聲モクマは目の前の、紅葉が舞うマイカの里に立ち尽くしていた。
マイカの里はミカグラの人々を救う為に沈み、失くなった。この目で確かに見届けたマイカの里の最期。しかし今はどういう訳か目の前に広がっている。
ならばこれは夢か。通りで若い頃の姿をしている。それならば腑に落ちる。
せっかくだ、覚める前に散策をしてみるとするか。
モクマはそう思っていると背後から、ただならぬ気迫と気配を感じると共に声がした。
「久しいな、モクマ」
懐かしい声にモクマは振り返る。
そして橋の手前で仁王立ちしている者を見ると目を見張った。
「タンバ様…」
瞬時に近づき、片膝をつく。
「タンバ様…俺は」
「皆まで言うな分かっておる。我が命の通り後を追わず、守り手としてよく生き、最期まで大義であった誇らしいぞ」
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