタンバが立っていた。

    「そんなところに突っ立ってないで、こちらへ来ぬか」

    タンバがニカリと微笑んだ。

    自分の記憶にある主である事は確信している。
    守り手としての最期に相応しい最期であり、橋の向こうの岸に踏み入れればきっと終わる。

    しかし─今ではない。

    モクマはその場に片膝を付くと頭を垂れた。

    「申し訳ございませんタンバ様、俺はそちらへ向かえませぬ」

    「ほう、如何に」

    「俺はまだ死ねぬのです」

    モクマは顔を上げた。
    それと共に姿も変わる。
    白髪の髪、痩けた頬、無精な髭。黄色の羽織りを着、紫色のシャツの胸元を開き、だらしなさが目立つ姿へと変わった。
    しかしその姿勢は寸の歪みもなく微動だにせず、瞳は刃の様に鋭さを宿していた。

    タンバは何も言わぬままモクマを見つめる。

    「俺は貴方を殺し、その上、貴方の嫡子であるフウガも手をかけました。貴方の横に並べるなど烏滸がましい限りです」

    「ほぅ…モクマ」

    「ハッ」

    「正直に」

    「…共にいたい者が居ります。体を張って挑み、俺を守り手として自覚させてくれた相棒とは一生、いや、死んでも傍にいたいのです。故に、此処に留まる訳にはいきません」

    モクマは言い切る。
    数秒の沈黙を得て、タンバは豪快に笑った。

    「ガハハハいつも逃げていたお前がここまで腹をくくれるとは人生、何が起こるか分からぬものだなモクマ」

    「…実に」

    「ならば背を向けて行くがいい振り向かずに真っ直ぐ走れお前の俊足ならば間に合う行け」

    「はい」

    モクマは颯爽と駆け出した。
    分け目も振らず、ただ地面を蹴り、進む。
    変わる代わる景色に見向きもせずただひた走る。

    戻らねば。
    戻らなくてはならない。
    早くあいつの元に。

    チェズレイの元へ───。


    「…」

    白い天井、消毒液の匂い。
    意識はどこかぼんやりとしているが病院だとモクマは理解した。
    何か夢を見ていた気がするも、銃弾を受け、ビルから落とされた後、その後を追いかけた者がいた事を思い出し、その者の安否に思考を費やす。
    やがて机にある紙に気が付き読む。
    その者の筆跡と文書に安堵すれば今度は仲間を思い、自分の出来ることを思案するためその者に会うべくベッドから降りた。

    その瞬間。

    『─────』

    聞き覚えのある女性の聲で、感謝している様な声が聴こえたような気がした。

    まだ夢現か彷徨っているのかと自虐に一笑する。
    そしてそのままモクマは相棒の元へと歩みを進めた。



    ー終わりー

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